第115話 聖女

「いけません、シュレイン様。お戻りになってください。」

護衛の騎士が注意する。

「なりません。困っている人がいるならば助けなければなりません。」

(結構いい人そうですね。)

(そうだな。あんなこと言って恥ずいな。)

(はい。反省しないといけませんね。)

シュレインと呼ばれた金髪碧眼の美少女がフレイのもとへと近寄り、光魔法でフレイの体全身を照らしていた。

えっ、そんなんで治んの?、原理が分からないんだよ。

「どうですか?、もう治ったと思うのですけれど。」

「あ、ありがとうございます。痛くなくなりました。」

おっ、フレイの顔が赤くなってる。わかる、わかる、美少女に距離を詰められたらそうなるよな。もしかして惚れたか?

「お二人とも助力していただきありがとうございました。」

「いえ、当然のことをしたまでです。お気になさる必要はありません。」

おーい、フレイ。キャラ変わってんぞ。

(フレイ、聖女に惚れましたかね?)

(おっ、お前も成長してんな。俺もそう思う。)

(厳しい道のりですね。いくら公爵家でも相手が聖女というのは。)

(まぁ、フレイが本気というなら手伝ってやってもいいけどな。)

(本当ですか?、勝手にやれって言うスタンスだと思っていました。)

(だって、面白そうだしな。)

(最低ですね。)

「私の名前はフレイ・フォン・アルバーナと申します。お名前をお伺いしてもよろしいですか?」

おいおいフレイ、攻めすぎじゃないか?。若いっていいな。

「はい。私の名前はシュレイン・セントクレアです。」

ふーん、セントクレア教の名前が付けられるのか、おそらく後天的に変えたんだろうな。

「そうですか。もしかして聖女様ですか?」

「はい、そうです。そちらの方の名前を聞いてもよろしいですか?」

「私の名前はジン・フォン・エルバドスと申します。どうぞよろしくお願い致します。」

「こちらこそよろしくお願いします。」

(なあなあ、このまま一緒に帝都へ目指す流れにはならないよな?)

(そればっかりは分かりませんね。)

(早くマリアナと合流したいんだけどな。)

(女性を怒らしたら恐ろしいですからね。)

(ほんとにそれはそう。)

「お二人は何をされていたんですか?」

「狩りをしていました。」

もうちょっと、会話を広げようか、フレイ君。

「そうなのですか。」

「シュレイン様、そろそろ帝都に向かいます。」

「そうですか、分かりました。ではお二人ともほんとにありがとうございました。もしよかったら一緒に帝都へ向かいませんか?」

きたー---。断ってくれ、フレイ。

「はい、ぜひ。いいよな?、ジン。」

あじゃぱー。やっぱそう答えるよね、少年だもの。

「俺はもう少し、散歩してから帰るよ。フレイは先に帰っててくれ。」

「…いや、なら俺も付き合うよ。ジンを一人に出来ないしな。」

めちゃくちゃいい奴や。友達だと認めてやるよ。

(恋と友情を天秤にかけて友情をとりましたね。)

(ほんとにいい奴だよ、フレイは。残念ながら、利害が一致してないけど。)

「じゃあ、俺も帰るよ。フレイが聖女様と帰りたいみたいだし。」

「ジン!!」

「悪い、悪い。」

「まぁ、そうなのですか。光栄です。」

(マスター、マリアナはどうするんですか?)

(影分身で誘導するしかない。)

こっそり影を地に這わせて森の方に向ける。そして森に入ったところで俺の姿にし、視界を共有する。

これって声を出せないのが不便なんだよな。声さえ出せたら完璧なのに。

「ジン。やっと来たのね。」

地面に向かって文字を書く。


ごめん。これは闇魔法の影分身だから声が出せない。だけど目は見えてるし音も聞こえてて普通に通じるから。それで今、帝都へ向かってるんだ。マリアナは帝都の中へ入ってこれるか?


「無理よ。帝都から出る手引きをしたのは別の人間だから。」


身分証がないってことか?


「ええ、その通りよ。」


ならもう少し待ってくれ。すぐに迎えに行く。この影分身とつなげておくから何かあれば話しかけてくれ。


「ジン、あなた、本当に早くして。結構心細いのよ。」


了解


〈了解じゃないのよ、あの男は。会ったらたっぷり文句を言ってやるんだから。〉


ようやく帝都へ到着し、レンタル店で馬と武器を返却する。そしてシュレインを乗せた馬車は帝城へと向かっていった。

いや、まじで一緒に帰ってくる意味なかったな。結局聖女とは帰り道で話さなかったし。

学園へ帰る途中、フレイが真剣な顔で宣う。

「ジン、俺は恋をしてしまったかもしれん。」

たぶん向こうはそんなことは一ミリも思ってないぞ。男にとってよくある勘違いだからな。

なるほど、こうやって大人になっていくのか。

「そうか。相手は強敵だな。頑張れ。」

「どうすればいいと思う?」

恋愛不適合者に聞くのはやめてほしい。

「そうだな、まずは接点を増やすべきじゃないか?、よく知らないやつを好きにはならないだろ?」

お前はなってるようだが。単純な奴だ。

「確かにそうだ。でもどうやって接点を増やせばいいんだ?」

その後、フレイは一人でぶつぶつ呟いていた。

(これは本気ですね。)

(ああ。ぜひ頑張ってもらいたいものだ。)

(マスターもだれかいい人を見つけましょう。そうですね、マリーやラギーナとかどうです?)

(却下で。)

(贅沢ですね。)

学園に着いたため、トイレへ行くと言ってフレイと別れる。

(遅くなったな。マリアナは怒ってるかな?)

(間違いないでしょうね。)

怖いな。行きたくないけどそうしたら絶対あいつは死ぬからなぁ。手のかかるやつだ。

とりあえず、上空へ

「転移」

風魔法でマリアナのもとへ向かう。

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