第67話 入浴
(パール、温泉が湧いている所を探してくれ。)
(了解です。)
しばらく待っていると報告があった。
(発見しましたが、モンスターが浸かっていますね。どうします?)
(どんなモンスターだ?)
(黒い巨大な狼ですね。)
(それってさあ、フェンリルとかじゃないよね?)
(違うんじゃないですか、フェンリルは白銀の毛らしいですから。)
(じゃあ、変異型っていう可能性は?)
(あるかもしれません。その可能性は十分に考えられます。そもそもフェンリルの具体的な姿は本にも記載されてませんから、判別できません。)
(…ほかに湧いている所はないのか?)
(あるにはありますけど高温ですよ。)
(そこでいいから案内してくれ、その狼から離れたところで頼む。)
(了解です。付いてきてください。)
目を銀の魔力で強化すると、姿を完璧に隠しているパールがはっきりと見える。
しかもなんか、最近その状態で人の姿を見たら魂らしきものが胸の中心あたりにあるような気がするんだよなぁ、なんなんだろ、あれは。
魂とか言われたら納得できるんだけどな。俺以外に見える人はいなそうだからな。
そんなことを考えていると温泉に着いた。
「おぉ、ここが温泉か。温度はどれくらいかな。」
お湯に手を入れる。
「熱っ、氷魔法で冷やすしかないな。」
「氷魔法で冷やすんですか?」
「ああ、そのための氷魔法だろ。」
俺は氷魔法で適切な温度にしていく。
「でも、氷魔法で調節するのなら、火魔法と水魔法でお湯を作って入ればいいんじゃないですか?」
「わかってないな~、ほら、なんか体にいい成分が出てるかもしれないだろ。…うーん、これくらいの湯加減でいいかな。」
服を脱ぎ、温泉に浸かる。
「ああ~、身体にしみるぅ~。最高だな。まだ10年しか生きてないのにいろいろあったからなぁ。」
まったり生きるはずだったのに、学園は百歩譲るとしてもリュウとの生存競争に巻き込まれるなんてやってられない。
あと140年は生きるつもりなのに、これからの人生恐ろしいな。
しかもエルバドス領にずっといるわけにもいかないから定住地を探していく必要があるし。
ああ、あと金もいるよなぁ。ここ一年、冒険者活動ができてないからな、稼ぐ手段も見つけないとな。
盗賊狩りが楽でいいような気がする。
これからのことを考えつつ、温度の調節をしながら温泉を楽しむ。
「平和だなぁ~。」
「平和ですね。」
ああ、ずっとこんな日々が続けばいいのに。
そんなことを思いながら、温泉を楽しんでいると遠くで雷が鳴っているのが聞こえてきた。
「パール、雨は降るのか?、観測装置があるんだろ。」
「そうですね、しばらくは天気が大荒れになりますが、あと1時間は大丈夫ですよ。」
「そうか、まぁそんな長く浸かる気はないけどな。」
20分ほど経ち、帰ることを決めた。
「そろそろ帰るか、のぼせてきたしな。家に帰って昼寝したらいい時間だろ。」
「そうですね。」
「よし、じゃあ、避難船で帰るか。雨に降られても嫌だしな。」
「了解です。」
避難船に乗って屋敷へ帰っている途中、気になったことをパールに尋ねる。
「そういやさ、黒い狼の映像はあるか?」
「ありますよ、ご覧になられますか?」
「ああ、見せてくれ。」
おいおい、これは絶対やばい奴じゃないか。
雰囲気ありすぎだろ、避けて正解だったわ。
そもそも狼のサイズじゃない。10メートルは軽くあるぞ。
「これは危なかったな。絶対、強い奴だろ。フェンリルの変異型で確定だな。それにしてもこいつ、何で温泉に浸かってるんだろうな?、怪我でもしたのかな?」
「拡大してみましょう、…これは何者かによって傷がつけられてますね。」
最悪じゃねぇか、こいつに傷をつけたやつがいるってことだろ。
「大陸西部は呪われてるな、強いモンスターしかいないのか?」
「まあ、結構距離は離れてますが、大森林がありますからね。そこから流れてきたのかもしれません。」
「はぁ~、これからは大陸西部じゃなくて東部にいくか。」
「東部にも名所はありますもんね。」
「そりゃそうだろ、詳しくは知らないけど。」
そんな会話をしていると屋敷につき、昼寝をするのだった。
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