第124話 日常
深夜、
(マスター、起きてください。第2オペレーションZをやりに行くんですよね?)
(ああ?、うっせえな。もう休みの日でいいよ。今は寝る。)
〈はぁ~、眠っちゃいましたか。マスターが起こしてくれというから起こしただけなんですけど。それにしてもマスターのそばにいると退屈しませんね。いろいろな出来事に巻き込まれている様はもはや仕込んでいるのではないかと思うぐらいです。それに盗みやオペレーションZとかいったマスターの行為は人の道から外れていますが、気にしている素振りもありません。自分が最優先という姿勢には畏怖すら覚えます。かと思ったらマリアナを助けていましたからね、何がしたいのかよく分かりません。しっかりと分析する必要がありますね。ふふ、まさかこのような生活を送れるとは思ってもいませんでしたからとても楽しいです。それに大陸の情勢もきな臭いですからね、マスターも動かざるを得ないはずです。…そうですね、ついでにマリアナの言ってた組織の情報でも集めますか。いずれ対峙することとなるでしょうし。まずは聖女の線から調べましょうか。〉
このようにしてパールの夜は過ぎていく。
翌朝、
「はぁ~。」
昨日は眠くて第2オペレーションZができなかった、仕方がない。それによくよく考えてみれば帝国軍がエナメル王国かトランテ王国軍の近くにいるか分からないしな。やっぱり情報を得ずに行動するのは危険だな、下手しなくても無駄骨になってた可能性が高い。行かなくて正解だった。
(おはようございます。昨日は眠っちゃいましたね。)
(その話だが、考えてみたら帝国軍とエナメル王国軍・トランテ王国軍が集まってないと無理だよな。)
(そうですね。まさか考えに入ってなかったんですか?)
(ああ。)
(何か考えでもあるのかと思っていましたよ。誘導したりとか。)
(そんなんねぇよ。)
(はぁー、無計画な行動はやめましょう?、私がいるんですから。)
(おっしゃる通りです。なら集まったら教えてくれ。その時にオペレーションZを発動させるから。)
(了解です。)
(そうだ、ついでに鳳凰の羽についても効果を調べておいてくれ。)
(それは構いませんが、時間がかかりますよ。慎重に分析する必要がありますから。)
(ああ、それでいい。時間のある時にでも調べておいてくれ。)
(分かりました。)
その後、いつも通りの授業を受けていく。
「はい、では前回の続きで魔法陣の説明をしていきますね。」
ふーむ、この授業は落ち着いて聞けるんだよな。しかしこの教師、顔面偏差値が低い、この世界でブスは二人目か。なんか感慨深いなぁ、たぶん行き遅れたんだろうな。
「前回は火の魔法陣を学びましたが、今回は水の魔法陣を学んでいきます。」
魔法陣の発動方法は2通りある。魔力を通す金属で魔法陣を描いてそこに魔力を流すことで発動させるもの。もう一つは魔力で魔法陣を作り、そこにさらに魔力を流し込み発動させるもの。正直、後者は役に立たない。発動までに時間がかかるし、魔力消費量が半端ない。
「はい、それでは皆さん配られたミスリルの金属で魔法陣を描いていきましょう。」
教師は簡単に言っているがとても難しい。視力を強化してミリ単位で編み上げていく必要がある。それにうまく魔力が流れなかったら効果を発揮しない。例えるなら電気と豆電球のような関係だ。そして魔法陣が回路のような感じだ。
ああ、崩れた。くそっ、こんなちまちましたした作業できねぇよ。
(マスター、相変わらず不器用ですね。テストに合格できないんじゃないですか?)
(うるせーな。話しかけるな、気が散る。どうせ手伝ってくれねぇんだろ?)
(当然です。マスターの成長につながりませんから。)
成長とかこっちは求めてねぇんだよ。むしろ堕落したい。
その後もピンセットのようなもので組み上げるが、細かすぎて発狂しそうになる。
なるほどな、そりゃなかなか魔法陣が蘇らないわけだ。めんどくさすぎる。どうやってこんなんで都市を破壊できる効果のある魔法陣を作れるのか分からない。すげぇ金がかかったんだろうな。
「あれジン君、できてませんね。難しいですか?」
「そうですね。細かすぎて手が追いつきませんね。」
「大丈夫です。一つずつ済ませていきましょう。」
見回りをしていた教師につかまり、ついにマンツーマンでの指導が始まってしまった。
この精神年齢でも恥ずかしいな。頼む、早く終わってくれ。絶対に耳が赤くなっている自信がある。
その後も教師やフレイたちの手を借りながらなんとか完成した。
「はい、皆さんできましたね。では、壊れないように掌に載せて魔力を流してみましょう。」
そっと掌にミスリルの魔法陣をのせて魔力を流すと、天井に向かって水が噴き出した。
「おおっ、水が出た。感動だ。」
流石異世界、期待を裏切らない。
「ジンは凄い苦労してたもんね~。」
「まさか、お前がここまで不器用とは思わなかったぞ。」
「その節は大変お世話になりました。」
「まぁまぁ、よかったじゃないか。ジン。」
「ああ、フレイも手伝ってくれてありがとう。」
こうして時は流れてゆく。
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