第123話 対戦バトオォ2

「バチバチッ」

おお、電気を体に纏っている。俺もやってみたい。

「それは雷魔法か?」

「ああ。」

やっぱり雷魔法はかっこいいな。俺にも適性が欲しかった。普通、転生者は全属性持ちだと思うんだよなぁ。まぁ、雷魔法よりは空間魔法の方がいいんだけど。

「それは反則じゃないのか?」

「身体強化だからな。セーフだろ。」

皆の顔を見ていくが、皆頷くだけで誰一人として抗議しない。

(まあまあ、別にいいじゃないですか。ラウドの時も雷魔法だったじゃないですか。)

(それはそうだけどさ、あの時は銀の魔力を使ってたわけじゃん?。やっぱり雷魔法に身体強化で挑むのは少々無謀かなぁと思うわけですよ。)

(いや、さすがにS級冒険者よりは遥かに劣りますよ。それにいざとなれば超集中状態に入ればいいじゃないですか?)

(それはそうなんだけどさ、あれってすげえ疲れるんだよ。主に精神的に。)

(大変ですね。まぁ、私には精神というものがないので分からないんですけどね。)

いちいちムカつく野郎だ。スクラップにしてやんぞ。

「さぁ、いいか。ジン?」

「ああ、構わないぞ。」

身体強化の倍率をかなり高めておく。

やっぱり、初見の相手ってやりにくいよな。どのくらいの強さか分からないからな。

フレイの姿が掻き消える。

「カ、カカカカカカカカカ・・」

速い速い。でもちゃんと目で追えてるから問題なし。

「ガン」

一度大きく距離ができる。

「強いな、ジン。勝てないと思ってたけど、ここまで手も足も出ないとはな。」

「いやー、フレイも速いな。驚いたよ。」

「嘘~。ジン、全然そう思ってる口調じゃないよ。」

うるせーな、外野は黙ってろよ。

「よし、ならもっと上げていっても大丈夫そうだな。」

「バチバチッバチバチ」

さきほどよりも身に纏う雷が激しくなった気がする。

おいおいフレイ、まだ上があんのか。俺は戦闘狂じゃないからさ、正直ワクワクしたりとかしないんだよな。

「いくぞ。」

「ああ。」

「カカカッカカカ・・・」

なんていうかフレイもバルアもラギーナもきれいな剣術なんだよな。なんというかトリッキーさがない。

「ハッ」

木剣を投げる。

「!?」

咄嗟にフレイは木剣を叩き落すが、その隙を見逃すほど俺は甘くない。

「ドゴッ」

「クッ…」

〈これはもう一発食らったら不味いな。すぐに距離を…!?〉

一発パンチを腹に入れたところで、フレイが後ろに跳んで逃げようとするので髪を手で掴み、腹に膝蹴りを数発浴びせる。

「ドゴッ、ドゴッ、ドゴッ」

「グゥゥー---」

フレイはお腹を押さえ、蹲ってしまった。

「えっぐいねー、ジン。髪の毛掴む?、普通。」

「掴む掴む、常識だろ。戦場だったら当たり前だ。」

「確かにその通りだな。ジン、お前はどこでそんな実戦用の戦い方を学んだんだ?」

冒険者活動とは言えないしな。よし、ここは遠い目作戦だ。

「いろいろあったんだ。」

なるべく遠くを見つめながら神妙に呟く。

「そ、そうか。すまない、余計なことを聞いてしまった。」

ふはははは、所詮クソガキ、騙すのは容易い事よ。

「いや気にするな。ラギーナ。それより俺の勝ちでいいよな?、フレイ?」

「ああ。参った、完敗だ。」

(雷魔法の弱点を見つけたぞ。どうやらあれは速度に特化しているようだ。防御はあまり強化されてないな。)

(そうなんですか?)

(ああ。身体強化の方が使い勝手はいいな。)

避ければ問題がないのかもしれないが、今回みたいに格上相手だと大きいのを一発もらっただけでダウンだ。リスキーすぎて使えないな。

そう思うことで雷魔法の適性がない悔しさを紛らわす。

「よし、なら次は俺だな。まだ今の俺じゃ勝てねぇがすぐに抜かしてやるよ。」

根性だけは認めてやろう。俺には真似できない。

「そいつは楽しみだ。」


結果、俺の勝ちだった。

まぁ、一日で差が埋まったら驚きだ。それこそ化け物と呼ばれるにふさわしい。

「くそが。おい、てめぇ、今までどんな鍛え方をしてやがった?」

「たぶん皆とあんまり変わらないかな。どっちかっていうと魔法の練習に力を入れてたし。」

「つまりそれは魔法の方が剣より得意ということか?」

「まぁ、そうなるかな。」

生まれたときから頑張ってたし。まじでハイハイができるまで地獄だった。退屈で死ぬかと思った。

「すごいね~。ねぇ、ジン。マリーには魔法を教えてよ。」

「絶対にお断りだ。俺は忙しいんだ。」

「そいつのいうとおりだ。この俺と戦うんだからなぁ、そんな暇ねぇよ。」

「そうだ。私ともな。」

「いや、おかしいだろ。約束は守れよ、ラギーナ。」

「がたがた言うな、男だろ。ドーンと構えろ。」

男でもめそめそしててもいいだろ。…いや良くないな。それじゃあ、エッグの同類となっちまう。くそったれ。

「そういうことだ、ジン。」

初期対応をミスったからこうなったんだな。後悔先に立たずとはまさにこのことだな。

「…もうそれでいいです。」

(マスター、さらに絆が深まりましたね。)

(もうお前は黙れ。)

こうなったら絶対に今夜、第二オペレーションZを決行してやる。俺の憂さ晴らしに付き合ってもらおう。


その後、各々部屋に戻り、風呂や歯磨きなど寝る準備をしてからベッドに入る。

(パール、今日は第2オペレーションZをしに行くからな。)

(そうですか。お好きなように。)

物わかりが良くていいことだ。

(真夜中にこっそり起こしてくれ。)

(了解です。)


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