第117話 オペレーションZ

ベッドでパールと会話を交わす。

(さて、情報共有を始めるぞ。帝位争いはどうなっている?、名前はいい。数字で言ってくれ。)

(分かりました。前にも言ったと思いますが第1皇子、第2皇子、第5皇女、第7皇子が皇帝の座を巡って争っています。帝国には13の公爵家があり、その公爵家にも派閥があります。第1は3つの公爵家、第2も3つの公爵家、第5は2つの公爵家、第7は1つの公爵家が後ろ盾となっております。特に優勢なのは第1ですが、まだ始まったばかりで盤石とはいえません。)

(それぞれの皇族の特徴を教えてくれ。)

(第1は政治を得意としています。現在は外務大臣ですね。第2は戦を得意としています。国境での小競り合いにも終始勝っていたそうです。現在の役職は中央軍の総司令官です。そして第5は第1と同じく政治が得意ですね。現在は内務大臣です。そして面白いのが第7です。これまでは無能と呼ばれていたそうですが、急に頭角を現し始めています。現在は無職ですね。)

無職かぁ、世知辛いな、皇族なのに。いや、皇族だからか?

それにしても

(面白いな。第7皇子は。同じ匂いを感じる。なにか帝位争いに参加したのには理由がありそうだ。)

(ご明察です。どうやら妹のためのようです。その妹とはミランダです。)

(そこで絡んでくるのか、めんどくせぇ。どうして妹のために頑張るんだ?)

(ミランダの美しさを妬んだ第5皇女がミランダを悪い噂の絶えない貴族に降嫁させようと考えているのがわかったからです。それを阻止するには皇帝になるしかないということです。)

(いいお兄ちゃんじゃないか。なら他の皇族はどの陣営についているんだ?)

(まず、第1皇女、第2皇女、第4皇女はすでに他の家に嫁いでいます。第3皇女は戦いが好きなので西の国境軍で総司令官をしています。そして第6皇女は第1の陣営です。第7皇女はご存じの通り、ミランダです。そして第3皇子、第4皇子は双子ですが現在のところ中立です。そして第6皇子は第1皇子、第8皇子は第2皇子についています。)

複雑だな、やっぱり権力闘争ってのは。それに第3皇子、第4皇子が気になるな。

しかもまだ態度をはっきりさせていない公爵家も多いからな。どうなってもおかしくないぞ、これは。

(今は第1皇子が優勢なんだな?)

(はい。介入されますか?)

(今はしないが、マリアナの言ってた組織が介入していても驚かないな。帝国に影響力が発揮できれば大陸にも影響力を発揮できるからな。)

(確かにそうですね。それでオペレーションZとやらはやるんですか?)

(勿論だ。行くぞ。)

(どこにですか?)

(すぐわかる。)


影分身を残して、外へ転移する。

よし、目指すは帝国とフォーミリア王国の国境だ。

今回は転移ではなく、風魔法で向かう。

(パール、どこらへんが帝国とフォーミリア王国の国境だ?)

(もうしばらく先ですけど。…まさか!!、戦争を起こす気ですか?)

(ご名答。オペレーションZ、またの名をオペレーション・蹂躙。)

(本当に最低ですね。何人もの人が死にますよ。)

(知ってる。だが必要なことだ。ヴァルクス商会から目をそらさせるには。それに遅かれ早かれ大戦は起きた、大陸中でな。下手すれば帝国対残りの国という形で。さすがにそれでは帝国といえど厳しい。それは俺の平穏な生活が崩壊することを意味する。そんなの許せないだろう?、なら俺の最も都合の良いタイミングで起こすのは道理だろ。)

(まったく道理ではありません。おそらく戦争となれば第2皇子が活躍します。それを阻止するために第1皇子は積極的に外交を展開するでしょう。それならば戦争なんて起きないかもしれません。)

甘っちょろいな。勃発するときは勃発するから戦争って言うんだ。

(希望的観測はやめろ。帝国は帝位争い中、どうしても一枚岩にはなれない。なら当然攻めるだろうさ。新たな皇帝が即位すれば付け入る隙がなくなるからな。それにどうせぶつかるなら、どの国もフォーミリア王国でぶつかりたいはずだ。国土が荒れることはないからな、国力が落ちたとしても。)

なるほど、愛を信仰するセントクレア教ができた理由が分かった気がする。俺みたいな人間がいるからだろうな、どうでもいいけど。

(…いいんですか?、後悔しませんか?)

(しない。動かなかった方がする。それに最優先は俺だからな。)

(そうですか、ならもう何も言いません。)

そしてしばらく飛び続け、ついに国境へと到着する。こっそりフォーミリア王国にわたり、それぞれの国境軍の位置を確認する。それから幻術を身に纏い、帝国軍へ死者が出ないように何発も火魔法を浴びせる。

「ドーン」「ドーン」「ドーン」

あたりが明るくなり、両軍も騒がしくなる。

さぁ、お膳立てはした。突撃してこい、帝国軍よ。

(マスター、やってしまいましたね。これから出る犠牲はマスターの責任です。)

(だからなんだって話だ。俺は気にしねぇよ。)

何度も言うが大戦は確実に起きた、それを早めただけ。結果は変わらない。

しばらく眺めていると、帝国軍が突撃してきた。

「「「敵襲」」」

フォーミリア王国軍は一気に混乱に陥った。それを見ながら

「転移」

上空へ移動する。

これでよし。おそらくSS級冒険者が介入しなければフォーミリア王国は滅亡。そして帝国はエナメル王国・トランテ王国と交渉。その結果によっていろいろ変わる。

(目的は達成した。帰るぞ。)

(…分かりました。)

その後、朝までぐっすり眠ることができた。

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