第108話 クラス分け
Fクラスに入るとそこそこの人数がいた。
「どこらへんに座ろうか?」
「後ろにしよう。一番前はきつい。」
できれば一番後ろの角の席がいい。
「それはそうだね。」
一番左後ろの席に座り、マリーは俺の前に座る。
「うーん、他にミラたちは来ないかなぁ?」
「さぁ、どうだろうな。6クラスもあるからな。分散するのも不思議じゃない。」
しばらく待っていたが、やってくることはなかった。
そのかわり、俺の隣に目つきが鋭く、長い銀髪の美少女が足を組んで座ってきた。
こっわーなんでこんな年でおっかない雰囲気出せるの?、これがうわさに聞くスケ番ってやつか。関わるのはやめとこ。
クラスの席が全部終わったところで担任と思しき男性がやってきた。
(マスター、友達はマリーだけですね。)
(そうだな。ローナよりは断然ましだな。あれは歩く災害だからな。)
(そこまで言いますか。)
(ああ。俺が秘密裏にする行動を視られたら面倒なことになるだろ?)
(それはそうですね。騒ぎ立てそうなタイプですし。)
(絶対そうだろ。)
パールと会話していると、担任が話し出した。
「俺はこのクラスを担当するバン・フォン・シュバイクだ、よろしくな。そうだな、パーティで顔を合わせたこともあると思うが、隣の人と自己紹介をしよう。その後は皆の前で発表してもらう。」
なー--にー--、俺の一番嫌いなやつじゃないか。ざっけんなよ、まじで。
しかも隣のやつと話すの?、思いっきり不機嫌なんですけど。
(マスター、本当にご愁傷さまです。)
(やっぱり家の方がましだったな。たぶんこれはまだ序の口だろ。)
(得意の話術で乗り切ってください。)
(とりあえず、この隣の女とどう話すかだな。)
(さらっと話しかけるしかないですよ。)
はぁ~、簡単に言ってくれる。
「よう、俺の名前はジン・フォン・エルバドス。君の名前はなんて言うんだ?」
「……………」
お高く留まってんじゃねぇよ、くそ女。意思疎通する気なしかよ。落ち着け俺、所詮相手は今年12になるガキだ。さすがに負けるわけにはいかない。
「綺麗な銀髪だな。丁寧に伸ばしているのか?」
どうだ、とりあえず褒めてみよう作戦。
「……………」
表情にも変化なしと。これは手ごわい。
「俺の好きな食べ物は牛鍋。君はどう?」
「…うるさいな。その口を閉じてくれ。」
心にダメージが入るが、なんとか攻勢に出る。
「ようやく話してくれたな。それで君の名前はなんだ?、言っとくけど答えが聞けるまで質問を辞めるつもりはないぞ。」
「ちっ、ラギーナ・フォン・ロザリアだ。もう話しかけてくるな。」
(パール、ロザリア家の階級はなんだ?)
(伯爵家です。現当主が野心家と評判で第一皇子の後ろ盾に加わっているようです。)
(へー、どうしてこいつは人を寄せ付けようとしないんだろうな。)
(マスターと同じで人間関係が煩わしいんじゃないですか?)
(…聞いてみるか。)
(えっ?)
「ラギーナはどうしてそんな斜に構えてるんだ?、かっこいいと思ってるのか?」
さすがにこれは冗談だけど。
「…はぁ?、お前私を馬鹿にしているのか?」
なんて低い声なんだ。思わず謝罪しそうになっちまった。
「いいや?、単に理由がほかに思いつかなかっただけだ。それで違うのか?」
「…お前は馬鹿か?、どうして私に話しかける?」
ガキに対して引き下がりたくなかったとは言えないしな、どうしよう。
「いや、可愛いからさ。ちょっと気になっただけ。」
嘘には真実を混ぜるに限る。実際、目つきさえどうにかしたらこの上なく綺麗だしな。
「!?、私をからかうな。」
「いや、これはまじだぞ。そういうのに俺は嘘をつけないからな。」
「ほーう、つまり私を口説いているということでいいんだな?」
「いや、それは違うけど。」
「違うのか。誰が聞いても口説いてると感じると思うが?」
「いわゆる個人差がありますってやつだな。」
「はぁ~、お前は変人だな。」
「初めて言われたよ。それでどうして…」
(マスターは変人ですよ。)
(お前は黙ってろ。しかしさすがに11歳の子供。話し出したら止まらないな。)
(よかったですね。でもマスターが話しかけるって珍しいですね。放置すると思ってました。)
(なんか負けた感じがして嫌だから。しかもわざわざこの俺が話しかけたんだぞ、袖にされたら意地でも反応させたいだろ。)
(…ブレませんね。)
ラギーナと話している途中で終わってしまった。
「よし、それじゃあ、一人ずつ自己紹介をしてもらうぞ。じゃあ、この列からだな。」
ゲェー、俺の列じゃん。最悪だな。
順調に進み、俺に回ってくる。
「俺の名前はジン・フォン・エルバドス。趣味は(闇)オークション。好きな食べ物は牛鍋。長所は周りに流されないところ、短所はマイペースなところ、好きな言葉は一攫千金。どうか、よろしく。」
「おお、よろしくな、ジン。なかなか斬新な自己紹介だったな、いいと思うぞ。」
そのまま進み、ラギーナは名前だけ言って座り、空気が少し悪くなった。
負けたな、さすがに名前だけしか言わない勇気はなかった。ラギーナ、お前はすごい、素晴らしい胆力だ。
その後、全員の自己紹介が終わる。
見た感じ、やばそうなやつは一人。ガキのくせに柄が悪い。
「席は自由だからな。黒板が見える所に座ってくれたらいい。それじゃあ、次は寮の部屋の確認に行くからな。ちゃんと荷物を置くように。それでは向かうぞ。」
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