第122話 対戦バトオォ

朝食を食べ終えた後、いつも通りの授業を受ける。

(マスター、報告です。トランテ王国軍が首都に向けて進軍中です。帝国軍も侵攻を開始したという情報を得たようで侵攻速度が速まっていますね。)

(そうか。フォーミリアは完全に終わったな。王族は亡命の準備とかしてないのか?)

(始めていますが、どこの国も受け入れに難色を示していますね。)

(まぁ、仕方がないな。爆弾を引き取るようなものだし。)

(マスターがただ金庫を盗んだだけでこうなるんですね。)

(そうだな。やっぱり市場を独占するってのは良くないな。せめて寡占ぐらいじゃないと。)

(采配を間違えたということですね。)

(ああ。)

どうしてもライバルが存在しないと油断してしまうからな。国にとって一つしか有力な商会がないというのは管理がしやすいんだろうけど。

(それともう一つ報告があります。聖女が帝国に来た理由が判明しました。どうやらフォーミリア王国とエナメル王国・トランテ王国に停戦を働きかけるようにお願いしに来たみたいですね。)

(危なかったな。オペレーションZをして本当に良かった。聖女が公式に頼めば帝国としても無下にはしにくいからな。)

(そうですね。セントクレア教の信徒は帝国にも存在しますから。)

(厄介なこったで。それで、報告はそれだけか?)

(今のところはそうですね。それより、今日はラギーナ、フレイ、バルアと戦うんですよね?、絆を深めるチャンスです、頑張ってください。)

(俺的にはぶつかり合うとかあんまり好きじゃないんだよなぁ。ほら俺って平和主義者だし。)

(まさにどの口が言うんだっていう話ですよね。)

パールと会話を授業中にしているとあっという間に夜となった。

カフェテリアで晩飯を済ませ、少し時間をおいてから訓練室へ集まる。

「おい、行くぞ。今日こそは俺が勝つ。」

「へいへい。」

「楽しみだな。強いジンと戦えるなんて。」

「おい、今日だけだからな。分かってるよな?、フレイ。」

「まぁまぁ、俺もなにか奢ってやるからさ、俺とも毎日戦ってくれよ。」

(モテモテですね、マスター。)

(男にモテても何にも嬉しくねぇよ。)

「お断りだ。」

「そこを何とか。何でもいいぞ。魔道具とかでも。」

しつこい奴は嫌われるぞと言いたいところだが、フレイはイケメンで金と権力を持っているため、しつこくても問題ない気がする。

それに立場としては俺の方が圧倒的に弱いからな、機嫌を損なうわけにはいかない。

「ああ~、なら毎週一冊本を買ってくれ。」

こっちの小説とか読んでみたいしな。漫画もあればいいんだけどなぁ。

「それぐらいお安い御用だ。さぁ、いこう。」

っち、5冊ぐらいにしときゃよかった。つい小市民の感覚が出てきてしまった。

訓練室に到着すると、すでにラギーナとマリーが到着していた。

「やっと来たか。待ちくたびれたぞ。ほらさっさと準備運動して私と戦え。」

うーん、最初に比べたらだいぶ丸くなったような気がするんだけどなぁ。

「分かってますよー。」

準備運動を終え、それぞれ木剣を持つ。

「それでまずは誰から戦うんだ。」

「私だ。ルールは魔法の使用はなし。だが身体強化はありでどうだ?、あとは急所はなしで。」

「ああ、いいぞ。氷姫?」

良い感じに煽っていく。いいよな、これぐらい言っても。わざわざ戦ってあげるんだし。

「!!、絶対許さん、覚悟しろ。」

互いに身体強化を施し、木剣で斬りあう。

「カン、カカカカカカ・・・・」

強い強い、バルアよりは劣るけど魔法が加わったら勝つ可能性は十分にあるな。

「ギャン」

一度互いに距離を取る。

「まさかここまでとはな。どうして手を抜いていたんだ?」

「目立ちたくないってのと疲れたくないっていうのが理由だな。」

「理解できんな。どうしてお前は自らを磨き上げようとしない?、宝の持ち腐れだぞ。」

「だから何?」

こういう熱血系は無理っす、自分。

「はぁーー-。私はお前みたいなやつが嫌いだ。せっかくいい物を持ってるのに有効に活用しようとしない、そのくせ人よりは優れている。」

ほうほう、言ってくれるじゃないか、ガキが。んなことは前世から理解してんだよ。

「結局何が言いたいんだ?、要は大して努力してない奴に勝てなくて悔しいってことか?」

「っつ!!、そうではない。お前は・・・」

「御託はいいよ。とりあえず俺に勝ってから言ってくんない?、負け犬の言葉に価値はないからさ。」

「いいだろう。すぐに分からせてやる。」

「カカカカカカカ・・・・」

〈くっ、なんて速くて重い攻撃だ。手が痺れてきた。…才能に胡坐をかいててこの強さ、やっぱり気に入らん。〉

「終わりだ。」

相手の木剣をいなし、鳩尾へ鋭い突きを食らわせる。

「ドゴっ」

「ぐ、くうぅー--」

ラギーナはお腹を押さえてうずくまっている。

やっべぇ、ちょっとやりすぎちゃったかな。さすがに木剣はやめといたほうがよかったな。

「大丈夫!?、ラギーナ。もう~、やりすぎだよジン。」

そう言ってマリーがラギーナの様子を確認する。

「わ、悪い。ちょっと力が入っちまった。大丈夫か?、ラギーナ。」

「あ、ああ大丈夫だ。…強いなジンは。でも次は絶対に私が勝つ。」

「ああ。」

ん?、次?、えっ、もしかしてまた戦うの?、約束は?

約束を聞ける雰囲気でもないので咎めるチャンスを失った。

「よし、じゃあ次は俺だな。」

「はぁ?、待て。俺からだ。」

「昨日、戦ってただろ。だから俺が先だ。」

「はぁ?、俺が・・・」

「もうじゃんけんで決めろ。その言い合っている時間がもったいない。」

公正なじゃんけんの結果、フレイが先に決まった。

「よし、じゃあさっさとやろうぜ。」

「お手柔らかに頼む。」

そう言ってフレイは青白い電気を身に纏った。





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