第129話・素敵衣装は宅コスで
「さて、これが昨日、サーチートくんからお預かりした物です」
アルバトスさんはそう言うと、大きな籠を持ってきた。
籠の中身はサーチートが集めた薬草類で、キヨラ草だけでなく、薬草や毒けし草もたくさん入っていた。
「サーチートくんは、本当に健気な良い子ですね。あの子の頑張りに応えるためにも、オリエさんには聖水だけでなく、ポーション類もたくさん作っていただかなくてはいけません」
「はい」
本当に、あの小さな体でいつの間にこんなにたくさんの薬草を集めたのだろう。
ゴブリンに襲われる可能性がある中、一生懸命コツコツと集めたのだと思うと、目頭が熱くなる。
アルバトスさんの言う通り、サーチートのためにもポーション類もたくさん作った方がいいんだろうけど……ポーションって、そんなにたくさん必要なのかな?
「ビジードのギルマスたちは、買い取ってくれるって言ったんでしょう?」
「それは、そうなんですけど……だけど、聖水はともかく、ポーション類はそんなに必要でしょうか? 他に作れる人だって居るだろうし、回復魔法を使える人だって、居るでしょう?」
ゲームでは回復魔法を多用して、ポーション類は持っていてもほとんど使わなかったしなぁ、と思う。
もちろん、買い取ってもらえるのはありがたいんだけどね。
「腐るものではないですから、買い取って貰えばいいんです。それに、回復魔法は魔力が切れたら使えませんし、回復魔法が使える冒険者でもポーションを常備しています。在庫過多になれば、他のギルドに回すはずだし、オリエさんの作るものはとても質が良い物だから、安心して作ればいいんですよ。それに、お金、貯めているんでしょう? 素敵なルリアルーク王の衣装のために」
「はい」
確かに素敵衣装購入のために、お金を貯めなくてはいけない。
ユリウスは魔物の討伐でたくさん稼ぐだろうし、私は聖水やポーション類作りでお金を稼げるかなぁとは思っている。
素敵衣装……一着五百万ルド、金貨五千枚だもんなぁ。
ユリウスが私の分も頼んだから、二着で金貨一万枚だ。
頑張って稼がなきゃなぁ。
「あの素敵衣装は外で着ると目立ちますので、宅コス予定です」
「宅コス?」
「えーっと、この家だけで着る予定です」
「それはもったいないですねぇ。まぁ、仕方ないとも思いますが」
確かにもったいないけれど、仕方ない事でもある。
ローレンスさん曰く、おそらく選ばれないという事だけれど、あの衣装は選定会で一度は大勢の人の目に留まるものなのだから。
「どんな衣装なのでしょうね。私、とても楽しみです。あの子は正装が好きではないので、あまり見る機会がないんですよ」
それはユリアナ(女性体)だったからっていうのもあると思うけど、確かにユリウスはラフな服装の方が好きみたいだよね。
「私も楽しみです。リュシーさんの衣装を着たユリウス、本当にカッコいいんです。私、頑張ってお金を貯めて、リュシーさんのところに素敵衣装を迎えに行きますので、待っていてくださいね」
「はい!」
にへら、と嬉しそうに笑うアルバトスさん。
私、この人のこういう親馬鹿なところ、すごく好きなんだよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます