第二章:のんびりまったりスローライフ?

第66話・あれから二か月経ちまして



 結婚式をしてから、二か月が経過した。

 アラフィフのおばちゃんだった私が、異世界に転移して、転生して、運命の人と巡り合い、結婚してから二か月である。

 いやぁ、人生、何が起こるかわかんないよねぇ。




 ユリウスとの結婚生活は、特に問題もなく、順調だ。

 あえて問題があるとすれば、夜にあんまり放してもらえない事と、ものすごいやきもち焼きって事くらいで……だけどそれ以外は問題という問題はないと思う。

 ユリウスのやきもち焼きは、相変わらずで……村の人には呆れられてしまっているようだし、いろいろと気を遣ってもらったりしている。


 そう、気を遣ってもらっているのだ……例えば、私は今、ユリウスの部屋で一緒に寝ているんだけど、アルバトスさんが、ご飯の用意は無理しないでいって言ってくれたり、バスルームが遠いと不便じゃないかって、お風呂を増設してくれたり……サーチートを毎晩預かってくれるだけでも十分すぎるのに、本当に気を遣ってもらっている。

 申し訳ないなぁって思うんだけど、ユリウスは当然みたいな顔で受け入れるから……あぁいうところは、やってもらって当たり前、みたいな元お姫様な気質なのかなぁとか思ってしまう。


 というわけで、ユリウスのやきもち焼きと、周りの人たちに気を使ってもらっている事以外は、私としてはあまり問題ない。とても順調に、幸せに毎日を過ごしている。

 だけど、村としては少しずつ問題が起きてきた。




 結界内という閉鎖された空間では、品不足が起きてしまうのだ。

 結界は、村全体と森の一部を含んでいるから、その範囲内で調達できるものもあるんだけど、調達できないものがあって……。

 今私が特に欲しいなぁと思っているのは、調味料の類だった。

 森の中で代わりになるような実を集める事もできるんだけど、やっぱり普通の塩やお砂糖、胡椒が欲しいんだよねぇ。特にお塩は絶対に欲しい。

 他にも村の人たちも欲しいものがいろいろとあるみたいで、近い内に結界の外の村や町に買い出しに行く事になっている。

 そして、買い出し隊のボディーガードとして、ユリウスと私が同行する事になっていた。


 街道沿いは未だにオブルリヒト兵が見張っているから、使えない。

 だから、森を突っ切るコースで向かう事になるんだけど、森には熊や狼や猪、魔物たちが出てくるから、ボディーガードが必要になってくるのだ。

 ボディーガードと言っても、私は多分、何もしない。

 どんな魔物が出て来ても、大概はユリウスが蹴り倒してくれるからだ。

 ユリウス……女性だった頃は、とても凛々しくて知的な美女だと思っていたけれど、今じゃすっかり脳筋男子だ。

 毎日森に出かけて、狩りと称して、熊や猪、魔物を蹴り倒している。

 ジャンくん曰く、「人間じゃねぇ……ユリアナ様の面影が、全くねぇ……」らしい。




 結界の術者は、以前言っていたように、アルバトスさんが代わってくれた。

 そのおかげで私は結界の外に行けるようになったんだけど、交代するまでには、結構いろいろと面倒な事ばかりだったんだよねぇ。

 私はアルバトスさん代わってもらうために、まずは家のそばに、バスケットボールくらいの大きな魔結晶を作った。

 それから、大魔結晶と、結界発動範囲に埋められている魔結晶を、魔法で一つずつリンクさせていく。

 これにより、大魔結晶から、結界発動範囲の魔結晶に魔力が送られる仕組みなんだけれど、大魔結晶と結界発動範囲の魔結晶のリンクが、数が多いわ細かい作業だわで、大変だったのだ。

 だけど、一度繋いでしまえば、後は便利でもあったんだけどね。

 その後私は、大魔結晶を、あと六個作った。

 この大魔結晶には魔力を注ぎ込んで、定期的に魔力を注いで充電をしている。

 大魔結晶は、一つにつき五日分の魔力を蓄積できるみたいで、これが七つあるから、私は約一か月の間、村を離れる事ができる事になるのだ。


 結界の術者を代わってもらった後は、アルバトスさんが結界を出入りする鍵を、十個作ってくれた。

 私が作った鍵と違って、アルバトスさんが作ってくれたのは、普通の鍵の形をした鍵だ。

 鍵は村長であるジャンくんのお父さんがまとめて預かって、管理してくれている。

 最初は村の人たち全員か、もしくは一家に一つ配ろうかという話があったんだけど、ほとんどの人が、今は村の外に出る事は危険だと判断したらしく、鍵を欲しがる人がほとんどいなかったのだ。

 危ない事は、一部の者――ユリウスが引き受けてくれるなら、それでいいんじゃないかっていう人も居たしね。


 だけど、ホンの一部の人ではあったけれど、ユリウスの手を借りずに、狩りや薬草の収集をするために、頻繁に村の外に出たいという人も居たので、そういう人には私が鍵を創った。

 結界の術者をアルバトスさんに交代してもらったけれど、この結界を張ったのは私だから、引き続き鍵を創る事ができるのだ。

 頻繁に村の外に出たいという人は、アルバトスさんが創る鍵だと、外に出た時に失くしてしまう可能性があるから、私が作る体内に埋め込むタイプの鍵を渡したんだけど、結界を好きに行き来できる分、出かけた先で危険な目にあうリスクもる。

 だけど、それは自己責任でという事になった。

 改めて考えると、いろいろと危険な事がある世界だなと思う。

 だけど――。


「お使いクエスト、楽しみだなぁ~」


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