第118話 レッツゴー
「…朝か。今日も疲れる一日が始まるなぁ。」
(おはようございます、マスター。)
(今は何時だ?)
(6時30分ですね。)
(そうか。)
この世界にも時間の概念は存在する。古代文明が廃れたとはいえ、それからかなりの時が流れているので徐々に魔法陣の種類も増えてきている。街頭の明かりとか、コンロ、ライターなどがいい例だ、高級品ではあるけれども。
そして時計も存在するが腕時計という発想はまだない。存在するのは首からかけるか、ポケットにしまう系だな。
(今日は特大ニュースがありますよ。まずフォーミリア王国ですが帝国軍の参戦によって完全に崩れました。必死に大使をエナメル王国、ギラニア帝国、トランテ王国に送って交渉していますが難航しています。そしてあのフォーミリア王国出身のSS級冒険者ですが、冒険者ギルドが2人のSS級冒険者を使って抑え込んでいます。参戦はないものと思われます。)
なるほどな、フォーミリアは滅亡路線か。これはフォーミリア王国を舞台としてエナメル王国、トランテ王国と一戦を交えるかもな。土地の分割で揉めるだろうし。
(そうか。フォーミリア王国の貴族は何をしてるんだ?)
(エナメル王国、トランテ王国には対抗して軍を出していました。しかし帝国に対しては、北部の貴族は静観するつもりのようです。)
まぁ、仕方ないな。戦えば絶対に負けるから。静観が最善だ。
(そうか。帝国はどうするつもりだ?)
(帝国にとっても偶発的な衝突でしたからね。深夜遅く緊急会議が行われ、フォーミリア王国に侵攻するという結論が出されました。総大将は第2皇子ですね。)
これはこれは、本格的に乱世ですな。ここ十数年は大戦なんて起きてなかった。せいぜい俺が生まれる前のトランテ王国対ギラニア帝国ぐらいだ。そのときは帝国が勝った。
(そうなのか。それはまた帝位争いに影響が出るな。今回の件次第では第2皇子が先頭に躍り出るかもしれない。)
(そうかもしれませんね。)
(ところでミリアは見つかったのか?)
(もちろんです。もう向かいますか?)
(ああ。早く行こう。授業が始まるからな。)
服を着替えて、トイレに行き、上空へ転移する。さらに銀の魔力で強化した眼でマリアナの宿を見つけ、部屋の中に転移する。
すやすや寝ているマリアナを見てなぜか腹が立った。
「起きろ、マリアナ。向かうぞ。」
「…ジン、あなたねぇ、女性の部屋に無断で入ってくるのはデリカシーがなさすぎるわ。」
ぬぐ、反論できねぇ。
「わ、悪い。でも早く向かいたいんだ。」
「わかったわ。とりあえず身支度するから部屋の外で待っていてちょうだい。」
「うっす。」
(マスター、やってしまいましたね。)
(そうだな。でもマリアナがぐっすり寝てるのを見て腹が立ったな。俺も二度寝したかったし。)
(もっと器の大きい人間になりましょうよ。)
(お前にだけは言われたくない。)
その後もパールと会話していると扉が開いた。
「ガチャ」
「お待たせ。さぁ、向かいましょう。朝ご飯はどうするの?」
「向こうで食べさせてもらうから大丈夫だ。」
「手紙は出した?」
「いや、何にも連絡してないけど大丈夫だ。優しい人だから。」
「はぁ~。そういう問題じゃないわよ。親しき中にも礼儀ありでしょ。」
「うい。でも今更間に合わないからな。早く行こうぜ。」
「分かったわよ。」
その後、いつも通り人気のないところで幻術をかけて上空へ移動する。
「さぁ、行くぞ。」
(パール、案内を頼むぞ。)
(了解です。)
「ね、ねえこれ本当にどうやって飛んでるの?」
「魔法。説明は面倒くさいからしない。」
「まったく。少しあなたのことが分かってきた気がするわ。」
「そうかい。」
「ねえ、ところで期間を決めておかない?」
確かに必要かもな。逆算できればいろいろ手が打てるし。
「そうだなぁ。いまから4年後はどうだ?、それなら俺も学園を卒業してるから何の気兼ねもなく手伝える。」
「分かったわ。それなら4年後に迎えに来てちょうだい。来てくれなかったらこっちから押し掛けるから。」
「おおー、こえぇ。ちゃんと覚えておくよ。」パールが。
(パール、しっかり記録しておけよ。)
(はあー、了解です。)
しばらく会話していると、どうやら目的地に到着したようだ。
(マスター、到着です。あそこがそうですね。)
(わかった。ならこっそり侵入するか。)
無事に潜入に成功し、ミリアのもとへ向かう。
「ジン、これって大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないな。普通に犯罪だ。」
「やばいじゃないの。」
「バレなきゃ問題ない。堂々していろ。」
「一周回って尊敬するわ。」
「そりゃどうも。」
「褒めてないのよ。」
「ふん。マリアナ、お前にはミリアの義娘になってもらうからな。それで冒険者にでもなって身分証を発行してもらえ。」
「ええ?、聞いてないわよ。」
「今聞いただろ。」
「ジン、あなた性根曲がりすぎじゃない?」
「うっせーよ。」
(マリアナの言う通りです。マスターはひねくれすぎです。)
(お前は黙ってろ。ややこしいだろ。)
しばらく歩いていると一つの建物の前に到着した。
(ここがそうですね。)
(ご苦労。)
「ついたぞ。ここがそうだ。」
「ここが…」
「入ろう。」
「ちょ、ちょっともう行くの?、心の準備とかは?」
「いらんだろ。」
中に入ると老夫婦が朝食の準備をしていた。
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