第28話・目覚めてからの情報整理
もう一人の兵士によって、最初に目が覚めた部屋へと戻された私は、このオブルリヒトの王宮で目覚めてからの情報をまとめてみる事にした。
目覚めてからの情報が多すぎて、落ち着いて整理しないとわけがわからなくなってきたのだ。
まず、この異世界ルリアルークのオブルリヒト王国に召喚され、お前は聖女ではないと言って王宮から追い出された私は、サーチートと一緒に、ユーリとアルバトスさんのお世話になっていた。
だけど、私も聖女である可能性があるという事で、ジュニアスによってこのオブルリヒトの王宮へと連れ戻されてしまった。
その際に、時空の鏡とかいうアイテムを通して、元の世界の私は殺されちゃったんだよね。
それから私は五日間眠っていて、起きたら若返っていた。
いや、正確には若返ったわけじゃないのかもしれない。
瞳の色が、ラピスラズリみたいな濃い青になっちゃったわけだし、生まれ変わったっていう状態なのかもしれない。
つまり、転生したって事。
私がジュニアスに連れ去られた時と、連れ戻そうとした時に、ユーリやアルバトスさんがひどい怪我をした可能性がある。
サーチートは、今そばにいない。
もしかすると、元の世界の私が殺されてしまったから、サーチートも死んでしまった可能性がある。
ジュニアスにはナディア様という美しい奥方がいるけれど、もう一人のジュンという聖女とも関係を持っているらしい。
だけど、この世界で一夫多妻は普通の事で、ジュニアスは今の私なら、三人目の妻として娶る価値があるとか言っていた……絶対に嫌だ。
というか、二人目の妻って、ジュンの事?
ジュンの次の三人目の妻って、絶対に嫌だ。
私と一緒に召喚されたジュンという女は、元の世界で私が刺される原因となった、ヒョウ柄の服のおばさんだった。
今のジュンは若く美しく転生しているけれど、私が使えるヒールなどの回復魔法を、私を殺す事で奪おうとしているようだ。
あと、ジュンはジュニアスの事が好きなのか、私だけじゃなくて、ジュニアスの奥方であるナディア様も殺そうとしているらしい。
数々の濃い情報に、めまいがする。
特にひどいのは、ジュンだ。何なの、あの人。
あの人が、矛の聖女で、私が盾の聖女だっけか。
矛とか盾とか、一体何なの。
あの女とニコイチで、矛と盾の聖女とか呼ばれるのって、すごく嫌なんだけど。
そう言えば、今の私のステータスはどうなっているのだろう……盾の聖女って書いてあるのだろうか?
「ステータス」
呪文を唱え、ステータスが見られる白い画面を確認する。
「は? 何、これ……」
私は首を傾げた。そこには盾の聖女などではなく、
名前:糸井織絵
年齢:二十歳
職業:真聖女
魔力:∞
魔法:全て使える
と書いてあった。
前に見たステータスでは、大聖女と書かれていた。
で、今が真聖女……どういう事なのか、さっぱりわからない。
とりあえず、盾の聖女とかいうのではないようなので、安心した。
これで、あのジュンとニコイチは避けられるだろう。
魔力が∞で、全ての魔法が使えるというのは、前に見た時のままだった。
ただ……この世界にどんな魔法があるのかっていうのは、知らないんだけどね。
あと……年齢、二十歳って書いてある! めちゃくちゃ若くなってる!
元の年齢の半分以下だ! きゃっほー!
「そっかぁ、二十歳かぁ……若いなぁ……」
ジュンのステータスは、何て書いてあるんだろう。
あの人のステータスには、矛の聖女って書いてあるのかな。
いや、あの人は炎の呪文が得意みたいだから、炎のナントカとか書いてあるのかもしれない。
そう言えば、前にユーリが、ジュンの事を毒婦のようだって言ってたっけ。
もしかして、ジュンのステータスには、炎の毒婦、とか書かれていたりしてね!
そんな事を考えていたら、ドアがノックされた。
無視していると、失礼します、と声がかかり、ノートンが入ってきた。
「先程は、怖い思いをされたでしょう。申し訳ありませんでした」
ノートンはそう言うと、私に頭を下げた。
「他にも謝る事があるんじゃないの?」
「あぁ、確かにそうですね。あなたの命を奪ってしまった事を、先に謝るべきでしたか」
「謝って済む事ではないけどね」
「確かに」
少しも悪いと思っていない相手と話していると、イラっとしかしない。
でも、そちらが悪いと思っていなくても、こちらは絶対に忘れないから。
そう思いながら、私はノートンを睨みつけた。
「で、何か用?」
「いえ、目覚めてすぐに怖い思いをされたかと思いまして、様子を見にがてら、ジュン様とあなたの説明をしに来ました」
「わかった、聞く」
「詳しい話は、ジュニアス様がされるかもしれませんが、私の方から簡単な説明をしておきます。ジュン様は、あなたを殺してあなたの力を手に入れると言っていますが、ジュニアス様はそんな事をさせません。ジュニアス様は、この国に矛と盾の聖女を、両方揃えておきたいとお考えです」
「その、矛と盾って何? ジュンって言う人が、私を殺して回復魔法を手に入れたいって思うのは、あの人が回復系の魔法を使えないって事でいい?」
私がそう尋ねると、ノートンは頷いた。
「彼女は矛の聖女ですからね。攻撃系の魔法……火炎系の魔法が得意のようです。あなたは盾ですから、回復系や防御系の魔法しか使えないはずです」
「そう、だね」
本当は攻撃系の魔法も使えるけれど、ノートンには知られない方がいいだろう。
とりあえず今は、私は盾の聖女という事にしておいた方がいいような気がした。
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