第18話 初開拓配信!(4)

「――お!? やった! なんかおおかみっぽいのが4体に、大きな二足歩行のブタが3体いますよ! これはだかあるんじゃないですか!?」


最早もはや緊張感きんちょうかん迷子まいごw〉

〈撮れ高を心配しすぎw〉

〈ワーウルフ4体に、オーク3体とか……。普通は全力で逃げるんだけどなw〉

〈いや、でも流石に心配。今までは単体との戦闘だけだろ? 複数相手はキツくね?〉

〈素手で多対一はちょっと……。魔法とか使えるんだよな?〉

〈どうだろ? ここまで異種格闘技戦いしゅかくとうぎせんしか見てないからな〉

〈ダンジョン内で異種格闘技戦やってるのがおかしいのよw〉


 成る程、魔法か……。

 確かに、ここまでの戦闘では見せていなかったかも? 自然と肉体強化に使ってはいたけど……。魔法、神通力。どう呼ぶのが適切か分からない……。


 俺のちゃんとした戦闘を、ゆっくり実況してみるか!


「じゃあ魔法や、俺とか姉御が神通力と呼んでいる力を使ってみますね!――まずは足にエネルギーを集中させ、自然と一体になる感覚です! それから――このように跳ねます!」


〈は!? 風を応用した飛行魔法!?〉

〈いやいや、ジャンプしてる! 跳んでるって!〉

〈驚き疲れたけど……なんじゃこりゃああああ!? VRだとジェットコースターより怖ぇえええ!〉


「そうやって標的ひょうてきに近づいて行ったら、今度は一気に下降かこうして――インパクトの瞬間、局所的きょくしょてきに神通力を込めます! 今回は魔石を出してもらう為にひかえめですが――こうっ!」


 バァンバァンッと。わざが当たったオークが2体、にぶ破裂音はれつおんを立てて魔石へと変わった。


「俺は未熟みじゅくなので神通足じんつうそくまでしか使えませんが……。もっと色んな技があります。今回は足技だけのしばりで倒しますね!」


〈すげぇえええ〉

曲芸きょくげいだw〉

〈視界、視界……酔うw〉

〈もはや虐待ぎゃくたいに思えてきたwww〉

〈みるみる内に、ピンチの状況がスプラッタ現場にw〉

〈この地底人、頭おかしいよ。良い意味でw〉


 そうして解説を入れながら、華麗かれいせる演武えんぶごとくモンスターを屠っていった。


 うん、コメント欄も嬉しそうだし……。良質なエンタメを提供出来ているんじゃないだろうか?


「よ~し! 気合いを入れて進みましょう!」


〈メッチャ前向きで脳天気のうてんきw〉

〈マイペースだなw〉

〈ある意味、神配信〉

〈大神の配信だけになw〉

〈(頭が正常な人には)真似できない開拓指南神配信かいたくしなんかみはいしんw〉


 うんうん。

 まだまだ勉強不足だから、言っている言葉のほとんどが理解出来ないけど……。沢山のコメントが来るって事は、盛り上がっているって事だろう。


 あと何層あるか知らないけど……。時間一杯、最後まで気合い入れてエンタメを提供するぞ!


「――階段を降りて、ここは4階層でしたっけ?」


〈それぐらい覚えてないと死ぬぞ?〉

〈誰がこいつを殺せんだよw〉

〈いやいや、所詮しょせんは兵士が訓練に使うようなDランクダンジョンだからw〉

大神向琉おおかみあたるは初ダンジョン配信(ダンジョンに潜ってた期間は10年以上)〉

〈そう聞くと、ただの一流開拓者だなw 実態は違法(事故)で潜ってただけだけどw〉


 4階層に潜ると、なんだか少し違和感を覚えた。


「……そこら中にモンスターの気配があるのに、みょうですね。未だ1匹も出くわさない」


 そう。

 俺の危険察知網きけんさっちもうには、生体反応が大量に引っかかっているのだ。

 しかし、そのどれもが階段から降りた道ではないようだ。


 別の道――岩盤がんばんの奥を移動している?


 今歩いているのは、1番大きな横幅5メートル高さも同様ぐらいありそうな道だけど……少なくとも、この道ではない。


「……ここ、怪しいですね」


 一カ所。

 何の変哲もないように見えるが、明らかに他とは魔素の量が異なる岩壁がんぺきを見つけた。


〈岩なんて撫でてどうしたんだ?〉

〈このダンジョンの4階層は、ほぼ一本道。めっちゃ優しい構造だぞ?〉

〈お。他の開拓者さんも視聴に来たのか?〉

〈なんかSNSに頭のおかしい切り抜きが張ってあったから来た。合成じゃないのか?〉

〈草www〉


「うん。悩んだら――こうですよね」


 俺は右腕を後ろに引き、拳へ神通力を込めていく。


〈は? 壁を殴るの?〉

〈え。拳が壊れるでしょ〉

〈いや、オークの頭をスイカのようにぶち壊すんだし、行けるか?〉


「ふんっ!」


〈うぇええええええッ〉

〈うぁあああああああああ〉

〈壁壊したw〉

〈これが、壁ドン///〉

〈こんな壁ドン、ロマンが欠片もねぇよぉおおおおwww〉

〈ドキドキなら山のようにあるけどなw〉

〈そのドキドキは、キュンとは違うドキドキだw〉


 瓦礫がれきがパラパラと散る中、自動読み上げ機能の声が木霊こだまする。

 木霊するという事は――。


「やっぱりだ! 隠し通路、発見です! これは撮れ高でしょ!」


〈うそぉ!?〉

〈何度も踏破とうはされてるダンジョンで隠し通路発見!?〉

〈お手柄じゃん!〉

〈おおおおお! 何処に通じるの!?〉

〈盛り上がってきたぁあああw〉


「盛り上がって来たなら良かったです!――よし、じゃあ奥に進んで行きましょう!」


〈まさかFランク開拓者の配信で未到達のワクワクと似た感覚に陥るとはw〉

〈まじかまじかまじか〉

〈ヤバっ! なんか凄い物出てこい!〉



―――――――――――

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