第99話 奪取
上空から肉眼で見える範囲まで近づき、気配を消す。
(あれがシルバーイーグルか?)
(そうですね。それとあそこで戦っているのが、おそらくラウドですね。)
(周りに人がいないか調べくれ。探知魔法じゃ、バレるだろうからな。)
(了解。…スキャンした限り、彼以外に見当たりません。)
(そうか、なら戦いに決着が着いたら、まずはラウド本人か確かめに行くぞ。)
(分かりました。)
しばらく戦いを観察していると、金髪の男がだんだん優勢になってきた。
へ~、雷魔法か、初めて見た。かなりの速度だな。雷で体を強化しているのか。
通常の身体強化魔法と掛け合わせることはできねぇのかな?
でも俺も雷魔法の適性が欲しかった。とてもかっこいいからなぁ。
(あいつ、なかなかやるな。特にトップスピードが速い。俺のかなり本気の身体強化で互角ってとこだな。)
(なるほど、さすがはS級冒険者ってところですね。)
(ああ、決して油断はできない相手だ。)
そんな会話をしていると、戦いが終わった。
(決着が着いたみたいだな。行くぞ。)
(了解。)
幻術で男性に化け、風魔法で男のもとに向かう。
「失礼、あなたはS級冒険者のラウドか?」
「そうだよ。君は僕のファンかい?」
ああ、サイコだこいつ。恍惚とした笑みを浮かべてる。
「いいや。あなたに聞きたいことがある。闇オークションに出席するのか?」
するとラウドの笑みが凍り付いた。
「どこでそれを知ったんだ。」
ビンゴ。本性を現したな。
ラウドの問いかけを無視し攻撃を仕掛ける。
「黒剣旋風」
黒剣の嵐が吹きすさぶ。
「君ぃ、おかしいんじゃない。いきなり攻撃仕掛けるぅ?」
「お前ほどじゃない。」
どうせ殺すんだから、銀の魔力を使ってもいいか。
ああ、でも招待状をもっているから跡形もなく消滅させたら駄目なのか。
面倒くさいな。これだから中途半端に強い奴は。
「黒銀剣」
二振りの黒剣を作り出す。そして、銀の魔力で体を強化する。すると、髪が銀色に変わる。
ある日、銀の魔力を扱っていたら、髪の一部が銀色に変わった。それを知った俺は全力で髪が全部変わるように努力した。今まであれほど頑張ったことはなかった。
だって、髪が銀髪に変わるんだよ?、みんな頑張るっしょ。
だからこれが俺の現時点での到達点だ。
(マスター、珍しく頑張ってましたからね。)
(ああ、すべては銀髪のため。髪の色が変わるのは全人類の憧れだろ。)
(そんなことはないと思いますけど。)
「な、なんだ、髪の色が変わった?、それにその魔力…。お前何者だ。」
「あの世で、閻魔様にでも聞いてみたらどうだ。」
いるのかは知らんが。
「くそっ、雷鳥。」
巨大な雷で作られた雷の鳥が襲ってくる。
「はっ、効かないな。」
次から次へと襲ってくる雷の魔法を切り捨て、闇と銀の魔力を剣先に集中させる。
すると、俺の構えを見たラウドは
「そ、その構えはまさかジェドの…。」
なんだ、知ってるのか?、どちらにせよ手遅れだが。
「死彗星」
そう、これはかつてジェドが俺に向かって放った技だ。それを俺は練習して身に着けた。
いいものを取り入れるのは当然だからな。
下から上に浮き上がってくる突きを放つ。
「ドンッ」
ラウドの体に大きな穴をあける。
「…ゴホッ、ゴホッ。」
黒剣を消すと口からだけではなく、体に開いた穴からも大量の血が噴き出す。
ヤバい、シールド!!、返り血まで考えてなかった。まさかの凡ミスだな。
それにしても、やっぱり超高速の攻撃は殺した感覚がないな。ゆっくりだったら生々しいんだろうけど。
「…しぶといな。さっさとくたばれ。」
「君ぃ、…どういう…つもりなんだい。」
「お前が知る必要はない。黒剣」
大きく振りかぶり、超高速で首を跳ね飛ばす。そして黒髪に戻る。
「さて、こいつは招待状を持ってるかな。確かめてくれ、パール。」
「はぁ~、了解です。…ポーチに入ってました。」
「そうか、なら仮面を買って帰るぞ。」
その後、白い仮面を二つ買って、屋敷へ帰る。
(どうして仮面を二つも買ったのですか?)
(ふふ、すぐに分かる。)
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