第116話 合流
やっぱり怒ってるよな。影分身で行くと伝えたけど。
しばらく飛び続けると現場に到着した。
「おーい、マリアナ。俺だ、出てきてくれ。」
「…」
マリアナが茂みから出てきたが凄い不機嫌なのがわかる。
「あ~、遅くなってごめん。」
「遅すぎるのよ!!、ずっとこんなところに放置して。もう置いていかないでよ。」
「ああ、分かってる。」
「それでこれからどうするの?」
それは考えてないんだよな。…どうしようか?、そうだ、ミリアにでも預けてみるか?
「安全な人に保護してもらうのはありか?、とても強い女性なんだけど。」
(マスター、もしかしてミリアに押し付けようとしてませんか?)
(よくわかったな、その通りだ。)
(自分で責任取ってくださいよ。)
「絶対嫌、あなたのそばから離れないから。」
そう言って服を掴んでくる。
うーん、俺が本当の12歳だったらぐらついてたかもな。しかしどうしようか?
(パール、どうしたらいいと思う?)
(当てもなく行動するからこうなるんですよ。)
(今は説教はいいから案を出してくれ。)
(そうですね。まずは彼女がどうしたいかを聞いた方がいいんじゃないか?)
(一理あるな。)
どちらにせよ、早く組織を潰してマリアナを独立させたい。纏わりつかれたら暗躍しづらいからな。
「そもそもマリアナは何かしてみたいことはあるのか?」
「…私に選択肢なんてないわ。今まで生きるためとはいえ、口に出すのも憚れることをしてきたから。」
重いって。こっちまで憂鬱になるじゃないか。
「それを悔やんでるってことか?」
どうするのが正解なんだ?、仕方ないと慰めるのか、だからなんだと切り捨てるのか。それによって関係性も変わるからな。
「…そうね。私には悔やむ資格すらないと思ってるけどそれでも心にしこりはあるわね。」
重い重い、それなら俺がやろうと思っているオペレーションZはどうなるんだ。絶対無辜の民が死にまくるぞ。
(マスター、慰めてあげてくださいよ。)
(なんて言えばいいんだ?、下手なこと言ったら終わりだぞ。)
(私、人工知能なので感情についてはわかりません。)
このポンコツが。なら黙ってろよ。
仕方ない、こういうときはさらに下を見せれば少しは傷も癒えるだろ。
「お前は優しいな。俺なんてSS級冒険者とS級冒険者を殺したけど後悔なんてしてないぞ。」
(マスター、さらけ出しましたね。大丈夫ですか?)
(今は問題ない。証拠もないし、こいつは俺を頼るしかないからな。)
(最低な発想ですね。)
「…嘘よ。SS級冒険者を殺せるはずがないわ。」
「ならどうしてジェドは行方不明なんだろうな?」
「あなたが殺したの?、本当に?」
「ああ。」
「どうして殺しても後悔してないの?」
「大義名分があったからだ。生きるためというな。お前だってそうだろ。生きてりゃ大小あれど誰かを絶対に踏み台にしている。気にしすぎてたら生きていけない。」
「…あなたは強い人ね。私はとてもそうは思えないわ。」
(マスターはやっぱり人の感性から外れていますね。)
(…かもな。だが図太い奴の方がいい思いをするのも事実だ。そんなやつはよく見てきたからな。)
惨めな思いをするくらいなら誰かに押し付けてやる、俺は俺だけのために生きる。
「そうか。だがどうあがいても過去は変わらんぞ。」
「分かってるわよ!!、そんなこと。でも仕方ないじゃない、私が自殺すれば助かった命だってあった!!」
究極の自己犠牲が来ましたね、反吐が出る。
「自殺って馬鹿か、お前は。お前の命はな、生まれたときから他の命が積まれて出来上がってるんだよ!!。それを放り出すのは許されない。考えたことはあるか?、お前が食べてきた食べ物の中には生きたいと思ってたかもしれない動物や魔物がいたかもしれない。たとえそうは思っていなかったとしても命をもらってきたのは確かだ。ならばその命が納得するように生きないといけない。お前にはその自覚があるか?、俺にはある!!」
(マスター、いい風にいってますけど本当にそう思ってるんですか。)
(ああ。これは本当にそう思っている。もし俺が食べられる側だったとして、俺を食べたやつがあっさり人生を放棄したら許さない。どんな手を使ってでも生き延びてほしい。)
命がそんなに軽い物であっていいはずがない、食べ物には生きてきた歴史が詰まっている。それを食す以上、生きる覚悟が必要だと俺は思う。
まぁ、ただの一意見だが。
ベジタリアンはどうなんだ?、ていう意見は無しね。たぶんベジタリアンになる前は生き物を食ってるだろうし。
「…なら私はどうすればいいのよ。」
「要は生きたいように生きろってことだ、最後まで諦めずにな。ではもう一度聞こう。お前は何がしたい?」
「私は…復讐がしたい。組織と両親を嵌めた人間に。」
…わーお、そうなっちまいますか。完全に想定外だ、まぁ生きる目的がないよりはましだが。
「わかった。手伝ってやる。だがすぐには無理だ。それよりはこれからどうするかが先だ。」
「…ねぇ、さっき言ってた女の人は強いの?」
「ああ、それは保証する。」
「あなたより?」
誤魔化そうと思ったけどマリアナの真剣な瞳を見て正直に答えようと思った。
「いいや。俺よりは強くない。俺が最強だからな。」
「そう。なら私はその女の人のもとに行って鍛えてもらうわ。それから復讐する。」
「そうか。復讐の時は声をかけろ。手伝うから。」
「ふふ、ありがとう。」
よっしゃ、ミリアに押し付け成功。たしかトランテ王国に帰るって言ってたよな。探すのは明日にするか。
「ならとりあえず、今日は帝都の宿で一泊するか。」
「大丈夫かしら?」
「幻術をかけるし、影分身も近くに居させるから大丈夫だ。」
「そう。本当に何から何までありがとう。」
「どういたしまして。」
しっかし、オペレーションZはどうしようかね。戻ってから考えよう。
「じゃあ、帝都へ向かうぞ。」
空間魔法で周囲の重力を操り、ふわりと浮かび上がる。
「わわわ、どうして浮いてるの?、ジン。」
「魔法」
「それだけじゃ分からないわよ。」
その言葉を無視して帝都の上空へ向かい、いつも通り幻術をかけて人気のないところへ着陸する。
「さぁ、いくぞ。」
途中でこっそりパールからお金を受け取り、ポケットにしまう。
「よし、ここにしよう。」
「ええ!!、ここ高級宿よ。大丈夫なの?」
「ああ。しっかりとしたところじゃないと不安だからな。いいか、明日俺が来るまで宿から出るな。」
「分かったわ。」
「ならよし。」
その後、チェックインを済ませ、俺は学園に戻る。
(不味いな、すっかり遅くなっちまった。)
(まぁ、大丈夫でしょう。休みの日ですから。)
(だよな。パール、一応マリアナに探査機をつけておいてくれ。あとトランテ王国の探査機はミリアを探す方に回してくれ、足りないなら近隣国からも回せ。明日までにはミリアの場所を特定してくれ。)
(了解。)
そして無事に夜ご飯をとり、自分の部屋へと戻るのであった。
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