第98話・ユリウスの装備



 ローテーブルに並べられた金貨は、ジルさんが丁寧な手つきで再び麻袋に戻してくれた。

 それを受け取った私に、


「ねぇ、オリエちゃん、お金、いっぱいだね。何を買うの?」


 とサーチートが言った。


「そうだねぇ。まずは、ユリウスの装備かな。ボロボロになっちゃったからねぇ」


「あぁ、そうだねぇ。あの熊のせいで、ユリウスくんの服は、ボロボロになっちゃったもんねぇ」


 とは言っても、私は武器や防具の事、よくわからないんだよねぇ。

 元の世界でゲームをしていた時は、武器なら攻撃力、防具なら防御力が高いものを適当に買っていたのだけど、そういうのはこの世界ではわかるものなのだろうか?

 鑑定の魔法が使えるから、それでわかるのかな。

 でも、例えば攻撃力が高い武器や防御力が高い武器があっても、使いづらかったりしたら意味がないような気もするし。

 一番いいのは、ユリウスが選んでくれる事なんだけどな。

 隣に座っているユリウスの顔を見つめると、彼は少し考え込み、言った。


「俺は、この間まで着てたような、動きやすいジャケットタイプのがいいんだけどなぁ」


 巨大熊の攻撃を受けて、ボロボロになってしまった、ユリウスの黒いジャケット。

 私がマジックバックから、ボロボロのジャケットを取り出すと、


「よろしければ、ちょっと見せていただけませんか? お店を紹介できるかもしれません」


 とジルさんが言ってくれた。

 ボロボロのジャケットをジルさんに渡すと、彼女は、「本当にボロボロですね」と苦笑しながら、鑑定魔法を使ってボロボロのジャケットを確認していた。


「オリエさん、このジャケット、ものすごく良いものですよ。魔物から取った特殊な糸を使って、さらに特殊な法術で織られた布で、丁寧に縫われています。防御力がとても高いものです」


「え? そうなんですか?」


 ユリウスの顔を見ると、うん、と頷いた。

 知っていたのなら教えてくれればいいのに。

 ボロボロだから、もう少しで捨てちゃうところだったよ。


「それに、このジャケットと同じ物を買うのなら、もしかすると、先程お渡ししたお金じゃ足りないかもしれません……」


「え? そんなに高いんですか?」


「えぇ、とても高いと思います。それに、ユリウスさんのものだと、オーダーメードになるでしょうから」


「オーダーメード?」


「えぇ。ユリウスさんの体型だと、既製品では体に合わないのではないかと……」


「袖が短かったり、ズボンが短かったりすると思うぜ」


「あぁ、そうかぁ……」


 やばい……ゲームをしていた時の知識のせいで、装備って、何を買っても装備できるものだと思い込んでたよ。

 自分の服を買う時は、太っていた自分の体形に合う物があるか、気にしてたっていうのに、私ったらなんでその事に気付かなかったんだろうね。


「アーマーとかじゃ駄目なのか? そんだけありゃ、結構いいのが買えるはずだが」


 なんてったって、金貨二百三十八枚だもんね。それに、私がポーションを売った分もあるから、金貨三百枚……三十万ルドはあるわけだからね。

 でも、ユリウスは、アーマーは動きづらいから嫌なんだって言っていた。

 確かに最近のユリウスの戦い方を考えれば、アーマーだと動きづらいよね。


「じゃあ……このジャケットを直すというのは、どうですか?」


「え? ボロボロですけど、直せるんですか?」


 えぇ、とジルさんは頷いた。

 肩のあたりのが裂けてボロボロになっていたから、もう直せないと思っていたけれど……直す事が出来るのなら、そっちの方がいい。

 ユリウスの顔を見ると、彼もそれでいいと頷いている。


「ここは大きな街ですから、いろんな店がありますからね。私の知り合いがやっている店なら、直せると思います。紹介するので、行ってみてください」


「はい、ありがとうございます」

 

 ジルさんが紹介してくれた店は、武器や防具も売っていて、メンテナンスもしてくれるお店らしい。

 私たちはジルさんからお店の場所を聞いて、行ってみる事にした。


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