第151話・リュシーさんの伝言



 ユリウスのテレポートの呪文で、私たちは商都ビジードの手前まで移動した。


「ジャン、モネ、三時間後にまたここで集合だ」


「はい! でも、そんなにゆっくりしてもいいんですか? お客さん来てるのに」


「いいんだよ。伯父上が相手してくれているからな。そもそも、リュシーも伯父上に会いたかったみたいだし」


 そう言えば、リュシーさんはアルバトスさんを紹介してほしいって言っていたんだった。

 一体アルバトスさんに何の用があるんだろう?


「じゃあ、お言葉に甘えて、私とジャンは、ゆっくり買い出しデートをさせてもらいます! では、ユリウス様、オリエさん、また三時間後にね!」


 ぱちんと魅力的にウインクしたモネちゃんが、ジャンくんの腕を引っ張って、ビジードの門へと向かう。

 それを見送って、私とユリウスもゆっくりと門へと向かった。




 私とユリウスは、まずリュシーさんの店であるスタイリッシュ・アーマーへと向かい、ガレアスさんとソフィーさんの二人に、今日はリュシーさんが戻らない事を伝えた。

 ガレアスさんとソフィーさんは、リュシーさんに何かあったのかと心配したけど、ユリウスが自分たちと一緒に行動しているから問題はないと伝えると、ほっと息をついた。

 ガレアスさんとソフィーさんにとってリュシーさんは雇い主ではあるけれど、それだけじゃなく、二人はリュシーさんを息子のように大切に想っているんじゃないかな。そんな気がする。

 次にジルさんにも伝えるために冒険者ギルドへと向かうと、カウンターに居たジルさんは私たちの姿を見ると、他のカウンターの女の子に何か言って、私たちの方へと走ってきた。


「お二人とも、こちらへ」


 そう言って、ジルさんが私とユリウスを連れて行ったのは、冒険者ギルドを出て人通りが少ない路地だった。


「何かあったんですか?」


「いえ、ギルドマスターが、ユリウスさんを探していましたので。先に私が知っている限りの詳細をお話ししておこうかと」


 ジルさんは冒険者ギルドの副ギルドマスターなのだから、私たちが来た事をギルドマスターであるゴムレスさんに伝えなければならないのに、私たちを気遣ってくれたらしい。


「ユリウスさん、ガエールの冒険者ギルドから、褐色の肌、銀色の髪、金色の瞳をした長身の男性について、問い合わせがきています。ギルドマスターがあなたの事だと思い、怪しい方ではないと答えてはいましたが……何かお心当たりはありませんか?」


 ユリウスは少し考え込んで、はぁ、とため息をついた。どうやら心当たりがあるらしい。


「多分、ネーデの森でガエールの冒険者を助けた時の事だと思う。関わりあいになりたくないなぁ」


「あの時の……」


 サーチートと一緒にキヨラ草を探しに行ったユリウスが、サーチートだけを私に召喚させる事によって戻して、自分はなかなか戻ってこなかった事があった。

 その時助けた冒険者の人たちが、ユリウスを探しているっていう事なんだろうか。


「ギルドマスターは、ユリウスさんに話を聞きたいって言っていました。どうされますか?」


「ガエールの街の人間とは、できれば関わりあいになりたくないんだが、あの日の事は話をしておいた方がいいだろうな。今、ギルドマスターは居るのか?」


「はい、居ます。では、応接室に行きましょうか」


頷いたジルさんは、私たちを連れて冒険者ギルドに戻ろうとする。そこでユリウスは、ちょっと待って、とジルさんに声をかけた。


「ジルさん、俺たちが今日冒険者ギルドに来た目的は、リュシーが今日はこちらに戻らないって、君に伝えに来たんだ」


「え? リュシーに何かあったんですか?」


「いや、大丈夫だ。問題ないよ」


 首を横に振ると、ジルさんは安心したようだった。


「ジルさん、今リュシーは、シルヴィーク村の俺の家に居るんだ。今夜は泊る事になっている。良かったら、ジルさんも来ないか?」


「え? いいんですか? ぜひ行きたいです!」


「じゃあ、仕事が終わる頃に迎えに来るよ」


 ジルさんの仕事は、あと一時間くらいで終わるらしい。

 そのくらいなら、ゴムレスさんと話している間に過ぎるだろう。

 ちなみに、ジルさんは明日も仕事らしい。

 選定会のためにたくさん休んでしまったから、しばらくの間は出なければいけないのだそうだ。

 残念!



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