第126話・新たな依頼


 ローレンスさんからの新たな依頼は、一週間でできるだけ多くの聖水を用意する事だった。

 作った聖水は、すべて商人ギルドで買い取ってくれるらしい。


「今サーチートくんが持っているキヨラ草は、そのままオリエさんが作る聖水の材料にしてください。キヨラ草は貴重なものですが、ビジードの僧侶や神官に渡して中級の聖水にされるよりも、オリエさんの作る特級の聖水の材料になった方がいいです」


 毎回特級の聖水ができるとは限らないけれど、多分、中級にはならない思う。

 わかりましたと頷くと、ローレンスさんはユリウスとサーチートへと目を向けた。


「ユリウスさん、サーチートくん、あなたたちにはキヨラ草の収集をお願いしたいです。キヨラ草が見つかりにくいものだという事はわかっていますが、サーチートくんは見つけるのが得意のようですから」


「うん、わかった、任せてよ!」


「了解した」


 キヨラ草を探すのはサーチート、ユリウスはその護衛という事なんだろうな。

 ゴブリンが居ないと思われる森でも、サーチートだけじゃ危険だろうからね。


「オリエさん、聖水を作るための部屋を、ビジードに用意しましょうか? というか、あなたたち、一体どこを拠点にしているんですか?」


「拠点って?」


「ずっとビジードに居るわけじゃないみたいですしね。でも、ポーションや聖水を作ってるわけですから、どこかに拠点は構えているでしょう?」


「え、えっと……」


 まさか、シルヴィーク村だとは言えないからなぁ。


「そんな事、どうでもいいだろう」


「どうでも良くねぇよ。何かあった時に連絡つくように、どこかに拠点を構えろよ。もしくは、冒険者ギルドにお前らの行き先を逐一報告しやがれ」


「何言ってんだ、アンタ」


 ユリウスが呆れたようにゴムレスさんを見た。

 私もちょっとびっくりしちゃったけれど、ゴムレスさんは何度も私たちを探してたんだよねぇ。

 だけど、やっぱりシルヴィーク村を拠点にしているだなんて、言えないからなぁ。

 結局、今はいろんな場所を転々としているという設定にして、近いうちにどこかに拠点を構えるという事で、私たちはゴムレスさんとローレンスさんの追求を逃れた。

 拠点候補には、二人のギルドマスターから、商都ビジードを勧められた。


「あぁ、そうだ。例の衣装ですが、無事に出来上がりましたよ。素晴らしい出来です。リュシーは最後にユリウスさんに着せたがっていましたが、商人ギルドからの依頼中でしたの諦めてもらいました。リュシーは不貞腐れながら、昨日王都へと旅立ちましたよ」


「そうなんですか? 仕上がった衣装、見たかったなぁ、残念!」


「王都には、ジルも休みを取ってついて行ったぞ。リュシーが戻ってきたら、俺も見せてもらうつもりだ」


 そうかぁ、ジルさんもリュシーさんについて行ったのかぁ。

 王都でデートって事かもね。


「王の衣装の選定日は、二日後です。私もこの後、王都へと

向かいます。お二人も、王都まで見に行きませんか? 高速馬車を手配していますので、乗せてあげられますよ」


 せっかくのお誘いだけれど、私とユリウスは首を横に振った。

 ユリウスもだろうけど、私はに王都行きたくなかったし、やらなければならない事があった。


「あの、私たち、新しい依頼を受けたんですけど……」


「あぁ、そうでしたね。一週間後って言ってましたね、私」


 ローレンスさんは忙しくてお疲れ気味なのかもしれない。

 苦笑しながらごめんなさいと謝ったローレンスさんは、選定会を終えて戻ってきたら、美味しいご飯をご馳走してくれると言った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る