第121話・商人ギルドからの依頼
二日後、私たちは再び商都ビジードの冒険者ギルドを訪れていた。
目的は、ゴブリン討伐の依頼を再び受けるためだ。
ゴブリンホイホイ状態のサーチートに、本当にリカバーの効果があるのかを確かめたかったし、ネーデの森で私たちが倒したゴブリンの数を聞いたアルバトスさんが、その数の多さが気になると言ったからでもある。
アルバトスさん曰く、もしかするとゴブリンが異常発生しているのではないか、との事だった。
そう言えば冒険者ギルドのギルドマスターであるゴムレスさんも気にしていたから、確認がてら聞いてみた方がいいかも。
ところで、何故商都ビジードを訪れたのが二日後なのかというと……それは察してもらいたい。
とある事情から体がだるくて、動けなかったからだ。
「おい、お前ら、どこに行っていたんだ!」
冒険者ギルドに入るなり、私たちを見つけたゴムレスさんが、怒鳴りながら近づいてきた。
一日空いただけなんだけど、どうして怒鳴られなくてはならんのか。
というか、冒険者ギルドのギルドマスターが、どうしてこんなに私たちを探すのか。
「何かあったのか?」
「あった! お前ら、ちょっと来い! おい、隣に行ってローレンスの野郎を呼んで来てくれ!」
ゴムレスさんは受付の女の子にそう指示すると、私たちを連れて奥にある応接室へと向かう。
五分もしないうちに、ローレンスさんが私たちの居る応接室を訪れた。
「やぁ、ユリウスさん。オリエさん、こんにちは」
「はい、こんにちは」
商都ビジードは、冒険者ギルドと商人ギルドの建物が並んで建っているから、すぐに行き来できるんだろうけど、商人ギルドのギルドマスターであるローレンスさんが、冒険者ギルドに居るのは、とても不思議な感じだ。
「今回は、お二人にお礼と依頼がありまして」
「お礼と依頼?」
「はい。二日前、ネーデの森で、木を伐り出しに行っていた工務店の人たちを助けてくださったでしょう? あの工務店には、商人ギルドから依頼をしていたもので、親方から聞いて驚きましたよ。本当に、ありがとうございました」
「いや、とんでもないです……」
確かに助けたけれど、サーチートのゴブリンホイホイのせいで、ゴブリンが増えちゃったのもあるし、こっちも迷惑かけてたはずだし、ね……。
「工務店の人たち、ユリウスさんの事、すごく強くて頼りになって、まるでルリアルーク王みたいだって言ってましたよ! あと、怪我を治してくださったそうで! 怪我人にかけてもらったポーション、特級らしいじゃないですか! 商人ギルドからお代をお支払いします!」
ローレンスさんはそう言うと、革袋をユリウスに差し出した。
ユリウスは気にしないでいいですよ、って言ったんだけど、ローレンスさんは首を横に振って譲らなかった。
「わかりました。では、受け取ります」
ユリウスは頷くと、革袋を受け取った。
中には、特級ポーションの代金……低級は三百ルド、中級は千ルド、上級は一万ルドが相場だって聞いているけど、特級はどのくらいのお値段なのだろう。
そんな事を考えていると、まるで私の心を見透かしたみたいに、ローレンスさんが言った。
「特級ポーションの相場は、だいたい上級の三倍ですね。オリエさんはポーション作りがお上手だと、ゴムレスさんにお聞きしています。商人ギルドの方にも卸していただけると、ありがたいですね。上級でも特級でも、買取させていただきますよ」
「本当ですか? ありがとうございます」
本当にありがたいなぁ~。
冒険者ギルド用にこれからは低級と中級を多めに作っていくつもりだったけれど、上級や特級も作って、商人ギルドに買取をお願いしよう。
「ところで依頼の件なのですが、ユリウスさんとオリエさんに、森に伐採に行く工務店の人たちの護衛と手伝いをお願いしたいのです。お二人がGランクである事は理解していますが、そこは私がゴムレスさんに交渉しました」
「護衛と依頼? 交渉?」
ゴムレスさんに目を向けると、護衛の依頼はDランクからしか受けられない決まりらしく、ローレンスさんが、ゴムレスさんに私たちが依頼を受けられるように交渉してくれたという事らしい。
「今回の護衛任務は、五ポイントと千ルド、工務店の手伝いの方は、二ポイントと五百ルド、さらに護衛中に討伐したゴブリンは、通常のゴブリン討伐の依頼とする。どうだ、受けるか?」
「もちろん!」
こんな好条件の依頼、受けない選択肢なんてないよね。
だけど、工務店の手伝いって何をしたらいいんだろう?
木の伐採を手伝ったらいいのかな?
「もちろん伐採を手伝っていただければありがたいですが、お二人にお願いしたいのは、アイテムボックスを貸していただきたいのです。荷車に積んで馬に引かせるより、効率がいいでしょう?」
「わかりました!」
私たちのアイテムボックス目当てとは、商人ギルドは目の付け所が違うね。
アイテムボックスの貸し出しだけじゃなく、たくさんお手伝いをさせていただこう。
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