第84話 合流

「コンコン」

「失礼します。ジン様、朝食の時間です。」

「……………」

「はぁ、仕方ありませんね。」

「バサッ」

「う~ん、寒い。やめてくれ、ミリア。」

「屋敷ならもう少し寝かせてあげれたんですけどね。今日は皆さんと帝都を見て回るんですよね。」

ああ~、そうだった。意識しないようにしてたな。

「わかったよ。」

諸々の準備を終わらせて朝食を食べに行く。

「おはよう、ジン。」

「おはようございます。」

「今日はいい天気だからね。存分に遊んでくるといいよ。」

そうか、雨が降ってたら中止だったのか。

それなら水魔法で朝だけ雨を降らせばよかったかな?

いや、雲がなかったらおかしいか。

はぁ~、どちらにせよ、行くしかないんだけどな。

「今日は父と母にも会いに行く予定なのよ。」

「そうなんですね。」

それなら、まだ皆と帝都を回る方がいいかな。

朝食を食べ終わり、出発の時間まで日記のような本を読んで時間を潰す。

帰りの馬車で読み終わるかな。

結構長いし、面白くないけど、重要な情報が載っているかもしれないからな。

それにしても嫌な話だな。

創造物だったらいいんだけど。

「コンコン」

「ジン様、そろそろ待ち合わせ場所に向かいましょう。」

「分かった。」

目的地までは歩いて向かう。

「ミリアは貴族なのか?」

「いいえ、平民ですね。実家がトランテ王国で宿をやってますね。」

「へ~、じゃあなんでギラニア帝国で近衛騎士になったんだ?」

「ギラニア帝国の近衛騎士は強いことで有名でしたからね。自分がどこまで通じるのか試してみたかったのです。トランテ王国出身ということでいろいろ調査されたんですけどね。問題はないとされて近衛騎士になれたのです。」

「へ~、里帰りとかしなくていいのか?」

「手紙は出してますし、弟夫婦が手伝っているので大丈夫です。」

「そうなんだ。」

「はい、でもジン様が学園へ行かれたら少し実家に戻ろうかなぁと思っています。」

「そっか、たぶん両親も喜ぶだろうな。」

「そうだといいんですけどね。」

ミリアと会話していると待ち合わせ場所に俺以外が集まっていた。

おいおい、まだ集合時間じゃないよな。

あと10分はあるぞ。

(やらかしたかな。)

(かもしれませんね。一番階級下ですし。)

どんだけ楽しみにしてんだよ。護衛も少ないし。

「おせーよ、ジン。」

「そうね、遅すぎるわ。」

ほんとサラにそっくりだな

「いや、まだ集合時間に余裕はあるだろ。」

「そういう問題じゃないんだよ、こういうときは早く来るもんなの。」

「そうよ。ほら早く行きましょ。あと、私の事はミラでいいわよ。」

乗り気すぎだろ、お姫様。

「いいんですか。」

「ええ、公の場じゃなかったらね。敬語もいいわ。」

「わかった。じゃあ行こう。」

もうどうにでもなれ。いざとなればとんずらしてやる。

「まずは、どこから向かおうか?」

「ていうか、そもそもお店やってるのか?」

「大丈夫。ちゃんとマリーが調べてきたから。9時15分に劇場で傭兵アルフォンスの劇があるから、行こう。」

「劇か、すごく楽しみだわ。観たことがないから。あんたは観たことあんの?」

口悪すぎだろ赤毛。

「ああ、あるぞ。勇者の劇を一回だけ観たことがある。」

「私も劇を観るのは初めてだわ。全然観る機会とかなかったから。お城ではずっと稽古ばかりだし。」

「大変だな。ケルンは剣が得意なのか?」

「ああ、よくわかったな。」

「だれでもそうおもうよ。」

ロハドが苦笑している。

「それにしても人少ないね~。」

そらまだお店もやってないからな。俺らがおかしいんだ。

「ジンはあんまりパーティとか出てなかったけど、領地では何をしているの?」

「そうだな、教養の稽古とか、領地とかで遊んでるな。あとは、セラからの手紙の返事を返したりとかかな。」

「それなのに、帝都を回るのは断ったもんね。」

そこはもうスルーしてほしい。アレナに似て粘着タイプなのか?

「悪かった、時間がないと思ってたんだ。」

「そう、なら今日は楽しませてね。」

「わーったよ。」

しばらく談笑していると、劇場に着いた。

それぞれチケットを買い、中へ入っていく。

「暗いね~」

「暗いわね。」

「そうね。」

自分たちの席へ座って上映が始まるのを待つ。

俺の隣にはミラとロハドが座る。

「ジンって、婚約者とかいるのか?」

「いないな。ロハドはどうなんだ。」

「僕もいないよ。でも学園の卒業までにはできるかな。」

「へ~。ミラはどう?」

俺がそう聞いた瞬間、少し空気が凍った気がした。

やっべ、踏み込みすぎたか?

「私もいないわ。なに、私を狙ってるの。」

「いや、単なる興味だ。」

絶対お前だけはねぇよ。容姿は確かにずば抜けているが時の流れには勝てないからな。

結局、ヨボヨボになったらそこら辺の奴と変わりなくなる。

「そう、残念ね。」

「そう思ってる口調じゃねぇな。」

「…そんなことないけど。」

なにかボソリ呟いていたが、なんて言ってるかは聞こえなかった。

「なんかいったか?」

「学園が楽しみっていったのよ。」

変わってんな。俺は憂鬱だよ。

すると、

「ブー----」

という音がなり、上演が始まった。




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