第119話 ミリア・マリアナ終了

「おや?、お客さんかい?」

「まぁ、そうなるんですかね?。ミリアは居ますか?。少しお願いがあってきたんです。」

「あの子の知り合いか。分かった。すぐ呼んでこよう。」

あの子って年齢じゃないけどな。もう40代だろうし。

「お願いします。」

ミリアの父親らしき人に頼む。

そういや、弟夫婦が手伝ってるってミリアが言ってたな。厨房で料理でも作ってんのかな?

「あなたはミリアとどういう関係なの?」

「ミリアが働いていたところの子供ですね。」

「!!、ということはお貴族様でしょうか?」

「気にしなくていいですよ。弱小貴族の次男なんで。準貴族みたいなもんです。」

「そうは言われましても。」

「ならお互い敬語なしにしましょう。堅いのは苦手なんで。」

「しかし…」

「もういいから。ところであなたはミリアの母親なのか?」

「…ええ。そうよ。あの子はちゃんと働いていたかしら。」

「ああまじめに働いていたぞ。結構頑固ではあったけど。」

「ふふ。そうかもしれないわね。」

「あらあら、久しぶりに来たと思ったら私の悪口を言ってるのでしょうか、ジン様。」

げぇ。足音消してくんなよ。気づかんわ。

「ち、違う違う。褒めてるんだよ、職務に忠実だって。」

「そういうことにしておきましょう。それで私に何か用ですか?」

「ここじゃなんだからどこか静かに話せるところはないか?」

「それだったらこの部屋を使ったらどうだ。」

そう言ってミリアの父親が番号の書かれた鍵を渡してくる。

「ありがとうございます。よし、ならそこで話そう。」

ミリア、俺、マリアナの三人が部屋へ向かい、こっそりスクエアをパールから受け取る。

(マスター、速報があります。聞きたいですか?)

このタイミングで?、嫌な予感しかしない。だが、聞かないという選択肢はない。

(…聞きたくないが聞こう。)

(武器屋の店主にもらったあの武器は覚えてますか?)

ああ、あの日本刀の事か。

(覚えてるぞ。まさかその国が大陸に攻め込んできたとか言うんじゃないだろうな?)

(ご明察です。その島国はつい最近まで統一されてませんでしたが、どうやら統一された様ですね。それで勢いに乗って侵攻してきたようです、その国の名はジルギアス王国。私が気づくのが遅れたのは島国に探査機を回す余力がなかったからですね。)

思わず顔が歪みそうになる。いや、内治に力入れとけよ。余計な事すんな。

(それで東部諸国連合はどうしてるんだ?)

(あまりの侵攻速度に対応しきれていません。現在は一国が集中的に攻められています。)

まぁ対応しきれないのは仕方がない。いろんな国が存在する以上、思惑もそれだけ存在する。

(厄介なことになったな。ますます大陸が荒れるじゃないか。)

(ご愁傷さまです。)

これからの対応策を考えようとすると部屋にたどり着いた。

「ガチャ」

部屋に入ったところでマリアナと服にかけていた幻術を解く。

「それでジン様、話とは何です?」

「実はだな、お前にこいつを鍛えてもらいたいんだ。俺がやってもいいが学園があるからな。」

「理由を聞かせてください。」

ミリアには聞く権利があるよな、そりゃ。

「マリアナ、お前が話せ。これ以上、俺がやるのは違う。」

「分かったわ。私の家はもともとエナメル王国の貴族だった。けれど両親は周りの貴族に嵌められて無実の罪で処刑されたの。わたしはまだ成人していなかったからということで犯罪奴隷にされたわ。弟もいたけど、どうなったかはわからない。それでしばらく組織で仕事をしていたところをジンに助けてもらった。…でもその時に私には力がないと痛感したわ。だから後悔しないためにも力が欲しいの。お願いします。どうか私を鍛えてください。」

そう言ってマリアナは頭を下げる。

マリアナは貴族だったのか。でもこれだけ聞いてるといっそハブられる方が断然いいな。奴隷落ちとか死んでも嫌だ。

それにしても復讐したいっていうのは見事に隠してるな。

「ミリア、俺からも頼む。お前にしか頼めないんだ。」

ここで断られたら俺が世話を見るという路線は確定なので俺も必死だ。

「…はぁ~、しょうがないですね。分かりました。」

「本当ですか!!」

「ええ。そのかわり修行は厳しいわよ。」

「はい。分かってます。」

ふう、とりあえず一件落着だな。

「ミリア、マリアナから目を離さないでやってくれ。危険な組織に狙われてるからな。できればこの宿からも去ってほしい。」

「危険な組織とは何ですか?」

「まだよくわかってないんだ。だから十分気を付けてほしい。」

「全く。厄介事を引き受けてしまいましたかね。」

「今更撤回は出来んからな。あと、金も渡しておこう。」

スクエアからお金を取り出す。

「前も出してましたね。それはなんですか?」

「古代文明の物だ。それ以上は知らん。」

十分に金を出し、ミリアに押し付ける。

「これを持って旅に出るもよし、山奥に籠るのもよし。好きにしてくれ。」

「分かりましたよ。」

「じゃあ、そういうことだからな。後は頼んだ。」

「ジン、本当にありがとう。」

「ああ。そういや再会場所は決めてなかったな。ここでいいか?」

「ええ。」

「そんじゃ、俺は帰るわ。授業もあるし。」

「そう。これはお礼よ。」

そう言うとほっぺにキスをしてきた。

「おい!?」

「お礼って言ったじゃない。」

年齢的によろしくないような気もするが当事者が納得しているので問題はないだろう。

「ジン様ももうそういう年頃ですか。」

なんか勝手に自己完結するのはやめてほしい。だがマリアナをミリアに押し付けるのは成功だな。しばらく期間も空くし、いい事尽くめだ。

「それじゃあ、またな。再見。」

「再見ってなんですか?」

ミリアの言葉を無視して上空へと飛び上がり、学園へと帰るのであった。



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