第17話 冒険者登録
おっ、着いたか。さてどうやって侵入するか。
「なぁ、どうやって入ればいいと思う?」
「…何も考えてなかったんですか?」
「いやぁ、ほらちょっと忘れてて。闇魔法の幻術を使うのは無しだよな。バレたら捕まるだろうし。転移魔法で、路地裏に跳ぶか」
「ヒュン」
うわー、きったね。現代っ子にはきついな。お、誰か来る。
「ん、何だ。ガキか、いい服着てるじゃないか。金目のものは置いていけ。」
おお、やっぱりこういうのあるんだな。
どうしようか。泣き叫ぶのが最善だ、ここの住民ならば。
しかし、今は憲兵にも見つかるわけには行かないからな。
「幻術」、そう呟いて俺は男の横を通り過ぎていく。ちなみに、声を出して言うのはそのほうが、早く展開できるからだ。
「おい、どうしたガキ。さっさとしろ、痛い目にあいたいのか。」
「なぁ、パール、あの男の様子を記録する機能はないのか?」
「ありますよ。これです、ジャジャーン、携帯型万能機、通称、スクエア」
これ、板チョコくらいの大きさの板か。
にしてもジャジャーンとかどこで学んだんだ?
「どうして、あのとき渡さなかったんだ。」
「だって、これは私の持ち物ですから。」
少しは悪びれろ。
「これは何ができるんだ?」
「風景を記憶したり、音を録音したり、スクエアに収まるくらいの大きさのものを収納できます。あと10個の極小型探査機を出せばその景色も写ります。ちゃんと分けられているはずですよ。」
本当だ。アプリかよ。いやー、これはいいわ。
「もういい、ラァっ、何、通り抜けただと。」
あ、存在忘れてたわ。こいつの様子を撮影しようと思ってたが、こんなのが初めてなのは嫌だな。やっぱ、やめよ。
「こんなのはほっといて、いくか。」
さてと、子供の姿じゃ、いつか足がつくかもしれないからな。
大人の黒いコートを着ているように幻術を使い、銀の仮面を無属性で浮かす。
ふふ、今や2属性の魔法の同時行使は完璧なのだよ。そして、3属性も可能だ。
精度はかなり落ちるが。
そして、大通りへ出ると周りの人にジロジロと見られた。
「凄く、注目されていますね」
恥っず。そうだ、確かにこれじゃあ、不審者だ。
憲兵に見つかる前に、冒険者ギルドに行かねえと、くそっ。
そしてそうやって探していると
「おっ、見つけた」
中に入っていくと、冒険者がちらほら居たくらいだった。
なんか、少なくないか?
まぁ、どうでもいいが。
受付へ行くと、
「初めての方ですか」
と完璧なスマイルで聞かれた。
この不審者スタイルによく、営業ができるなと思ったが、ここで声を出すと子供だとバレることに気づき、冷や汗が流れた。
変声魔法なんて知らないぞ。有るのかも知らないが。
そこで、俺は賭けに出た。
空間魔法で重力を操り、仮面に顔を合わせに行った。そして――
「ああ、そうだ」
賭けに俺は勝った。やはりな、完璧に隠蔽ということは声は変わって当たり前だよな。
「分かりました。では冒険者登録を行います。金貨3枚お持ちですか。」
俺だって貴族の子供だからな。お小遣いくらいもらってる。
「ああ、これでいいか」
「はい、大丈夫です。では、このカードに魔力を流してください。」
「了解した。」
「はい、これで仮登録完了です。なくすとまた発行料がかかりますのでご注意下さい。」
仮だと、変なとこで前世と似てるよな。
「では、この紙に記入をお願いします。ギルドランクのところは書かないで下さい。書けないのであれば代筆いたしますが?」
「いや、大丈夫だ。」
そう言って、出身地:モンスターに滅ぼされて存在しない、年齢:20、名前:ゼロ、と記入していった。
「嘘偽りだらけですね」とヤツがぼそっと言うのが聞こえてきたが無視だ。
ちなみにゼロという名前にしたのは前世が零だったからだ。
というか、そろそろ魔法の維持がきつい。
早く終われ、まじで。
俺はそう願うのだった。
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