第137話・依頼未達成?
「大丈夫かなぁ? 依頼未達成だと、どうなるんだっけ? ペナルティで罰金になるんだっけ?」
そう言った私に、ユリウスはのんびりと、罰金だったかなぁと首を傾げた。
「そんなに気にしなくてもいいんじゃない? 遅れた分は、また納品すればいいんだし」
「そうかなぁ」
「何本以上の納品って、そこまで決められてなかっただろ?」
確かにそうなんだけど、でも、今回私がローレンスさんから依頼されたのは、一週間で、できるだけ多くの聖水を用意する事だったはずだ。
ユリウスがなかなか帰ってこなかったあの日の後、お互いにくっついていたい衝動に駆られた翌日、私は一人で立つ事ができなくて、最終日の昨日、慌てて聖水を作ったんだけど、依頼を受けてから合計十本しかできなかった。
私の場合、大体、キヨラ草一本で、二本の聖水ができるみたいなんだけど、まだ三本のキヨラ草が残っている。
つまり、時間さえあれば、あと六本の聖水を作る事ができた計算になるし、もう少しユリウスとくっついていた時間を減らしていたら、ユリウスとサーチートはまたキヨラ草を探しに行っていただろうし、私だってもっと聖水を作る事ができたわけなのだ。
私の馬鹿、と呟くと、オリエちゃんは真面目だなぁと、サーチートが笑い、ユリウスとアルバトスさんも苦笑した。
「オリエちゃんは、昔から本当に真面目なんだよねぇ~」
「確かに、キヨラ草はまだ余っているから、作れば納められる聖水の数は増えると思うけど、これだけしか作れませんでしたって、特級レベルの聖水を十本納めてもらって、嫌な顔をする人間はいないと思うよ」
「そうですよ。オリエさんの考え過ぎです」
「そう、ですかねぇ」
真面目なのは、認める。
今はだいぶ緩くなったとは思うけれど、私は元々、真面目で融通が効かない、いろいろと気にしすぎな面倒な性格をしているのだ。
そんな私は、本当に大丈夫だろうかと気にしながら、ユリウスとサーチートと共に商都ビジードへと向かった。
聖水の納品は、冒険者ギルドで行われた。
商都ビジードの冒険者ギルドへと行くと、私たちに気付いた受付の女の子がまずゴムレスさんを呼び、その後隣の商人ギルドにローレンスさんを呼びに行く。
そして私たちはいつもの応接室へと通され、ローレンスさんが来るのを待った。
「ローレンス様がいらっしゃいました」
受付の女の子がローレンスさんを連れて戻って来た。
ここでふと、ジルさんはお休みなのかな、と思った。
受付には居なかったけど、倉庫の方で鑑定の仕事をしているのかな。
「やぁ、オリエさん、納品に来てくださったそうですね」
「はい、そ、そうです! あの、ご依頼の聖水なんですが、これで大丈夫でしょうかっ」
これでは少ないと言われたらどうしようと思っているから、ちょっと声が震えた。
持ってきた聖水をテーブルに並べると、
「十本……」
「マジか」
とローレンスさんとゴムレスさんが呟くように言った。
これはどうなの? 少ないって事?
「確認、します」
鑑定、と唱え、ローレンスさんが納品した聖水を確認する。
「全て特級です。オリエさん、十本も、ありがとうございます! あなたに依頼して良かったです!」
興奮気味に言うローレンスさん。
マジか、すげぇな、と叫ぶゴムレスさん。
これは……満足してもらってるって事で、大丈夫って事でいいのかな?
「あ、あの、依頼未達成にはなりませんか?」
「何をおっしゃっているんですか?」
不思議そうに首を傾げるローレンスさん。
ゴムレスさんも、大変だったろうとねぎらってくれる。
どうやらユリウスたちが言った通り、全く心配する事はなかったみたいだ。
良かったなぁ。
でも、残りのキヨラ草で聖水を作って、なるべく早く追加納品する事にしよう。
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