第156話・魔石回収
「ゴヤの森のゴブリンは、もうこれで終わりかな。だいたい、五十匹くらい居たかな」
足元に転がるゴブリンの死体を見て、ユリウスは言った。
ゴヤの森に居たゴブリンは、普通のゴブリンばかりが五十匹くらい。ホブゴブリンとかいう大きなゴブリンは居なかった。
「この森のゴブリンは、普通に増えたって感じなのかしらね」
「あぁ、そうだな。でも、やっぱり多いな」
苦笑したユリウスは、足元に転がるゴブリンの死体にバリアをかけて、火魔法を唱えた。
バリアの中で赤い炎に包まれたゴブリンの死体は灰になり、後にはいくつもの魔石が残される。
「サーチート、出番だよ。魔法屋のクラウドさんから貰ったアイテムは、ちゃんと持っているかい?」
『うん、これだよね!』
サーチートは肩から下げている自分のマジックバッグに手を突っ込むと、クラウドさんがくれた魔石回収アイテムを取り出した。
サーチート用にチョーカー型にしてもらったけど、今のサーチートは蝶ネクタイをつけているから、と小さな体で魔石回収アイテムを抱え、可愛い声で叫ぶ。
『魔石、回収!』
地面に落ちていたゴブリンの魔石は、一瞬で魔石回収アイテムに回収された。
「便利だなぁ。魔石集めが、ものすごく楽だ」
しみじみと言うユリウスに、笑ってしまった。
確かに、今までは地面に落ちた魔石を、一つずつ拾っていたんだもんねぇ。
ものすごく背が高い彼にはとても苦痛な作業だったのだろう。
「本当にね。それから、こんなのを考えつくなんて、アルバトスさん、本当にすごいわ」
この魔石回収アイテムは商都ビジードの魔道具屋であるクラウドさんから貰ったものだけど、考えたのはアルバトスさんだ。
アルバトスさんって、本当に頭のいい人だよね。
それにアルバトスさんは商都ビジードの冒険者ギルドのゴムレスさん、商業ギルドのローレンスさんとも知り合いだった。
どうして知り合いだったのに教えてくれなかったのかと聞いたら、ユリウスのことがどこからバレるかもしれないからってことだったんだけど、知り合いだってことくらい教えてくれてもいいのにとも思う。
「よし、じゃあ、次、行くか」
と言ったユリウスが、サーチートを抱き上げた。
『ユリウスくん、次って?』
「次の森のことだよ。この国には、結構森が多いんだ。できるだけ回りたい」
『うん、そうだよね』
サーチートには、商都ビジードの冒険者ギルドの手伝いで、ネーデの森以外の森にゴブリンが居るかどうかの確認に行くと説明してある。
サーチートは人助けだから手伝うって言ってくれてたんだけど、さっきゴブリンに襲われて怖くなっちゃったのかもしれない。
「森に入ったら、サーチートのことを狙ってゴブリンが襲いかかってくることもあると思うけど、俺が必ずサーチートを守るから、サーチートにも協力して欲しいんだけどな」
抱き上げたサーチートの体を優しく撫でながら、ユリウスが言った。
サーチートはユリウスの言葉に感動したみたいで、健気に頷いたんだけど、実は思いっきり利用しちゃっているんだけどね。
そのことについては、ユリウスも私も、ちょっぴり罪悪感がある。
「ねぇ、サーチート、倒したゴブリンの魔石は、全部サーチートにあげるよ。君のお小遣いにしていいから」
『え? 本当に? ユリウスくん、ありがとう! でも、絶対に守ってよね! ぼく、怖いの、嫌なんだ!』
「もちろん守るさ。安心してくれていいよ!」
『うん! よろしくね! ユリウスくん!』
それから私たちは、ユリウスのテレポートの呪文で、オブルリヒト王国にある別の森へと瞬間移動してーーその森でゴブリンたちに襲われたのだった。
だって、サーチートの蝶ネクタイの魔道具のスイッチは、入れっぱなしだったからね!
行く先々の森の中で、サーチートの声が響き渡ったのだ。
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