第173話・ユリウスVSエミリオ




「初めまして、エミリオ王子。俺の名前は、ユリウスという。俺はアルバトス・フェルトンと知り合いでね、彼の無実を知っているんだ。だから、本当の黒幕のことを話してほしいのだが」


「嘘じゃない。僕はアルバトスから指示を受けて、黒魔結晶をばらまいたんだ。動物や魔物を狂暴化させるために使ったんだ」


「へぇ、では、あなたはいつ、アルバトスから指示を? 確か、この黒魔結晶が出回り始めたのは、ここ一か月から二か月の間だったと聞いているが……」


 ユリウスはアントニオさんとゴムレスさんへと視線をむけた。

 アントニオさんとゴムレスさんは、その通りだと頷いた。


「アルバトスが住んでいるシルヴィーク村は、今消えたという噂を耳にしている。そして、アルバトス自身も行方が知れず生死不明なはずだ。そんな中、あなたは一体どうやってアルバトスに指示を受けている?」


「そ、それは……あ、そうだ、もっと以前に指示を受けたのだ!」


 まるで、今思いついたみたいな答えだった。あ、そうだ、とか自分で言ったしね。


「もっと以前? 今は連絡が取れないのか? もしも連絡が取れない状態なら、どうして今もアルバトスの指示に従う必要があるんだ?」


「それは……」


 ユリウスに詰められたエミリオは、答えられずに俯いた。

 すぐに言葉が見つからなかったんだろうな。


「もしかして、人質でも取られて、無理やり従わされているのか?」


 ユリウスがそう言うと、エミリオは顔を上げて頷いた。


「そ、そうだ! アルバトスは卑怯者だから、人質を取ったんだ!」


 アルバトスさんを卑怯者と言われ、イラっとしたんだろう、サーチートがびくっと体を震わせた。

 また許せないって思ったんだろうな。でも我慢してね。

 多分、そろそろ決着がつくはずだ。

 みんなユリウスとエミリオの会話を聞いて、エミリオの言っていることがおかしいと気付いているはずだから。


「だけど、今、アルバトスとは連絡も取れない状態なんだろう? それなら、人質がユリアナ王女でない限り、あなたはもうアルバトスに従う必要はないのではないか? アルバトスは常にユリアナ王女のそばに居たし……もしもアルバトスが死んでいるのなら、ユリアナ王女も死んでいるだろう」


「え、えと……」


「だが、もしも人質がユリアナ王女ではなく、あなたの母親だというのなら、わからなくもないが……あなたの母親は王宮に居るはずだろう? アルバトスがあなたの母親を人質に取るには、難しいのではないのか?」


「それは……」


「人質は、母親だな? だとすれば、今あなたの母親を人質にしているのは、一体誰なんだ? アルバトスにはできないと思うが?」


 エミリオは今にも泣きそうな表情でユリウスを睨みつけると、俯いてしまった。


「でも、アルバトスなんだ……アルバトスが黒幕で……僕に指示したんだ!」


 と吐き捨てるように言ったけれど、もうその言葉を信用する人は、この場には居ないと思う。


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