第131話 帰宅的
はぁ、ようやく学園に戻ってきたな。早く朝食を食べよう。
「助かったよ、ゼロ。」
「これで貸し借りはチャラだな?」
「ああ。」
「ゼロ、本当にありがとう!!」
「どういたしまして。ローナ嬢も頑張るんだぞ。そいつはひねくれ者だからな。」
「うん。」
余計なことはいうなよ、パール。それとローナ、そこは否定してほしい。
「もうさっさと帰れ。」
「では、いつか会おう。」
そのセリフに合わせて俺は幻術のゼロが飛んでいったように演出する。
「ジンも本当にありがとう。」
「どういたしまして。さぁ、飯を食いに行くか。」
「うん。」
ちっ、バルアがいねぇからここは自腹かよ。最悪だな。さすがに後で請求するのは気が引けるしな。
(パール、今日の夜に第2オペレーションZを決行するからな。)
(本当ですね?、前みたいに二度寝するとかなしですよ。)
(大丈夫だ。休みの日だからな。)
その後、ローナと遅めの朝食をとる。
「ジン、食べるの速いね。ちゃんと噛まないと身体に悪いよ?」
「いや、ローナが遅いだけだろ。」
「そんなことはないと思うんだけどなぁ。」
(マスターの食べる速度は間違いなく一般の生徒よりも速いですよ。)
(知ってるよ、そんなこと。いつもまわりより食べ終わるのが速いからな。)
(なら素直に認めればよかったじゃないですか。)
(なんか嫌だった。)
選択肢が3つ出されたとき、俺は無難なものではなくどっちか一方向に振り切れているものを選ぶ。なんとなく無難な選択肢は嫌だ。
(素直じゃないですね。)
(それに関しては認めるから、ある意味素直だな。)
(ひねくれすぎですね。)
正直早く帝都に遊びに行きたいが、一応ローナが食べ終わるまで待つ。
「ごちそうさまでした。ジンはこの後、どうするの?」
「部屋に戻ってゆっくりする予定だ。」
「…嘘つかないでよ。」
ローナがジト目で見てくる。
ローナにバレるはずがない、ただのはったりだ!!
「嘘じゃないぞ。」
「帝都で遊んでいるジンの未来が見えたもん。」
その手があったか、面倒くさいな。
(マスターの話術通らず、ですね。)
(卑怯だよな。勝手に人の未来を見んなよな。)
「参ったな。確かに遊びに行こうとは思っている。」
「嘘つかないでよ。ねえねえ、私も行っていい?」
「いや、ローナは実家に帰るんじゃないのか?」
「今週はもう帰ったからいいの。それにお母様の病気も治ったから。」
「…そうか。」
「だからいい?」
(どうされるんですか?)
(さすがに部屋に籠りっぱなしなのは嫌だからな。仕方ないから連れていくさ。)
「はぁ、分かった。その代わり、俺が行きたいところしか行かないからな?」
「うん、それでいいよ。あっ、でもみんなに帰らないっていう報告しに行かないと。」
「それは別に良いが、ローナの母上の病気が治ったっていうのをそうすんなり信じるか?」
「大丈夫。ちゃんとお父様に手紙を書いてもらったから。」
ガルドー--、やってくれたな。俺の周りの人、余裕で予測を超えてくるから怖いんだよ。
その後、トレーを戻して、再び外出届を出す。そしてその日は夕方までローナと帝都を回るのだった。
(マスター残念でしたね。作者不詳の本がなくて。)
(いや、むしろ無くてほっとしたわ。これ以上、フラグが増えたらやってらんないからな。)
(マスターが英雄譚以外の本を買うのは初めてじゃないですか?)
(ああ、そうなるな。)
小説を読むのが楽しみだなぁ。さすがに漫画はなかったけど。
「今日は楽しかったね。」
「ああ、そうだな。」
「明日はどうするの?」
「まだ決めてないな。」
「本当?」
完全に疑ってんな、仕方ないと言えば仕方ないが。
「本当、本当。」
「分かった、じゃあ信じてあげる。」
「そりゃどうも。」
そんな会話をしながら寮に戻るのだった。
ー--??ー--
「オルガ様、侵攻速度が随分早いですね。理由をお伺いしても?」
「単純なことだ。東部諸国連合が団結すれば我々に勝ち目はない。勝とうとするならば長期戦は下策。ならば一気に侵攻して踏みつぶすまでよ。だがここからが難しいな。一カ国を滅ぼしたことによって警戒度は跳ね上がり、団結して抵抗してくるだろうよ。」
「勝てるでしょうか?」
「勝つとも。そうでなければマルシア王国でさえ届かぬよ。」
「どこまで侵略するおつもりですか?」
「国王陛下からはとりあえず東部諸国連合を侵攻しろと言われている。その後のことは状況次第だが、できればギラニア帝国と戦ってみたい。追い込めば前線に皇族が出張るらしい。」
「皇族が前線に出てくるとはさすが原初の国ですね。」
「だからこそ巨大なのだろうよ。」
オルガ、この人物はジルギアス王国を統一した初代国王の軍師である。初代国王はオルガに反乱を起こされるのを恐れて大陸に派遣した。なおこの事にオルガは気づいていない。
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