第93話 無駄骨
銀の魔力で視力を強化する。
ふふ、俺は常に成長している。透視のレベルは自由自在さ。
ええと、金庫はどこにあんのかな。
おっ、あそこか。部屋自体が金庫か、しかも大半が白金貨だし、どんだけ貯めてんだよ。おっ、美術品も結構置いてあるなぁ、興味はないけど。
それに扉の前には南京錠と、魔力を流す認証機があるな。
だが残念だったな、俺は空間魔法が使えるんだ。
直接部屋の中に転移してやる。
(パール、先に転移していくからついて来いよ。)
(了解です。)
あたりに人気がないところへ移動して
「転移」
はははは、笑いが止まんねぇぜ。お宝の山じゃないか!!
俺のためにわざわざ貯めてくれてありがとよ。
ちゃんと闇オークションで還元してやるよ。
「あなた、だれ?」
…空耳かな?、やっぱり疲れてるのかも。
「ねぇねぇ無視しないでよ、あなた、誰?」
ゆっくり後ろへ振り向く。そこには今まで見た美少女のなかで最も可愛い、亜麻色の髪をした少女がいた。
これはまたすごいな。セラ達より可愛いじゃねえか。異世界に転生して本当に良かった。
「俺はただの通りすがりさ、お嬢さん?」
「そんなわけないじゃん。だってあなた子供だもん。」
し、しまった。お宝を見て、興奮して魔法を解いちまった。
慌てて幻術で男性に化ける。
「子供?、俺は大人だぞ。」
「うそ、それは幻術でしょ。高度な闇魔法の使い手だけができるってお母さんが言ってたもん。」
ヤバい、どんどん墓穴を掘ってる気がする。しかもこいつ言葉遣いがちゃんとしてない、この屋敷の貴族の子供じゃないのか?
「はぁ~、バレたらしょうがない。確かに俺は子供だが、お前はどうしてここにいるんだ?」
「ふふ、内緒。」
こいつ、舐めてんのか?
「そうかよ。お前はここの貴族の子供なのか?」
「そうだよ。私はローナ・フォン・フォルナ。あなたの名前は?」
言うわけねぇだろ。頭大丈夫か、こいつ。
「俺はただのゴン。」
「そっか、ゴンはこんなところで何してるの?」
素直をだな。受け入れるか普通?
しっかし不味いな、なんて答えればいいんだろ。
すると、魔法陣が出現し、パールが現れた。
はっ?、なんで急に現れたんだ?
(すごいでしょ、マスター。ついに私はもう一種類の転移魔法陣を復活させたんですよ。これまでは座標の位置を確認しないと行けなかったのですが、特定の魔力を察知することで確認しないで済むようになったんです。本当に苦労しました。各国に保管されてる魔法陣を探査機で分析してたんです。)
…空気をよんでくれ。おかげでややこしいことになるだろ。
「わー、なになに、さっきの魔法陣は?、ゴン何かしたの?」
ほーら来た、…どうしよう。
「ん、俺は何も見てないが、急にどうした?」
「むー--、み・て・たでしょ。私知ってるんだからね。」
ローナが唇を尖らしている。
やり辛い、ストレートすぎて対応しにくい。
(マスター、今。どういう状況なんですか?)
(この女がこの部屋にあらかじめいやがった。それで転移したときにバレた。)
(転移前にちゃんと確認しなかったんですか?)
(ふつう居ると思わねぇだろ。)
「ねえ、ねえねえ、どうしてここにいるの?」
ちっ、これじゃあ埒が明かない。
「わかった。正直に言うからお前も答えてくれ。お前はどうしてここにいるんだ?」
「う~ん、他の人に言うなって言われてるけどまぁいいか。わたしね、いくつかの未来がたまに見えるんだよ。それでここにゴンが現れる未来が見えたんだ。」
未来が見えるだと、めちゃくちゃ便利じゃないか。
でもこれってなかなかの秘密だよな。財務大臣にバレたら殺されんじゃね・・・。
ま、まあ、いざとなれば逃げればいいや。
「そうなのか。」
「さぁ、今度はゴンの番だよ。」
その前に確認しておくか。
「ちなみに、ローナは何歳なんだ?」
「私は11歳だよ。だからもうすぐ学園に通うんだよね。しかも帝都でパーティがあったんだけど、熱が出て休まないといけなかったの。ほんとうに残念だったよ。」
そういうととても悲しそうな顔をしている。
でも俺はそれどころじゃなかった。
…最悪じゃねぇか。神よ、どうしてかくも厳しい試練をお与えになるのです!!
…現実逃避をしてる場合じゃない。なんとか打開策を考えなければ。
(マスター、学園でのお友達候補ができましたね。とりあえず正体はバレてないんですから早く盗んで帰りましょう。)
俺だってそうしたいわ。でもできねぇんだよ。
(…無理だ、素顔を見られちまったんだ。)
(えっ、何があったんです?)
(宝の山に興奮して幻術が無意識に解けたんだ。)
(はぁ~、やらかしちゃいましたね。どうするんです?、生半可な嘘じゃバレますよ。)
もういっそ、全部白状するしかないよな。学園で会ったらすぐバレるし。
「俺の本当の名前はジン・フォン・エルバドス。俺も来年から学園に通うんだ。」
「ええー-、そうだったんだ。ゴンって名前は嘘だったんだ。ふふ、そっかでもジンって私とおんなじで、来年から学園に通うんだ。じゃあさ、友達になろうよ。そしたらここにいたの内緒にしてあげる。」
立場が弱いと辛いな、イエスっていうしかないじゃねぇか。
「わかった。よろしくな。」
「うん、よろしくね。」
(マスター、また友達が増えましたね。おめでとうございます。)
(最悪だ。どうせこいつも上級貴族なんだろ?)
(侯爵家ですね。低い方の。)
(十分高いわ。参ったな。とりあえずここから脱出するぞ。)
(了解。)
「それにしても、ジン、どうやってこの部屋に来たの?、鍵が二つ掛かってたよね?」
首をかしげてる。
計算でやってるのがわかったらあざといんだろうが、そんな素振りが微塵も感じられないから、心に来る。
容姿だけはほんと一番だな。俺が太鼓判を押してやるよ。
「説明すると長くなるからまた今度な。」
(パール、人体に害のない範囲で強烈な光を放てるか?)
(可能ですよ。)
すると、ローナが手で顔を覆った。
「おい、何してるんだ?」
「急に部屋が光る未来が見えたの。ジンも目を抑えて。」
そうか、こいつ未来見れんだった。すっかり忘れてた。
でも今は、(転移)
領館の上空へ転移する。パールも後を追って転移してくる。
「はぁ~、災難だったな。未来が見えるとか反則すぎんだろ。」
「友達が増えちゃいましたね。でもそれで家族に黙っててもらえるならよかったんじゃないですか?」
「それはそうだけどさ、結局得るものは何もなかったからな。違うとこにまた盗みに行かねぇと。」
「どこにされますか?」
「…もう大商会でいいだろ。疲れたから、早く終わらしたい。」
「また明日にすればいいのではないですか?」
「いや、そろそろ冒険者活動を再開したいと思ってな。だからもう終わらせたいんだ。」
「分かりました。では行きましょう。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます