第146話・これからやるべき事
スタンピードの話を聞いた後、私とユリウス、それからサーチートは、自分たちにこれから何ができるだろうっていう話をした。
小さな町や村の防衛対策は、冒険者ギルドと商業ギルドが協力して進めてくれている。
私たちは両ギルドに依頼されて、木々の伐り出しの護衛や、聖水を作ったりしたんだけど、これから先はどうすればいいのか。
今の私とユリウスの立場って、ただの冒険者でしかない。
だから、今の私たちにできる事は、ギルドに他に何か手伝える事があるか聞いて、その手伝いをするか、増え続けていると思われるゴブリンを、できるだけ狩って減らす事くらいで……私とユリウスは、後者を選んだ。
「念のため、他の森も見ておいたほうがいいですよね」
今ゴブリンはネーデの森で増え続けていると思われているけれど、他の森の調査も必要かもしれない。
ネーデの森の調査は、ビジードとガエールの冒険者ギルドが行っているから、私たちが見に行くのなら他の森という事になる。
だから、とりあえず他の森の調査をして、異常がなければ、ネーデの森でできるだけ多くのゴブリンを討伐する事に決めた。
ユリウスはオブルリヒト王国内の街や村には、だいたい行った事があるらしいので、テレポートの呪文で簡単に行けるんだって。
テレポートの呪文って、本当に便利だよね!
「ゴブリンの討伐をするのなら、ちゃんと後始末までしなければいけませんよ」
とアルバトスさんに言われて、もちろんですと私たちは頷いた。
ゴブリンは素材として使えるものがないので、ある程度ポイントのために依頼をこなした後は、ただ討伐するだけになっていることが多いのだ。
だけど、討伐後の死骸をそのままにしていると、ゾンビ化したり、死骸を他の強い魔物が食い荒らしにくる可能性があるから、死骸を焼いて灰にするという後始末をしなければいけない。
ただこの後始末、ほとんどの冒険者が行っていないというのが現実だ。
まぁ、魔法を使えない人たちは、かなり大変だし面倒だと思う。
アイテムボックスやマジックバックを持っていたら別だろうけど、ゴブリンを焼くために油を持ち歩くってのも大変だろうしね。
ゴブリンの死骸を焼いたら、後には魔石が残ってはいるんだけどね、拾うのが面倒だし、魔石も小さいから大したお金にはならないみたいだしね。
「ちゃんとゴブリンの後始末をするのであれば、商都ビジードの魔法屋に行けば、便利なアイテムを買えるかもしれないですよ」
「魔法屋って、ゴブリンの魔石を買い取ってくれるんでしたっけ?」
ゴブリンの耳を切り取っていないから、冒険者ギルドの依頼にならなかった分の魔石が、結構貯まっているんだよね。
「えぇ、そうですよ。ゴブリンだけでなく、他の魔石も買い取ってくれます。持ち込まれるのは、ゴブリンや小さくて素材も取れないような魔物の小さな魔石が多いですね。魔法屋はその小さな魔石から魔力を取り出して加工したり、余った魔力の買い取りをしています。そして、その魔力を使って魔道具を作ったり、生活に使う魔道具の動力源としての魔石を作って売っているって感じですかね」
「余った魔力の買い取り?」
どういう事かと首を傾げると、こういう事かな、とユリウスが綺麗な三角錐の魔結晶を作って私に渡してくれた。
「そうそう、こうやって自分の必要のない魔力を魔法屋に売る事ができるんです。使った魔力は、体を休めれば回復しますし、戦闘時に魔力切れを起こした際には、魔力を回復させるアイテムとして使う事もできます。ところでユリウス、今あなたの作った魔結晶は、無色透明なんですね」
私の手にあるユリウスの作った魔結晶を見て、アルバトスさんが言った。
確かに、今ユリウスが作った魔結晶は、私が作る魔結晶と同じ、無色透明だ。
以前は、風魔法が得意だから、緑色の魔結晶だったはずなのに。
「本当だね、驚いたよ。あ、でも、意識したら属性付きの魔結晶を作る事ができるよ」
ころん、と次に渡してくれたのは、濃い緑色の魔結晶だった。
意識して属性付きの魔結晶が作れるという事は、無色透明の魔結晶は無意識で作ったという事だろうか。
「オリエさんもそうですが、無色透明の魔結晶は、聖属性のものでしょうね。珍しいです。高値で売れるかもしれませんが、いろいろと詮索されるかもしれないから気を付けてくださいね」
「は、はいっ」
珍しいといろいろと詮索されちゃうのかな。アルバトスさんの言う通り、気を付けよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます