第13話・サーチートの勉強の成果
その日の夜ご飯は、まだパンが残っていたので、オニオングラタンスープと、サラダにした。
パンはかなり固くなっていたけれど、これだと食べやすいだろう。
夕食の間、ユーリとアルバトスさんの様子を見ていたけれど、二人とも残さずに食べてくれていた。
明日はどうしようかな。
今までこんなふうに、誰かにごはんを食べてもらう機会なんてなかったから、ちょっと楽しいし、嬉しいんだよね。
「さて、サーチート。今日、あなたが何をしていたのか、私に教えて」
夕食の片付けが終わった後、部屋に戻った私は、今日一日別行動をしていたサーチートに尋ねた。
サーチートはキリっとした表情で私を見た後、
「オリエちゃん、ぼくは今日、アルバトス先生からいろんな呪文を教えてもらったよ! その中には、こんな事ができたらいいなぁっていう、素敵な呪文もあんたんだよ!」
と言った。
「オリエちゃん、まずはこの世界で良く使いそうな呪文から説明するね! 戦う時の攻撃呪文だよ! 炎の呪文はファイア、水はウォーター、風邪の呪文はウィンド、氷の呪文はアイスだよ!」
「へぇ、そうなんだー」
予想していた通りの呪文に、ちょっとびっくりした。覚えやすくていいけど。
「それでね、回復系の呪文は、怪我の治療や体力の回復はヒールで、毒や呪いなんかの異常回復の呪文は、リカバーっていうんだって。だから、ユリアナちゃんやアルバトス先生を、あの呪いの毒から助けるために使う呪文は、リカバーだね」
「リカバー……」
ユーリやアルバトスさんは、もちろんこの呪文は試しているだろう。
だけど、呪いの毒を消す事ができなくて、オブルリヒト王国が召喚した聖女に頼ろうとした。
どうしてリカバーは効かなかったのだろう。
何か理由があるのかな?
「サーチート、いろいろと調べてくれてありがとう。まずは、私が魔法を使えるかどうかだよね」
「うん、そうだね。オリエちゃんは大聖女だから使えるはずだけれど、練習する事は大切だと思うよ」
「練習か……」
よし、練習をするか、と思ったが、私もサーチートも、どこも怪我をしておらず、健康そのものだった。
攻撃魔法の練習は、成功したとしても部屋が大惨事になりかねないのでできないし、何よりも今は夜だった。
というわけで、魔法の練習は私の明日の課題になった。
「オリエちゃん、あとね、薬草の事も教えてもらったんだ! これを見て!」
サーチートはそう言うと、コロンと転がった。
白いお腹にスマホが現れ、植物が映し出される。
「これが薬草で、こっちが毒消し草だって! どちらも近くの森に生えているらしいよ!」
「そうかぁ~」
薬草は明るい緑色で、毒消し草の方は黄緑っぽい。
「ぼくね、思ったんだよ。オリエちゃんがポーションや毒消しポーションを作ったら、大聖女パワーで、ものすごいのができちゃうんじゃないかって!」
「なんなの、その大聖女パワーって……」
「オリエちゃんが、実はすごいって事だよ!」
「すごい、ねぇ……」
大聖女だ、すごいって言われても、私にそんな力があるのか、本当に謎である。
でも、明日はポーション作りを試してみようかな。
いや、呪文の特訓の方が先かな。
ポーション作りは、薬草が必要だろうから、まずは森に薬草を採りに行かなくちゃいけないよね。
その時に魔法の練習をすれば、一石二鳥かな。
「ねぇ、サーチートは、明日どうするの? 私と一緒に居る?」
一緒に森に行って、魔法の練習と薬草探しをしようと思っていたんだけど、サーチートは首を横に振った。
「んーん、ぼくは、明日もアルバトス先生と勉強をするよ」
「そう?」
「うん。あのね、オリエちゃん。アルバトス先生はね、本当にいろいろな事を知っているんだよ。ぼくは、もっともっと、いろんな事を教わりたいんだ。そして、オリエちゃんの役に立ちたいんだよ」
「そっかぁ……。じゃあ、サーチートは、もっともっとアルバトスさんの所で勉強をしてね」
サーチートがこれだけのやる気を見せているのだから、好きにさせてやろう。
頑張ってね、と言うと、サーチートは胸を叩き、笑顔で頷いた。
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