第164話・エリザベス様とサーチート


 私とユリウスは、エリザベス様と一緒に二階へと通された。

 エリザベス様と一緒に居た三人の冒険者たちは、一階のお店でそガレアスさんとソフィーさんが対応している。

 何か装備を買うにしろ、強化するにしろ、あの二人が居れば大丈夫だろう。

 

「ねぇ、実はすごく気になってたんだけど、アンタ……オリエが抱いている、それは何だい?」


 ジルさんがお茶を淹れてくれて、いただこうとしたところで、不思議そうな表情をしてエリザベス様が言った。

 私に尋ねられたし、それって言われたし……それっていうものに該当するのって、きっとサーチーとのことだよね。


「エリザベス様、もしかして、それって、ぼくのこと?」


 私の膝の上で首を傾げたサーチートに、エリザベス様はそうだよと頷いた。


「お前は一体何者なんだい? 小さな動物のようにも見えるし、まるでぬいぐるみのようにも見える……お前みたいな不思議なものは、初めて見たよ。生きているのかい?」


「生きているよ! ぼくの名前はサーチート! オリエちゃんのスマホだよっ♪」


「スマホって何だい?」


 このやり取り、何回もやったよねぇ。

 この世界の人にスマホって言っても、わかるはずないし、私も上手く説明できないよ、サーチート。

 だから私はこう補足するのだ。


「簡単に言うと、私の従魔です」


「あぁ、そうなんだね」


 あっさり納得してくれた。

 従魔登録を勧めてくれたゴムレスさん、グッジョブ!


「でも、不思議な子だねぇ。ちょっと私にも抱かせてくれないかい?」


 あはは、エリザベス様、サーチートが可愛いから、抱っこしたくなっちゃったんだね! その気持ち、ものすごくわかる!

 でも、サーチートには意志があるから、私が勝手にいいですよって返事はできないんだよね。


「サーチート、どうかな?」


「うん! ぼく、エリザベス様に抱っこされてもいいよ!」


 サーチートがそう言うから、私はサーチートをエリザベス様に差し出した。

 テーブルには今、ジルさんが淹れてくれたお茶が並んでいるからね。

 サーチートが自分でエリザベス様のところに行こうとすると、ガチャンってなっちゃう。


「へぇ、触り心地はぬいぐるみみたいにふわふわ何だねぇ。ちっちゃい手が可愛いねぇ。ほら、お菓子食べるかい?」


「うん、ぼく、食べるよ! エリザベス様、ありがとうー」


 エリザベス様からクッキーを貰ったサーチートは、ご機嫌だ。

 エリザベス様の方もご機嫌だし、良かったね!


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