生き別れの妹とダンジョンで再会しました 〜10年間ダンジョン内で暮らしていたら地底人発見と騒がれた。え、未納税の延滞金?払える訳ないので、地下アイドル(笑)配信者になります〜
第133話 何者にも負けない。これ、たとえですよ!?
第133話 何者にも負けない。これ、たとえですよ!?
そうして俺たちは、道場の撮影スタジオへと移動をして来た。
「本当に、道場だ……」
道場は
久し振りに踏み込む神聖な道場。
ダンジョン災害前には、師範であるジジイから入る事を禁じられていた――道場。
思わず礼をしてから、俺は入り込む。
そして小道具を担当しているらしきスタッフさんに声をかけた。
「あの、道具を追加しても良いですか? 私物なんですが……」
「ん~確認が要りますけど……何を置きたいんですか?」
「この刀――
「道場に、刀っすか。良いっすね。ちょっと上に確認取ります!」
そうして現場監督らしき人物の元へ駆けて行く。
――
――うむ、
そんな事を思ってやがったのか。どうせまた、俺のパソコンなりスマホの端末からゲームしてたと思えば……。
――思っとらんと言うておろうが。ああ……じゃが深紅とやらを組み伏せていた時、心拍数が上がったのは見逃さんかったぞ?
最悪だ!
違うから、それは予想外の行動にちょっと驚いただけだから!
「大神さん、オッケーです! それでは神棚に――」
「――あ、すいません。こいつは俺以外が触れるとケガする妖刀なんで……。俺に飾らせて下さい」
「は、はぁ……」
口の端をヒクつかせ、少し怯えた様子の小道具さんに頭を下げる。
そうして白星を天心無影流道場で祀られていた時のように神棚の前に供えた。
――コラっ!
脳内で
衣装担当さんにもメイクさんからも呼ばれていて、忙しいからね!
そうして道具に着替えてメイクを整えて……
「お兄ちゃん。私はそろそろ……」
「あ、うん。開拓配信だよね? ありがとう、助かったよ」
美尊が申し訳なさそうに近寄り、そろそろ開拓配信に行ってくると言う。
本当に美尊が居て助かった。
ここから美尊が居ないのは不安だけど……カメラの奥に美尊をイメージして頑張ります!
「私も少し抜けますが、送り届けて直ぐに戻りますので」
「はい、了解っす!」
川鶴さんも美尊を送る為に現場を出て行く。
1人残されての撮影……スッゲぇ不安。
ヤバ……寂しい。
「準備オッケー! それでは撮影再開します!」
その言葉に――カチッと、自分の中でスイッチを切り替える。
俺自身として映るんじゃなくて……武術家、
スッスッと、道場内を進んで行きカメラの前に――正座する。
「良いですね~! 先ずは
道場での撮影は進んで行く。
道場に
構える姿。
基本の
そして――。
「――明るい写真はオッケーです! ダンジョン内外での
「え? ダンジョン内、ですか?」
「はい。依頼を受けるに当たって経歴を調べさせていただきましたが……。大神さんは道場ごとダンジョンへ落ちるという
「ま、まぁ……。そう、ですね」
悪気はないんだろうけど……。
ズバッと言いにくい事を言ってくる人だなぁ~。
「その時、大神さんがどんな感情からどんな表情を
「ファンが……。成る程、それなら……」
ファンが喜ぶなら、
むしろ
嫌われるだろうと分かって言っていた
実際、撮られた写真の1枚1枚をモニターで見ると、メッセージ性のようなものを感じるからね。
「ダンジョンに落ちた時……」
当時、最初にダンジョンへと落ちた時を――ゆっくり思い起こす。
血塗れの床。
外には黄色い龍。
「道具、照明準備オッケーです!」
そう。
あの時も――
これ程、見える世界では無かったけど……。
思い起こすなら、一発目は――。
「――良い怒りの表情です」
カメラマンさんが撮った写真がモニターと連動して映る。
そこには明確な敵意を顔に表した俺の顔が映っていた。
次に感じた事と言えば、ジジイの死。
そして――底知れぬ絶望と恐怖だ。
「涙……。良いですね、良い写真いただきました!」
え、俺は――今、泣いていたのか?
モニターを見れば、確かに涙が流れている。
そうか……。
あの時――俺は悔しくて、寂しくて……泣いていたんだな。
もう10年も前の出来事だし、忘れていた。
ジジイ……。
俺が絶対、仇を討ってやるからな。
「オッケー! 続いてダンジョンでの死闘と鍛錬を、蝋燭の光で照らしながら撮りましょう!」
「
「ん~。髪から飛び散る汗はそれで良いんだけど、肌からはリアルな汗が出て照らして欲しいね~」
この撮影……道場内で揺れる蝋燭の火を見ていると――神経が研ぎ澄まされる。
武人として、何者にも臆さない勇気を再確認出来る気がするよ。
どんな強力な敵だろうと――10年の闇を乗り越えた俺は、決して逃げない。
どんな強大な敵だろうと、決して負けない気がする。
「――それならば、私が本物の汗を出すのに協力しましょう」
まぁ……でもね、それはあくまでも『気がする』なんですわ。
「――
目の前に
ドッと――
霧吹き、もう要らないと思います!
―――――――――――
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます!
楽しかった、続きが気になる!
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