第128話・独占欲はお互いさま



 翌日、ユリウスとサーチートは、作ってあげたお弁当を持って、キヨラ草を探すために、ゴヤの森に出発した。

 一人居残りの私は、聖水作りをしなければいけないんだけど――ぶっちゃけ寂しい。


「ユリウスとサーチート、大丈夫かなぁ。やっぱり私も一緒に行きたかったなぁ」


「え? オリエさん、あなた、あれだけ束縛されていて、ユリウスと一緒に居るの、嫌ではないのですか?」


「え? どういう事ですか?」


「どうもこうも、あなた、朝も昼も夜もずっとユリウスにくっつかれているでしょう? 鬱陶しくはないのですか? いろいろと大変でしょう?」


 アルバトスさんが言う、いろいろと大変でしょう、は、多分夜の事なんだろうな。

 うん、確かに昨日はいろいろと大変だった。

 お弁当が作れなくなるからいい加減にしなさいって言って、止めてもらったんだけど、そうでなかったら多分朝まで放してもらえなかったかもしれない。

 だけど、まぁそういう意味ではいろいろと大変ではあるけれど、私にとってユリウスは、ちょっとやきもち焼きな独占力の強い男の人、というくらいで、あまり束縛されている実感はなかった。

 ただ、ちょっと……ううん、ものすごく心配性かなぁと思う。


「でも、ユリウスって、ものすごく心配性っていうか、過保護だなって思う時があります。昨日もユリウスが居ない間、シルヴィーク村から出ないようにって言われましたし」


 私がそう言うと、アルバトスさんは苦笑した。


「それも独占欲でしょうが、あなたを失う事を恐れているのでしょうね」


「え?」


 今までの話の流れから、独占欲っていうのはなんとなくわかるけれど、どうしてユリウスが私を失う事になるというのだろう。

 だけど、以前ユリウスも似たような事を言っていたし、アルバトスさんも似たような事を言っていたような気がする。

 ユリウスは私を失うのではないかと本気で怯えていたし、アルバトスさんは私に、ずっとユリウスのそばに居てあげてほしいと言っていた。

 アルバトスさんは、まだ私が知らないユリウスの何かを知っているのかもしれない。

 だけど、今はそれを聞いても、教えてくれないんだろうなぁ。


「独占欲が強くて、束縛されていたとしても、私、ユリウスなら全く問題ないです。むしろ、どんとこいです。だって私は彼の事が、大好きですから」


 私がそう言うと、アルバトスさんはぷっと吹き出した後、優しい表情でありがとうと言った。

 アルバトスさん、もしかしてユリウスの私に対する言動を気にしていたのかな。

 他の人はどうなのかは知らないけれど、ずーっとお一人様だった私にとっては、自分の大好きな人に独占されるってのは、幸せな事でもあるので、全く問題ない。

 それに、私だって独占欲が強い方だと思う。

 多分、ユリウスの隣に自分以外の女の人が居たら、ユリウスに負けないくらいやきもちだって焼くだろうし、もしも何かの理由でユリウスと離されたとしても、何としてでもユリウスの事を探し出そうとすると思うから。

 私のこの気持ち、今度ユリウスの様子がおかしかったら、教えてあげようかな。

 そうしたら、彼はどう思うだろう?

 喜んでくれるかな?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る