第94話 大怪盗

「帝国の大商会から盗むのはやめとくわ。経済が混乱しそうだからな。フォーミリアとエナメルにしておこう。ユーミリア公国の援護射撃になるだろ。」

「分かりました。ではとりあえず、南下しましょうか。」

「ああ、転移でいいだろ。場所は知ってるから。」

「了解。」

連続で転移して、まずはフォーミリア王国へと向かう。

なんでこんなことになったになったんだろうな。ローナはたまにいくつかの未来が見えるっていってたから、制御できてないのかな?、先天的なものとか?

そんなことを考えていると、フォーミリア王国の首都へ到着した。

幻術をしっかりかけて内部に忍び込む。

(ここではヴァルクス商会が不動の一強です。現在ではギラニア帝国の南部と、エナメル王国の北部に進出しています。)

なるほど、つまりヴァルクス商会に打撃を与えれば結構な経済混乱が起きるかもしれないと。

…仕方ない。もう手段は選んでいられないんだ。本命の方法が駄目だったからな。

それに帝国南部に進出してきているのも気になるからな、ぜひ撤退していただきたい。

(なら、たんまり貯めこんでそうだな。さっさと盗んで帰るぞ。)

(了解。)

(どこが本部かな?)

(極小型探査機で探らせましょう。)

(大丈夫なのか?)

(もともと、この国にも放ってますから一時的なら国の動きも見張らなくても大丈夫でしょうし、探せると思いますよ。)

(そうか、じゃあ頼む。)

(了解。)

…そもそも、俺が来なくてもパールに任せとけばよかったんじゃね?

気づいてはいけない事実に気づき、少しへこむ。

もう早く帰ってだらだらしたいな。

しばらくすると、

(マスター、発見しました。付いてきてください。)

(わかった。)

大通りを歩いていくと、大きな建物が見えてきた。

(あれが、ヴァルクス商会の本部です。あそこに金庫が置いてあるのを確認しました。どうやって、盗みますか?)

(空間魔法で金庫を持ち上げて逃げたらいいんじゃね?)

(大胆ですね。まぁ、空間魔法なんて存在に対する備えはないでしょうから成功すると思います。)

(ならそれで行くか。)

銀の魔力で目を強化し、金庫の位置を確認する。

わるいな、もらっていくぜ。

手を掲げ、空間に干渉する。そして一気に急上昇させ、上空へ持っていく。

「バキッ、バキャ、バキバキ。」

建物の屋根をぶち抜き、大きな穴が開く。

それを見ながら

「転移」

金庫のそばへ転移する。

(無事に成功しましたね。)

(ああ、とりあえず山奥へ持っていくぞ。)

(了解。)

しばらく上空を飛び、山奥に降りる。

「さあ、開けるぞ。黒剣。」

振りかぶって斬りつける。

「ガン」

「ジャラジャラジャラ…」

一斉に白金貨、大金貨、大銀貨が流れてくる。

「すごい量だな。よっぽど稼いでいたみたいだな。ちゃんと、避難船に収納しておいてくれ。」

「わかりました。スクエアと指輪にも分けて保管しておきます。それにしてもすごい量ですね。まさに一日で世界トップクラスの大金持ちとなりましたね。」

「こりゃ、楽でいいな。味を占めちまいそうだ。エナメル王国に行かなくても良くなったし。」

「仕方のない人ですね。でもこれだけのお金が急に無くなれば、経済が混乱するかもしれませんよ。」

「大丈夫だ。ちゃんと闇オークションで経済を回すから。」

「全く大丈夫じゃないような気もしますが、でもこれだけあればもうお金の心配をしなくてもいいですね。」

「あとは招待状と仮面と、どうやって出席するかだな。」

「割と大問題な気もしますけどね。」

「とりあえず、この金庫を壊して証拠隠滅するか。紅銀炎球。」

小さい紅と銀の球体を作り、ゆっくりと金庫に触れさせ熔かしていく。

原形がなくなったところでやめる。

「これなら元が何だったかは分からないだろ。」

「そうですね。環境に悪い気もしますけど。」

それを言われると困る。俺は自然を大切にしたいタイプだからな。

「だが、どうしようもなくないか?」

「それはそうですけどね。回収したらどうです?、貴重な金属も使われてますから高く売れると思いますよ。原形もとどめてませんから、特に怪しまれることもないと思います。」

「でも熔かしちゃったぞ?」

「ふふ、私の手にかかれば容易い事。攻撃手段こそ搭載されてませんが、逃げたり、隠れたり、人間ではできない器用なことは得意なんです。」

「そうか、じゃあ、早く頼む。もう、いい時間だしな。」

「了解。」

その後、無事に回収し終え、屋敷に帰る。

(昼はどうされますか?)

(ちょっと、休憩だな。ふつうに本でも読むわ。それと戦場チェスもしたいからどこかで買って帰ろうぜ。)

(私とやるんですか?)

(もちろん。ぶっ倒してやるよ。)

たぶん無理だろうけど。

(無謀ですね。その気概だけ買いましょう。)

その後、戦場チェスを調達し、屋敷でたくさん遊んだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る