第111話 ヒキガエルと面会
「…朝か、始まっちまうな。」
(おはようございます。今日は能力測定ですね。)
(疲れるよな、ほんと。適当に手を抜いていい感じにするしかないな。)
(腕の見せ所ですね。)
(ああ、そうだな。そもそも能力測定って何をやるんだろうな?)
(魔法や剣の腕を測るんでしょうね。)
(ああそういう系?、勉強系かと思ってたわ。)
(それもありそうですね。)
その後、フレイと朝食をとり、教室へ行く。
「よう、ラギーナ。いつも通り険しい顔してんな。皺になるぞ。」
少々、煽ってみる。
「ブッ」
フレイが吹き出してしまった。
「お前は私に喧嘩を売ってるんだな。」
「いや、善意からの助言だったんだが。」
「お前は本当に頭がいかれてるんじゃないか?」
口元が引きつりそうになるが何とかこらえる。
こっちは冗談だと思って言ってるんだよ、マジレスすんなよ。
「んなわけないだろ。いたって正常だ。」
「マリーもジンは変わってると思うけどねぇ~。」
「確かに。俺もそう思う。」
「フレイ、裏切ったな。」
その後も談笑していると、担任のバンがやってきた。
「今日は知っての通り能力測定だ。体操服に着替えたら、すぐにグラウンドに集まるように。」
(グラウンドか。やっぱり魔法か、剣っぽいな。)
(そうですね。魔力操作とか威力を見られるんでしょうね。)
(周りに合わせるよう頑張りますか。)
その後、グラウンドに集合すると思った通り、剣と魔法の能力測定があった。
ええと、魔法の評価はD、剣の評価もD。うんうん、いい感じだな。そして総合もDと。ばっちりじゃないか。
ちなみにこの評価は冒険者にランクと対応しているらしい。つまり俺はDランク冒険者ぐらいということになる。
(マスター、さすがですね。ちょうどいいところじゃないですか。)
(まあな。伊達に苦労してないよ。)
(剣の時なんか思わず反応してしまいそうになってましたからね。)
(教師が寸止めしてくれると分かっててもな、つい動きそうになるんだよな。)
そして何とか平日が終わり、休日となる。
(今日はヒキガエルのところに行くか。白い仮面を用意しておいてくれ。)
(分かりました。)
外出届を申請し、帝都に繰り出す。
(ふう、知り合いには見られなかったかな。)
(そうですね。それでその子供の姿で向かうんですか?)
(まさか。ちゃんと幻術で一般人に化けるさ。)
裏路地に入り、幻術を施す。
(これでよしと。あの手紙に地図が載ってたはずだからそれで案内してくれ。)
(分かりました。)
(あと手土産も買わないとな。)
(買うんですか?)
(当たり前だろ、常識だぞ。)
(まさかマスターに常識と言われるなんて。)
しばらく街の景色を楽しみながら途中で見つけた饅頭屋さんで饅頭を買って歩く。
(地図によるとどうやらあそこですね。)
(あそこか、よし手紙を渡してくれ。乗り込んでみる。)
(了解。)
手紙を受け取り門番に話しかける。ついでに声も変えておく。
「失礼、手紙で招待されたものだが。」
「手紙を拝見しても?」
「ああ。これだ。」
「…どうぞ、お入りください。すぐに使用人がやってくると思います。」
「ありがとう。」
(仮面をつけるタイミングを逃したな。)
(まぁ、仮面をしている人間が歩いてたら怪しいですからね。つけなくて正解です。)
確かにそうだ。冒険者の時の感覚がまだ残ってんな。
中に入ると使用人が出てきて案内をしてくれた。
「旦那様は中でお待ちです。どうぞ付いてきてください。」
「分かりました。」
(結構豪華だな。よっぽど悪いことをして金を稼いだんだな。見てみろよ、あの壺を。いかにも高いですって雰囲気じゃないか。)
(そうですね。もし壊したら一生かけても弁償しきれませんね。)
(そんなもん廊下に置くなよ。ビビるわ。)
(まぁ、客ですからどーんと構えておけばいいんですよ。)
(いや、壊したら普通に弁償だろ。)
パールとそんな会話をしていると一室に通された。
「ギュフフ、よく来てくださいました。まぁ、まずは腰を下ろしてください。」
「ああ、それは助かる。招待してくれて感謝するよ。」
「グフッ、こちらこそ応じてもらえてよかったです。」
「あ、これは手土産だ。ぜひ食べてみてくれ。」
「ギュフフ、これはご丁寧にどうも。お返しに面白い情報があるのですよ。グフッ、確かあなたは宝石に興味がありましたよね。」
「ああ。」
「実は昨年マルシア王国で珍しい宝石が発掘されたそうです。きれいにカットされたダイヤの中に紅い金属が仕込まれており、光の当たり具合によっては宝石全体が真っ赤になるのだとか。」
おいおい、それはあの宝石の事なんじゃないか。ぜってぇ、真偽がどうあれ奪ってやる。
「ほう、それは耳寄りな情報だ。それはどこにあるんだ?」
そこで一段とヒキガエルの笑みが深まった。
「マルシア王室に献上されたそうです。ですからおそらく宝物庫かと。」
「なるほど。どうして俺に教えてくれるんだ?」
「ギュフフ、あなたを敵に回したくない。それだけです。フォーミリアのようにはなりたくないですから。」
こいつ、気づいてやがるな。その上で仲良くしたいと、いい性格だな。
「何を言ってるがわからないが、友好の証として受け取っておこう。」
「グフッ、そういってもらえると助かります。」
その後、しばらく談笑してから帰ることとなった。
その帰り道で、
(あいつ、フォーミリアの混乱に俺が絡んでると気づいてやがったな。)
(あれだけ闇オークションで買い漁れば気づいてもおかしくありません。)
(まぁ、気にするほどの事でもないか。顔はバレてないしな。)
(そうですね。)
その後、寮へと戻るのだった。
「グフッ、お前から見て彼はどう見えた?」
「とんでもない魔力量ですね。おそらくA級冒険者以上でしょう。」
「ギュフッ、面白い人と縁を結べたか。グフッ、何としてでも良好な関係を維持しなければ。」
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