第51話・浮かれるオリエとやきもちユリウス
私は、ユリウスの事が好きだ――自分の気持ちをはっきりと自覚した私は、幸せすぎて浮かれていた。
私、彼にまだ返事はしていないけど、告白はしてもらっているんだよね。
という事は、好きな人と、両想いって事になる。
しかも、あんなにカッコいい素敵な男の人と、両想いなのだ。
なんて幸せなんだろう……そんなふうに思うと、涙が零れてきて。
「オリエ、どうしたんだい?」
いつの間にかすぐそばまで来ていたユリウスに、驚かれてしまった。
「ユ、ユリウス、どうかしたっ?」
「いや、それは俺が聞いてる事なんだけど」
「そ、そうだねっ! 何でもないよっ」
「え? 何でもないのに、泣いてたの?」
「目、目にごみが入ったんだよっ」
ユリウスと両想いになって、幸せを噛みしめていたなんて、本人を目の前にして言うには恥ずかしすぎる。
「目にごみ? じゃあ、見てあげるよ」
ユリウスの顔が近づいてくる。
うわぁ、かっこいいっ!
私は恥ずかしくなって、ぎゅっと目を瞑ってしまった。
「目を閉じていたら、見る事ができないよ?」
確かにそうだ。私が目を開けると、心配そうな表情でユリウスが私の目を覗き込んでいた。
金色の瞳が綺麗だなと思う。
黄金のようで、蜂蜜のようで、とても綺麗な金色だ。
「もう、取れてるみたいだね」
「うん、もう痛くないよ」
もともと目にごみなんて入っていなかっんだけど、話を合わせておく。
ユリウスは良かったと呟くと、私を少し寂しそうな目で見つめ、言った。
「ねぇ、オリエ。伯父上と何の話をしていたの?」
「え? どうして?」
「いや、ちょっと、気になって……」
ユリウスは少し唇を尖らせて言った。
ユリアナだった頃には見なかった子供っぽい表情を見て、私は心の中で可愛いなと思う。
「アルバトスさんの体の事とか、今までの事をお互いにお礼を言ったりとか、そんな感じの話をしていただけだよ」
私がそう言うと、ユリウスは何故か驚いたようで、それから安心したように息をついた。
「良かった……伯父上といい雰囲気になってたのかと思ったよ……」
「何故!」
「オリエの好みは、伯父上みたいな大人な男かと思っていたからさ」
「え? だから、何故!」
私、さっきから何故としか言っていないけれど、聞かずにはいられなかった。
「ほら、俺は君がこちらの世界に来てから、結構君のそばにいたけれど、元の世界では君は多分、俺より年上だったはずだし、俺なんて子供みたいなものなんじゃないかと……」
そう言って俯いたユリウスを見て、私はもしかして、と思った。
もしかしてユリウス、やきもち妬いてるの?
「呆れられるの覚悟で、はっきり言うけど、俺、妬いてるから!」
うわぁ、本当に妬いてた。
私は自分の顔が真っ赤になるのを感じていた。
ユリウスも、ちょっとわかりにくいけれど、褐色の肌を赤くさせている。
ここは変な誤解をされない内に、ちゃんと言っておいた方がいいよね。
「あのね、そりゃぁ確かに私は年上ではあったけどね、そんなに大人な人間じゃないんだよ?」
「え?」
私と言う人間は、オタク趣味なせいもあり、年をとっていても、精神的には幼い、子供みたいなところがある人間だったと思う。
それを伝えると(まぁ、オタク趣味のくだりは省いたけれど)、ユリウスは一瞬信じられないって表情をしたけれど、その安心したように笑った。
「だから、ユリウスの方が、私よりも大人だと思うよ」
「そうかな」
「そうだよ。あとね、アルバトスさんから……」
「え?」
「私、アルバトスさんから、ユリウスのそばに居てあげてって言われたんだけど……」
「う、うん……」
ユリウスは真剣な表情で、私の顔を見つめていた。
私も彼を見つめ返し、言葉を続ける。
「私、アルバトスさんに言われたからじゃなくて、ユリウスのそばに居たいって思ってるからっ」
「え?」
私がそう言うと、ユリウスは驚いたのか、固まってしまった。
なんだこの反応は……私、伝え方間違っちゃったのか?
あ、ヤバい、確かに間違っちゃったかもしれない。
こんな遠回しの伝え方、ツンデレ系のアニメキャラクターみたいじゃないか!
どうしてわかりやすく、「私もあなたが好きだから」とか言わなかったのか!
私の人生、恋愛とはご縁がなかったから、告白の仕方がよくわからん!
「あのね、ユリウス、私っ……」
とりあえず、告白をやり直そう――そう思ったけれど、先程よりも赤い顔をしたユリウスは、首を横に振った。
「いや、いい、わかったから」
「わかった? 本当に?」
本当にあの遠回しな言い方で、私の気持ちはユリウスに伝わったのか?
不安に思いながら彼の顔を見つめると、大丈夫だと言わんばかりに、ユリウスは頷いた。
「うん、わかった。つまりオリエも、俺の事が好きって事だよね?」
「そ、そうだよ」
良かった……なんとか通じていたらしい。
うんうん、と何度も頷くと、ユリウスは本当に嬉しそうに笑い、私の耳元で、愛してる、と囁いてくれた。
私はまた何度もうんうんと頷いて、きっと真っ赤な顔で、必死に私もだと伝える。
「オリエって、不思議だね。年上だと思ってたけど、君が言う通り、確かに幼くも感じるよ」
「そうだよ。私って、そんなに大人じゃないんだよ。そういえばさ、年の話をした事なかったけど、ユリウスって、何歳なの?」
「俺は、二十二歳だよ」
「そう、なんだ」
「うん、どうかした?」
そうかぁ、ユリウスは二十二歳なのか。
私はステータスに二十歳って書いてあったから、今の私よりも年上なんだね。
「オリエは今、何歳なんだろう?」
「私は、ステータスには、二十歳って書いてあったよ」
「ステータス……」
「うん」
何やらユリウスは考え込んだ。どうしたのかな?
「二十歳だと、今の君は俺よりも少し年下だけど、似たような年齢って事だね」
「そう、だね」
ユリウスは嬉しそうに笑う。
でも、さっき一瞬考え込んでいたのは、一体なんだったんだろう?
ステータスの事を考えていたのかな?
ステータスと言えば、私のステータスには、かなり大雑把に、真聖女だとか魔力∞とか書かれてるんだけど、他の人のはどうなっているんだろう?
もっと詳しく書いてあるのかな?
ちょっと気になったので、ユリウスに聞こうとしたんだけど、
「オリエちゃーん、ユリウスくーん、アルバトス先生が鍵の説明をするって言ってるから、こっち来てー」
とサーチートが私たちを呼びに来て、私はユリウスにステータスの事を聞きそびれてしまった。
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