第125話 いろんな情報2

あれから数日が経ち、やっと平日最終日の夜となった。

不味いな。こんな生活、体が持たないぞ。毎日授業を受けて、さらにバルア達と対戦するとか、俺の求めてる生活とはかけ離れすぎている。

日頃の疲れを癒すためにベッドでゴロゴロするが、パールが嫌な情報を出してきた。

(マスター、報告があります。今回はひどいですよ。)

いつもひどいじゃねぇか。

(はぁ、聞かせてくれ。)

(闇オークションでラウドから招待状を奪ったことがあったじゃないですか。)

(ああ、そんなこともあったな。すっかり忘れてたわ。)

大分前のように感じるなぁ。それだけ濃密な日々を送ってきたんだろうなぁ。

(そのラウドですが、どうやら闇オークションの潜入調査をしようとしてたみたいです。さすがに数週間も経っているので冒険者ギルドも動き出し始めました。それとSS級冒険者だったジェドの行方についても調査が始まりました。)

いろいろ気になる情報があるな。正直、ジェドの調査に関しては遅いなという印象ぐらいしか受けないが、

(嘘だろ?、あのサイコが調査をしようとしていただと。そんなことがあっていいのか?)

(おそらく演じていたのではないですか?、闇オークションに参加するには狂人のふりをする必要があったでしょうから。)

つまり俺は罪のない人を殺してしまったと。まぁ、仕方がない、知らなかったんだから。それに招待状を手に入れるまでに悪いことを少しはしているに違いないしな。それよりも、はぁー、残念だが闇オークションには参加できないかもな。尻尾を掴まれ始めているようだし。

(…なるほどな。)

(さらに面白い事にこの依頼を出したのは第7皇子の味方の商会なんですよ。どういうことかお分かりですね?)

(…帝位争いも絡んでくるってことか。)

(ご名答です。しかも闇オークション主催者である財務大臣は第1皇子の後ろ盾です。さらにその闇オークションの参加者たちも、そうそうたる大物ばかりです。おそらく全容が暴かれることはないでしょうが、少なくとも帝位争いの状況も変わるでしょうね。第1皇子は劣勢に立たされ、下手すれば失脚してもおかしくないレベルですから。まあ参加者に自分の支援者がいれば返り血を浴びますが。)

(第7皇子は思い切ったことをしてくれるな。手段は選ばないってことか。)

(まぁ、皇帝になれなかった時点で人生終了ですからね。そりゃ、無茶もしますよ。それに今回の場合は冒険者ギルドも絡んでますから揉み消すことも不可能だったでしょうしね。)

第7皇子か、接触してみるのもありかもな。息がかかった人物が皇帝になれば都合もいいだろうし。

(なかなかだな。)

(これだけじゃありません。財務大臣が闇オークションを開催していたのはどうやら妻のためのようです。)

あれ?、実はいい人だったパターンか?

(…聞きたくないけど聞こう。)

(どうやら財務大臣の妻が重い病気で治癒魔法も効かないとか。それで闇オークションを開くことで治せる物が持ち込まれるのを期待しているようです。)

なるほどな、そこまで人を好きになれるって素晴らしいな。正直、手を貸してやってもいいとは思うが、ローナがネックなんだよなぁ。できれば関わりたくない。

(ふーむ、どうやって立ち回るべきか。)

(考えているところ申し訳ありませんが、まだまだ報告がありますよ。)

(まだあんの?、もう許容量超えてんだけど。ていうか、お前、情報を温めてたな?)

(はい、どうせ平日は何もできないでしょうから。それなら余計な情報は必要ないかなと思いまして。)

(そいつはどうも。)

確かに俺は一回気になったら、集中できないタイプだからな。それに平日は疲れて動きたくないし。

(どういたしまして。それで続けますが、トランテ王国がフォーミリア王国の首都ガーレットに到着し、国王を処刑しました。ですが、王子や王女は逃げ出したようです。行先までは確認できていません。)

(そうか。それはフォーミリア王国は滅亡と言ってもいいのか?)

(はい。ですがまだ王族は残ってますからね。将来、立ち上がるということも十分考えられます。)

(火種は残ってるということか。)

(まぁ、しばらくは大丈夫でしょう。それと、聖女がマルシア王国へと帰りました。どうやら帝国も侵攻したことを知って諦めたようです。帝国にはフォーミリア王国から仕掛けてきたという大義名分がありますから。まぁ、マスターの仕業なんですけどね。)

なるほどなるほど、爆弾は帰っていったか、いいことだ。

(もうさすがに報告はないよな?)

(いいえ。実はマリアナの言ってた組織について調べてみたんです。どうやら新興宗教を作って信者を協力者としているようです。信者はちっとも気づいていませんが。)

(へ~。やるな~。宗教に目を付けたのはいい観点だ。)

(組織を褒めてどうするんですか。)

(それでどういう宗教なんだ?)

(名前はモルテ教。死こそが救済であると掲げてる宗教ですね。ただし自殺は禁止していますが。)

えっぐ。まさしくカルトじゃねぇか。凶悪犯罪が増えそうだな。

(頭いかれてるんじゃね?)

(それだけ人生に絶望している人がいるんでしょうね。信者達は鉄砲玉として使われてます。)

(恐ろしいな。組織も恐ろしいけど信者も怖い。)

(そうかもしれませんね。ですが組織本体については情報が得られませんでした。隠れるのがうまいようです。)

(さすがに大陸規模で活動しているだけはあるな。)

(各国もモルテ教の危険性に気づいて工作員を送り込んでいるようです。まぁ、おそらく組織までには届かないでしょうが。)

(さっさと潰せよな。変な事件に巻き込まれるのはごめんだぞ。)

(そうですね、マスターはトラブルに巻き込まれやすい体質ですから。それと最後の報告です。ジルギアス王国が東部諸国連合の2カ国目を狙ってます。)

(侵攻速度が随分速いな。何か理由があるのか?)

(大陸中央部が荒れているというのと、東部諸国連合の物資自体が不足しているのに気づいたようです。マルシア王国に巻き上げられてましたからね。)

(弱きは罪ってやつか。残酷な現実だ。)

(そうですね。)

(それでマーテル公国とクレセリア皇国の戦況はどうなんだ?)

(膠着状態です。帝国の軍事支援が効いているようです。それにマーテル公国は防御に徹してますから、崩すのは難しいようです。)

(なるほど。もうしばらく頑張ってほしいものだ。)

そんな会話をしていると、いつのまにか寝落ちしてしまった。


ー--??ー--

「あの依頼はどうなった?」

「どうやら失敗のようですな。冒険者ギルドに問い合わせましたが、向こうもよく分ってないようです。」

「S級冒険者でも駄目だったのか。作戦を練り直す必要があるな、思ったより手ごわいようだ。」

「珍しいですな。思い通りにならないことがあるとは。」

「それが帝位争いだからな。それに今は大人しいが、あの双子も要注意だ。動き出したらどうなるか分からない。」

「そうですな。味方に引き込まれてはいかがです?」

「それは出来ない。他の奴らも双子には手を出さない、あいつらがゲームチェンジャーとなりうると分かってるからだ。」

「これは差し出がましいことを。申し訳ありません。」

「問題ない。まだ切り札は残ってるからな。」

そう言って男は不敵に笑う。



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