第109話 新たな友
寮へと向かってる途中でラギーナに話しかける。
「ラギーナ、お前はすごいな。自己紹介で名前しか言わないなんて。」
「うるさい。」
「まあまあ、諦めて会話しよう。どうせなら人生楽しく生きようぜ。」
「お前はお気楽すぎるな。もう少し緊張感を持ったらどうだ。」
「緊張感?、なんで?」
「はぁ~、お前はそういうやつだったな。いいか、リュウのせいで大陸の情勢は不安定だ。なら私たちはそれに備えるべきだ。」
「それは分かる。けど、その上で楽しもうぜ。」
「はぁー--、もういい。」
そういうとラギーナはさっさと行ってしまう。
(マスターの能天気さに呆れたんでしょうね。)
(失礼な。こう見えていろいろやってるんだぞ。)
(違法行為ですね。ところで報告があります。帝国がクレセリア皇国によるマーテル公国への侵攻を察知しました。)
(それで帝国は?)
(現在、緊急会議が開かれています。)
(そうか、また結果が分かったら教えてくれ。)
(了解です。)
「ねえねえ、ジン、あの子と何を話してたの?」
「ああ、自己紹介で名前しか言わなかったことに凄いなって言ったんだ。」
「…煽ったの?」
「なんでそうなる。俺は褒めただけだぞ。」
「いや、そうはならないでしょ~。絶対煽られたって感じたはずだよ。」
「そうか?」
(マスターは人と感覚が違うことが露呈し始めましたね。)
(そんなことない。まだ一人だけだからな。)
(そうですか、でもこれからはそういう機会も増えそうで楽しみです。)
(せいぜい楽しんでろ。)
しばらくすると寮に着いた。
「それじゃあ、部屋の番号を確認しろよ。」
バンがそう言うのでまた例の機械に並ぶ。
(これって相部屋かな。)
(それはそうでしょうね。)
(嫌だな。夜中に抜け出せないじゃないか。)
(魔法の腕を上げてバレるようにするしかないですね。)
(もう伸びしろはないと思うんだが。)
(そう思ってるうちは無理でしょうね。)
むぅ、言ってくれる。なら、影分身をさらに極めてやる。
自分の部屋を確認すると、441号室だったので向かう。学生証で鍵の施錠を外し、部屋の中に入る。すると、そこにはすでに2人の生徒がいた。
おっ、あの勤勉眼鏡君、一緒の部屋だったのか。
するともう一人の茶髪のイケメンが話しかけてくる。
「お、君もこの部屋なのか。よろしく、俺の名前はフレイ・フォン・シュバルツだ。」
「ああよろしく、俺はジン・フォン・エルバドス。」
「ぼ、僕の、名前はエッグ・フォン・スタウダット。よ、よろしくね。」
「ああ、よろしく。」
(パール情報をくれ。)
(シュバルツ家は高い方の公爵家。帝位争いには関与していません。同じくスタウダット家も関与してません。そして階級は男爵家。)
(だからおどおどしてんのかな?)
(性格では?)
まぁ、どうでもいいけどな。
「まぁ、4年間は同じ部屋だからな。仲よくしよう。」
ん!?、4年間だと、聞いてないぞ。
「えっ。4年間も同じなのか?」
「知らなかったのかクラスも4年間同じだぞ。」
「…そうだったのか、衝撃的な事実だな。」
すると
「ガチャ」
扉が開いて最後の一人である金髪君が入ってきた。
うわー--、あのヤンキー予備軍じゃん。関わりたくない系の。
それぞれ名前を名乗るがヤンキーはいかれていた。
「てめぇら凡人と仲良くするつもりはねぇよ。」
そういうと荷物を二段ベッドの下に置き、俺は必然的に上の段となった。
(パール、あいつの名前はなんだ?)
(バルア・フォン・ザルツ。家の階級は侯爵家、低い方です。)
(なるほどな、いきがってがるガキか。)
(マスターと同じですね。)
(うるせぇ。)
空気が静まり、それぞれ教室に戻っていく。
「ジン、近くの席に座らないか?」
「いいぞ。だが話したいやつがいるからな。そいつの近くでもいいか?」
「ああ、構わない。」
フレイと話しながら教室へと戻る。
おっ、いたいた。
「ようラギーナ、部屋割りはどうだった。」
「はぁ~、なんでわざわざ隣に座るんだ?」
「そりゃ、話したかったからじゃないか。それに俺は知らなかったけど4年間もこのクラスなんだろ、なら仲良くしたいじゃないか。」
「もうわかった。」
「それじゃあ、友達ということでいいな?」
「…友達?」
すげぇ顔歪んでるな。そんなに嫌なのか。少し前の自分を見ているみたいだ。
「ああ、いいだろ。わかったって言ってたし。」
「…わかった。もうそれでいい。」
「ジン、凄いな。氷姫と仲良くなるなんて。」
「氷姫?、はははは、大層なあだ名だな。氷姫か、そう呼んでいいか?」
「調子に乗るな。」
この調子じゃ、将来は女傑だな。
「悪い悪い、じゃあ、まぁ改めてよろしくってことで。」
「ふん。」
3人で話しているとマリーがやってきた。
「ジン~、ラギーナちゃんと喋ってるの。」
「ああ。もう友達になったからな。」
「すごいね。私はまだそこまでいけてないから。私も友達になりたいな、駄目かな?」
「もう好きにしろ。」
「なら好きにするね~。」
しばらく談笑していると担任のバンが戻ってきた。
「よ~し、全員いるな。明日から能力測定があるからな。体調を整えるように。とりあえず今日はもう解散だ。また明日9時までに集まるように。」
そう言われてみんなが散らばっていく。
みじけぇな、おい。そんなんのためにわざわざ集合させるなよ。
「じゃあ、ジン、昼ごはんに向かおうぜ。」
「ああ。マリーとラギーナも行こう。」
視界にエッグが一人で孤立しているのが見えるが放置する。
(マスター、エッグは誘わないんですか?)
(ああ、気が合いそうにないからな。だからフレイも誘わないんだろ。フレイは結構気がききそうなやつだからな。)
(もしそうなら最低ですね。)
(お前は馬鹿か。自分を犠牲にしてまで他人を助けてたら行きつく先は破滅だぞ。)
(でもエッグが可哀相じゃないですか。)
(それはあいつが解決すべき問題だ。それに人工知能が可哀相とか思うんだな。)
(学習型人工知能ですから。)
(そうかよ。とりあえずエッグは放置だ。)
(そうですか。)
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