第163話・スタイリッシュ・アーマーでの再会
商都ビジードでエリザベス様とお会いしてから、三日経った。
そろそろエリザベス様はガエールに戻られたんじゃないかと思い、もう大丈夫だろうと、私たちはリュシーさんの元へ行くことにした。
万が一エリザベス様がまだビジードにいらっしゃったとしても、彼女が居るのはきっと冒険者ギルドか商業ギルドのどちらかだろうし、エリザベス様が立ち寄りそうな大通りから離れていれば問題ないだろう。
リュシーさんの店は、大通りから外れているし、問題ないはずだ。
と、そんなふうに思って訪れた、リュシーさんのお店、スタイリッシュ・アーマーなんだけど、私たちはそこでエリザベス様と再会してしまった。
「お前は! こら、待ちな!」
エリザベス様は私たちを見るなり、距離を詰めてユリウスの腕をがしりと掴んだ。
掴まれた腕を振り払うことくらい簡単だろうけど、振り払うことができない紳士のユリウスは、エリザベス様を困ったように見つめた。
「あの、エリザベス様、何故俺の腕を掴まれるのですか?」
「お前が逃げようとするからだよ。この前もだけど、どうして逃げてるようとするんだい?」
「べ、別に逃げてなんか……」
ユリウスは違うと言ったけれど、エリザベス様は見るからに怪しんでいた。
やっぱり何か気付かれているのかもしれないなぁ。エリザベス様はニンマリと笑うと、続ける。
「そうなのかい。それじゃあ、今日は後から食事でも行こう。リュシオンの店で話すのでもいい。お前は今、リュシオンに会いにきたんだろう?」
「そ、そうですが……」
ユリウスがチラリと私を見た。
これはもしかして、エリザベス様は私たちがリュシーさんの店に来ると思って、ここを訪れたってことなの?
「ユリウスさん! オリエさん! エリザベス様は今日、リュシーの店にお買い物に来られたんです!」
そう言ったのは、エリザベス様と一緒に居たジルさんだった。
「エリザベス様はガエールの冒険者の方のために、防御力の高い装備をお求めなのです」
ジルさんがそう言うと、エリザベス様が頷いた。
エリザベス様のそばには、三人の冒険者と思われる人たちが居た。
一人はこの間ユリウスに迫っていたサラさんで、後は男性が二人。きっとエリザベス様の護衛で来ているんだろうな。
「あぁ、私はうちの子たちの装備を見に来たのさ。リュシオンの腕がいいのは、知っているからね」
ということは、私たちが今日リュシーさんのところに来るというのは誰も知らないわけだし、今ここでエリザベス様に会ったのは、本当に偶然ということになる。
待ち伏せされていたわけじゃないのかと思い、ほっと息をつくと、エリザベス様が私を見て苦笑した。
もしかして、考えていることがわかっちゃったのかな。
「ちょっと、店の前で何の騒ぎだい! って、エリザベス様? と、ユリウス?」
店の前で騒いでいたのに気づいたのか、リュシーさんが飛び出してきた。
リュシーさんは私たちとエリザベス様たちが一緒にいるのを見てものすごく驚いて、助けを求めるかのようにジルさんを見つめたけど、ジルさんの方も困って首を横に振った。
「リュシオン! 今日の私は客だよ! うちの子たちに品物を見せてやっておくれ! それから、私はその間にこの男と話をしたいから、お茶でも出しておくれよ!」
「え? あ、はい! じゃあお連れの人たちは店で品物を見てもらって……エリザベス様とユリウスは……えっと、上に……」
本当にいいのか? みたいな感じで、リュシーさんがユリウスを見つめる。
エリザベス様に腕を掴まれたままのユリウスはもう諦めたらしく、ため息をついて頷き、それを見たエリザベス様は満足そうに笑った。
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