第98話 成りすまし

「ふぁ~あ、よく寝たな。」

(おはようございます、マスター。)

(ああ、おはよう。)

(報告があります。闇オークションの招待状が送られた人物が何人か分かりました。)

(ご苦労。そのなかで一番誰に成りすましやすい?)

(そうですね。ソロのS級冒険者のラウドなんてどうです?)

(ほお、ソロのS級冒険者で闇オークションに参加するものがいるのか。それは都合がいいな。民を裏切ったものを粛清するという大義名分ができるし、ついでに闇オークションに参加できる。)

(闇オークションに参加する時点で同じだと思いますよ。)

(否定できないのがつらいな。それでラウドがどこにいるのかは分かるのか?)

(勿論。こうなると思っていたので調べてあります。現在、ユーミリア公国にあるフォーゲル山でシルバーイーグルの討伐をしています。)

(優秀だな、手際がいい。でもよく居場所までわかったな?)

(ギルドにある冒険者カードを管理している機械を調べたら、すぐに分かりましたよ。)

普通に犯罪じゃねぇか、全然いいけど。

(そうか。じゃあ、今日はフォーゲル山に向かうか。)

(了解。ところで腕輪はつけないんですか?。せっかく買ったのに指輪も全然使ってないじゃないですか?)

(なんか気持ち悪くてさ。それに、縛られてる感じがして嫌なんだ。)

長袖で手首が絞められてるのと同じような感じなんだよな。

あれはめっちゃ気持ち悪い。

(そうですか。なら買わなかったらよかったじゃないですか。)

(いや、効果が分からない古代の魔道具って、なんか心惹かれるだろ?)

(私には分かりません。)

だろうな、人工知能。どうせ非合理的とか思ってんだろ。

(まぁ、お前に同意を求めてるわけじゃねぇし。とりあえず、今日で闇オークションの招待状は入手したいな。)

(それが完了すればあとはどうやって出席するかだけですもんね。)

それが実は一番難しい問題だったりする。

(なあ、招待状を入手したら偽造は可能か?)

(可能ですよ。ただ入場するのは難しいかもしれません。参加者リストがあるでしょうから。)

(それをいじることは出来るか?)

(できますよ。私の手にかかればちょちょいのちょいです。)

前世も合わせて初めてちょちょいのちょいって聞いた気がする。

しかもそれを言ったのが人工知能っていうな。もう死語だと感じさせられる。

(そうか、また今度頼むわ。とりあえず目下の目標は招待状の奪取だ。)

(了解。)

その後、朝の稽古と昼ご飯を済ませる。

(さぁ、いくか。でもラウドは招待状を持っているかな?)

(なくしたら不味いから持ってるんじゃないですか?)

(そうだな。持ってなかったらまた違うやつから奪いに行けばいいか。)

(そうですよ。発想が相変わらずの人でなしですが。)

転移魔法で、フォーゲル山に向かう。

(いつ見ても高い山だな。)

(まぁ、大陸一ですから。)

(ところでシルバーイーグルってどんなモンスターなんだ?)

(シルバーイーグルは風魔法と氷魔法を使います。その討伐推奨ランクはA以上。)

(えっ、結構高くないか?、そんなに強いのか?)

(マスターもよくやっていますが、先端が鋭い氷を風魔法でたくさん飛ばしてくるのです。しかも空高くからですから、並みの冒険者ではどうすることもできません。しかもブリザードを発生させ、相手を弱めてから攻撃することもあるそうです。)

この大陸のモンスターって陰険な奴が多くないか?

それが普通なのか?

(なるほどな。それは確かに大変だな。一方的に攻撃を浴びせられるわけだろ。)

(はい。ですから対処法は限られます。)

(まぁ、俺には関係ないけどな!!)

(はいはい、早く探しに行きましょう。)

(冷たいな~。言われなくても探すって。)

視力を強化していくと、鳥と戦っている人物を見つけた。

(あそこだ、行くぞ。)

(了解。)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る