第105話 最終日
昼食前に起きる。
「おはよう。」
「おはようございます。」
「今日もオークションがあるからな、ゆっくり休憩をとるぞ。」
「分かりました。ところでもう帝都には馬車で向かわないということでいいんですよね?」
「ああ、空を飛んでいけばすぐに着くだろ?」
ほんとに魔法って便利だよな。結構離れた距離をあっという間に移動できるもんな。
「それはそうですけど。」
「ならそれでいいじゃないか。それにめったに見れない物も見れてよかっただろ?」
「違法なものも結構ありましたけどね。」
「まあまあ、堅いことは言いっこなしだって。おかげでいい物も買えたしな。」
「はぁ~、しょうがないですね。」
日中は散策をしたり本を読んだりして過ごす。そして夜は闇オークションで魔石や宝石を買い漁る。
そんな日々を過ごしていると、とうとう最終日がやってきた。つまり明日は学園入学ということだ。
これは明日、寝不足確定だな。それでも行かなければいけない時がある。今日がその時だ。
「今日行って大丈夫ですか?」
「いや、むしろ行かないと後悔で不登校になっちまう。それは駄目だろ?」
「はぁ~、そうですね。もうここまで来たら自由にして下さい。」
「絶対にあの鳳凰の羽は俺が競り落としてみせる。」
「そうですか。でもあれは目玉商品のようですからね。競争率は高そうですよ。」
「まぁ、大丈夫だろ。まだ結構金は残ってるし。」
「どんだけ持ってるんですか。結構魔石や宝石を買ってましたよね。しかも変な板に収納してますし。」
「ふふ、まあな。」
「…言う気はないってことですか?」
「そうだな。まぁ、そんな気にするなよ。最終日なんだし、老けるぞ。あっ…」
やべっ、つい口が滑ってしまた。
(マスター、全然学習していませんよね。)
(それより今は対処法を教えてくれ。)
(諦めてください。)
なんてやつだ、主人を助けようとしないなんて。
「ジン様、禁忌の言葉を告げましたね。」
すると、ミリアが頭をぐりぐりしてくる。
「いたい、いたい、ごめんって。」
「少しくらい痛みで体に刻み込んだ方がいいですよ。」
しばらくぐりぐりされ、やっと解放される。
「いたい…」
「もうこれに懲りたら気を付けることですね。」
ミリアの方がアレナより母親らしいよな。
「ああ。それじゃあ行こうぜ。」
「懲りてませんね…」
会場の中に入るとすでに多くの人が集まっていた。
(結構集まっているな。やっぱり鳳凰の羽狙いなのか?)
(誰が競り落とすか興味のある人も来ていると思います。マスターは暴れまわりましたからね。)
(失礼だな。宝石と魔石を買い漁っただけだろ。)
(それが悪目立ちしすぎたんですよ。とっても有名になり始めてますからね。)
個人的にはそこまでやらかしたつもりはないんだけどな。
(まぁ、問題ないか。姿はさらしてないし。)
しばらくは魔石や宝石を買う。日付がかわり、そろそろ終盤に差し掛かる。
「さて皆さん、新年あけましておめでとうございます。のってるかー?」
「「「オオオオオオオォォォー---」」」
皆深夜に加えて最終日でテンションが高い。かくいう俺も例に漏れずちょー高い。
「では皆さんお楽しみの最後のオークションを始めます。泣いても笑ってもこれが最後、楽しんで終わりましょうぅー---。」
「「「オオオォォォー----」」」
「では白金貨100枚から始めます。では始まりです。」
「150」
「200」
「500」
「700」
「1000」
「1500」
次々と値段が吊り上がっていく。それを見てバグった俺はさらにおかしくなる。
「3000だー-----」
「ちょっジ、…ラウド、大丈夫なの。」
「問題なーし。」
(マスター、テンションがおかしいです。正気に戻ってください。)
(何言ってるんだ、友よ。俺は正気だ。)
〈絶対におかしいですね。とうとういかれましたかね、データにない現象です。〉
「3200----」
やるなぁ、ヒキガエル。
「3600ー---」
「4500---」
「8000-----」
「でました、8000枚ですー----。」
「「「オオオォォォー---」」」
ヒキガエルの方を見ると供に止められていた。
「ほかに居ませんねー--。落札、落札ー----。」
俺が歓声に手を突き上げて応えるとますます歓声は大きくなった。
しばらくしてオークションが終わり、金を払って鳳凰の羽を手に入れる。
「すごいな、確かに体の奥から力が湧き上がってくる感じがする。」
「分かったから、もう帰ろう。テンションがおかしくなってる。」
なんというか自覚はあるんだけど意識は宙に浮いているっていう複雑な状態なんだよね。
鳳凰の羽をスクエアにしまい、ミリアと会話しているとヒキガエル君が話しかけてきた。
「グフフフ、完全に参りましたよ。天晴れです。」
「そうか?、あなたも結構目立ってましたよ。」
主に綺麗な奴隷を買い集めてたからな。せいぜい手を嚙まれないことを祈ってやるよ。
「ギュフフ、ではまたお会いしましょう、友よ。」
「イエス、友よ。」
俺たちは握手をがっちりと交わし、別れていく。
(マスター、友達になっちゃいましたね。)
(あいつは笑い方がきもいだけでほんとはいい奴なんだよ。俺にはわかる。)
(違法奴隷を買い漁ってましたけどね。)
(俺の趣味と被らなくてよかったじゃないか。)
(マスターは奴隷とかに興味ないんですか?、男の子ですよね。)
(あるにはあるが、管理がめんどくさいし、違法だから気を付けないといけないのが嫌だ。)
(なるほど。確かにマスターはそうでしたね。)
「帰るわよ、ラウド。」
そういってミリアが俺の手を引っ張っていく。
その後、宿に向かって空を飛んでいると
「ジン様、テンションは大丈夫ですか?、そんな調子じゃ今日の入学式で恥をかきますよ。」
「大丈夫、少し寝れば治ると思うから。」
「それならいいのですが。」
そんな会話を交わしながら部屋に戻って眠りにつく。
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