第143話・また大金を手に入れた!



「すみませーん、サーチートを引き取りに来ましたー」


 冒険者ギルドに戻ると、受付のカウンターのところで、サーチートがぴょんぴょんと跳びはねていた。


「オリエちゃーん、ユリウスくーん、お帰りなさーいっ!」


「ごめんね、サーチート! すみません、預かってもらっちゃって」


 受付の女の子にそう言うと、彼女は笑いながら首を横に振り、お利口さんにしていましたよ、と言う。


「そうだよ、ぼくは、この冒険者ギルドでユリウスくんのお手伝いをしていたんだよ!」


「お手伝い? 本当かなぁ?」


「本当だよ! ほら、ユリウスくん、これ!」


 サーチートが小さな手で何枚かの依頼書を掴み、ユリウスに差し出す。

 依頼書を受け取ったユリウスは、内容を確認して頷いた。


「なるほどね、全部、あるな。ありがとう、サーチート」


 カウンターのサーチートを抱き上げ、ユリウスは自分の肩に乗せた。


「ほらね、オリエちゃん。ぼくは二人が居ない間、冒険者ギルドでユリウスくんが受けられる依頼を探してあげていたんだよ!」


 胸を張り、ドヤ顔で私を見るサーチート。

 えらいね、と褒めてあげると、さらに胸を張ってひっくり返り、ユリウスの肩から転がり落ちた。

 私は慌てて腕を伸ばし、サーチートをキャッチする。


「では、サーチーくんの言う通り、ユリウスさんは先程の依頼書の対象を、全部お持ちという事でよろしいですか?」


「あぁ、大丈夫だ。ここで出していいか?」


「いえ、出すのは倉庫の方でお願いします。それと……ユリウスさんはこの依頼を全て達成されますと、Cランクに昇格されますね」


「わぁ、ユリウス、すごいね!」


 別行動だった間、ユリウスはゴブリンだけでなく、他の魔物をたくさん狩ったみたい。

 見せてもらっていないけれど、きっとすごいのが居るんだろうなぁ。


「それでね、オリエちゃん! ユリウスくんがCランクになったところで、最後はこれだよ!」


 ドヤ顔のまま、サーチートが私に依頼書を差し出した。

 それはBランクの依頼書で、サーベルタイガーの狩猟依頼だった。


「ユリウス、このサーベルタイガーっていうのも持ってるの?」


「あぁ、持ってる……というか、サーチート、本当に良く覚えてるな。もしかして、俺がCランクに上がる事まで、計算していたのか?」


「もちろんだよ! ぼくは頭脳派なんだ!」


 感心するユリウスに、サーチートはまた胸を張る。

 そうかぁ、サーチートは頭脳派か。アルバトスさんにいろいろと教えてもらっているもんね。

 私はまだまだわからない事だらけだから、サーチートにいろいろと教えてもらおう。

 そんな事を考えていると、抱っこしているサーチートが私を見て、またドヤ顔をした。

 うーん、可愛いんだけど、ちょっとイラッとする。

 私のサーチートは、やっぱりお調子者だなぁ。




「ではユリウスさん、これがCランクに更新したギルドカードと、依頼達成の代金です」


 受付の女の子が、ユリウスに新しくなったギルドカードとお金を差し出した。

 麻袋が八つと、バラで置かれた金貨が三十八枚。つまり、八十三万八千ルドであり、日本円にすると、八百三十八万円である。


「すごい金額だね、ユリウス……」


「そうだね。やっぱりサーベルタイガーが大きかったんじゃないかな」


 どこかのお金持ちの人が、サーベルタイガーの剥製が欲しいという事で出した依頼だったらしいんだけど、これだけで金貨四百枚なんだよね。


「確かにすごい金額だが、嬢ちゃんだってすごいぜ。これ、さっきの聖水の代金だ。ローレンスから預かってるぜ」


「え? こんなに?」


 ゴムレスさんが渡してくれたのは、麻袋が六つ。金貨六百枚で、六十万ルド。日本円にすると、六百万円?

 こんなに貰っていいの?


「特級聖水、一本六万ルドだ。嬢ちゃんたちのおかげで、街や近隣の村を守る準備を進められる。本当に助かったよ。だからこれは嬢ちゃんの正当な報酬だ」


 私、聖水、結構簡単に作れちゃったから、申し訳ない気持ちになっちゃうんだけど、ここまで言ってもらえるのなら、お言葉に甘えて貰っちゃおうかな。

 それにしても、ポーションとか聖水とか、ものすごく高額で買い取りしてもらっているよね。濡れ手に粟とはまさしくこの事だ。おかげで大金持ちだよ。


「嬢ちゃん、ずいぶん稼いたな。だいぶ貯まっただろう。何か買うのか?」


 ゴムレスさんに聞かれて、私は考え込む。

 一応、リュシーさんに素敵衣装を作ってもらうつもりだったから、お金を貯めようとしていたんだけど、あんな事があったから、その話も流れちゃうかもしれないしなぁ。


「とりあえず、貯金しておこうかな」


 と答えると、ゴムレスさんは銀行に預ける事を提案してくれた。

 この異世界にも銀行がある事に驚いた。異世界の銀行は、商業ギルドに設置されているらしい。

 私とユリウスは、貰ったお金を銀行に預ける事にして、商業ギルドに向かう事にした。


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