第16話 過去の話

「よし、隣の領地にある冒険者ギルドに行くか」

「どうして、隣の領地なんですか?」

「チッチッチ、いいかい、ワトソンくん。なんとなくいやだろ。」

「理由が雑すぎて、私でも笑います。あとワトソンって誰ですか?」

「細かいことは気にすんな。さあ行くぞ。お金も持ったしな。仮面と笏を貸してくれ」

「了解です」

「そういや、お前って千五百年起動してたんだよな。燃料とかってどうなってんだ?」

「思考が7歳児ではないですが、お答えしましょう。私は魔玉を核として動いています。」

「魔玉って確か、魔力を何度も貯めることができるやつだよな」

「はい、魔物には体内に魔力の結晶を持つ個体がいますよね。その結晶が魔石と言われるものですが、高純度の魔石に魔力を補充出来るようにする術式を書き込むと魔玉になるのです。ちなみに私の魔玉は黒龍のものを使用しています。」

「術式って何だ。初耳なんだが?」

おかしいぞ、書斎の魔法陣関連を読んだときに見た覚えはないぞ。

「あの頃、人類は魔法陣を極め、魔法を文字として表せないかと奮闘していたんです。いわば、魔法陣の発展系ですね。基本属性のうち火、風、水は言語化することに成功したんです。ほら魔剣とかあるでしょう。あれが成功例です。さらに、博士は私を作るためにあの伸び縮み可能な剣を試作品として作ったんです。外側から、魔力を流し込んでも外に漏れないように。まあ、規格外な規模で魔力を流し込めば、壊れますが…。そして結果的に、私が生まれました。」

やばいな。前世の記憶のせいでよくわからないな。そもそも、風、水、火を言語化するとか意味わからない。

「じゃあ、冒険者登録するときに使うカードはどうなんだ?あれって確か本人以外の魔力が流れると赤色になるんだろ?」

「あれは魔力を通すミスリルなどの金属で平面の魔法陣を描いて内部にしこみ、外側を安い金属で覆っているだけです。魔法陣の意味がわからなくてもとりあえず、書いて魔力を流せば効果はありますから。おそらく、一度流された魔力を記憶し、異なる魔力が流れ込むと色が変わるように仕組まれているのでしょう。ですから魔法陣もある意味、魔法の文字の一種と言えるでしょう。」

「へー」

しかしおかしくないか、魔法陣の資料が一つも残ってないっていうのは。人為的な何かを感じるな。

「軽いですね」

「まあ、特に他に感想ないし。」

そんな会話を交わしながら、俺たちは隣の都市へと向かっていった。




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