第114話 小さき暗殺者

皆さん、この小説は全要素盛です。胸やけに注意してください。

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悲鳴のした方向へ向かうと、ちゃんと整備された道に出た。

そこではなんというか思った通り一台の馬車が大人数で襲われていた。周りには騎士が存在するが押し込まれている。

(あそこから悲鳴が聞こえてきたんだな。あいつらって賊じゃないよな?)

(はい。おそらく暗殺者だと思われます。でないと騎士もあそこまでやられませんし、そもそも要人が乗っていると思われる馬車を襲ったりしないでしょう。)

(はぁー、面倒くさい事態は確定だな。なんでこうなるんだろうな。)

(日頃の行いのせいでしょうね。因果応報ってやつです。)

否定したいが、心当たりがあるのでできない。

「ジン、助太刀に向かおう。」

「分かった。」

馬から降りて近くの敵に斬りかかる。

「キン」

これを防ぐのか、なかなかの手練れだ。しかもこいつ背が低いな、もしかしてまだ子供か?、子供ならば面倒くさいな。

絶対に直接子供は殺さない。それがこの世界で生きる上で決めた俺のルール。必要なら間接的に殺す。

「顔を見せろ。」

顔を覆っている布だけを切り裂くなんて器用な真似は出来ないので、動きを封じて布を引ん剝く。

「やっぱり子供か。」

顔を見ると俺より年上で、将来は妖艶な女性になりそうな薄い金色の髪の美少女であった。

「放して!!」

鋭い蹴りを放ってくるが悠々と躱す。

さあ、どうしようか?、殺すのは気が引けるがおそらくこの子は任務をミスしたらどっちみち殺されるだろう。

実にもったいない、こんな将来有望な少女は殺したくない。

(殺すんですか?)

(いや、殺しはしない。どうにか生け捕りにして命は助けてやりたい。)

(意外ですね。殺すんだと思ってました。)

(子供相手にそんな大人げないことはしない。)

(マスターも子供ですけど…)

よし、とりあえず幻術で生け捕りにしよう。

周りには引き続き俺が戦っているように見せ、少女を空間魔法で拘束する。

「くっ、身体が動かない。何をしたんだ?」

「少し会話がしたくてな、まずお前は何歳だ?」

「誰がお前に言うか。」

頑固ちゃんだな。

「そうか、ならどうしてこんな仕事をしている?、他になかったのか?」

「…私は犯罪奴隷だったからな。他の仕事などない。」

「なら俺がほかの仕事を提供してやる。だからここは引け。」

「それは無理だ。お前の言う通りにしても私は殺される。任務はおそらく失敗だからな。そもそも聖女の馬車を襲うなんて無理があったんだ。」

…凄いワードが聞こえてきたな。聖女?、いるんすか、この馬車に。

(神引きですね。生涯でおそらくふつうは一度もないでしょう。)

(まだいると決まったわけじゃない。)

(そうですね。可能性は高そうですが。)

「お前はちなみに誰に雇われたんだ?」

「それは分からない。組織の命令だからな。」

「組織だと?、どんな組織だ?」

「大陸規模で活動している。何のために活動しているかは分からないが、非合法なことを裏でやっている危険な組織だ。」

(マスター、盛り上がってきましたね。ここにきて謎の組織ですか、渋滞事故発生ですね。)

(…もう勘弁してほしいよ。お腹いっぱいだ。)

おそらくこの少女を助けたらその組織とも必然的にかかわるってことだ。…切り捨てようかな?

「お前にすべてを捨てる覚悟があるなら助けてやる。どうする?」

「もういい。お前のようなガキに何ができる。」

「色々。」

「嘘をつけ。…その目、本気で言ってるのか?」

「ああ。こう見えても面倒くさがり屋なんでね。はやく決断してくれると助かる。」

「…どうしてそこまでして私を助けてくれるんだ?」

「子供は殺さないって決めてるんだ。」

「っふっは、お前も子供だろ。しかも私より年下じゃないか。面白い奴だな、どうせもう助からないからな、お前に命を預けるのもいいか。」

「ああ、任せろ。約束は絶対守る。」

守らないのはもう会わないと分かった時だけだ。積み重ねた信頼は一度の裏切りで崩壊すると言われるが、逆に言えば一度は絶対に裏切れるということ。ちゃんと見極めて裏切らねぇとな。

「ふふっ、ううっ、うう……………」

やっぱりつらいよな、いろいろあっただろうし。

マリアナはしばらく泣いてから目をこすり、涙が止まる。

「ふう、もうこれで泣くのは最後。さぁ、私はどうすればいいの?、教えてちょうだい。」

「それが素か?」

「ええ。もう偽る必要もないでしょ。でも敵は巨大よ、どうする気なの。」

「それはおいおいだな。とりあえず名前はなんて言うんだ?」

「この状況で聞く?、マリアナよ、あと14歳。あなたは?」

「ジンだ。で年齢は12歳だ。」

「やっぱり年下だったのね。」

「ああ。じゃあ、とりあえず姿を隠してほしい。森の中でこれが片付くまで待っててくれ。」

「すぐ迎えに来てよ。」

「勿論。」

マリアナが森に行くのを見届け、幻術を解除する。

(マスター、マリアナをどうするんですか?)

(とりあえず保護だな。問題はどこに保護するかだが、まぁまずはこいつらをどうにかしてからだな。)

(得意の後回しですね。)

(うっせー。)

それから暗殺者との戦いを再開する。

(こいつら、暗器を使いやがる。針とか飛ばしてくんなよ、めんどくせぇ。)

(暗殺者ですからね。おそらく毒が塗られているでしょう。まぁ、マスターなら銀の魔力で余裕で治せるでしょうが。)

(そもそもどうして聖女とやらはここにいるんだろうな?)

(帝国への訪問じゃないですか?)

(もしかしたら帝位争いも絡んでるのかもな。そういや帝位争いの詳細はどうなんだ?)

(まだ、はっきりとは分かってませんが大体はつかんでいます。)

(なら、一度情報を共有したいな、オペレーションZの前に。)

(了解です。)

「ちっ、撤収。」

その言葉を聞いた瞬間、暗殺者たちは一方向に去っていく。

「うう・・・」

「どうした!!、フレイ?」

「針が刺さって、全身が痛いんだ。」

(おそらく即効性の毒です。やっぱり毒が塗られてましたね。)

(自業自得だ。余計なことに首を突っ込むから。)

(治してあげないんですか?)

(治癒魔法が効くか分からないしなぁ。銀の魔力を使うのは論外だし。)

子供を殺さないとは誓っているが、無条件で助けるわけではない。

「大丈夫か少年、魔力を体内で活性化させるんだ。」

護衛の騎士の一人が話しかけてきた。

(ていうか、聖女に治してもらえないのか?)

(ここにいるとバレたくないんじゃないですか?)

(それこそ最低だな。聖女じゃなくね?)

(所詮、祭り上げられた人間ですからよい人間とは限りません。)

辛辣だな、こいつ。

すると、馬車の扉が開いた。

「ガチャ」


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