第68話 東へ
昼寝を終えると夜ご飯に呼ばれて、適当に両親と会話しながら腹を満たす。
マルスがいなくなったから、俺一人で両親の相手をしないといけないのはきつい。
いつもはマルスが相手をしていたからな。
部屋に戻るとパールと話す。
(それにしても、温泉気持ちよかったなぁ。当分行けないのが残念だ。)
(夏で暑いのに気持ちいいのですか?)
(ああ。お前は入れないからわからないと思うけどな、心も洗われるような気持ちがするんだ。)
(それは大切ですね。マスターの心は汚れ切ってますから。)
(失礼すぎんだろ。それに俺の心は世界も驚くほどきれいだ。)
(自分で言ってて恥ずかしくないんですか?)
(ちっとも恥ずかしくない。事実を述べているだけだからな。)
(はぁ~、聞いてるこっちが恥ずかしくなりますね。それで、明日はいつも通り魔法の練習でもしに行きますか?)
(そうだなぁ、正直、魔法の練習も飽きてきたんだよなぁ。だんだん新しい魔法も思いつかなくなってきたし。なんか、東の方に有名な場所とかってない?)
(そうですね。トランテ王国の東側の隣国にはリゾート地があります。きれいな海で泳がれてはいかがです、今は夏ですから気持ちいいと思いますよ。)
(モンスターは大丈夫か?)
(大丈夫ですよ、リゾート地なだけあって領主も力を入れているようですから。)
(よし、明日はバカンスだ。)
ああ、明日が楽しみだ。
それにしても北部が暖かくて、南部が寒いというのは、なんか感覚が狂うな。
いっそ大陸南部に行って、スノボでもするのもいいかもな。
まあ、冬はまだまだ先なんだけれど。
翌朝、俺は朝の稽古を終わらし、昼食も食べ終わる。
(いざゆかん、リゾート地へ。)
(いつになく燃えてますね、マスター。)
(あったりめぇよ、やっと楽しめる期間に入ったんだからな。)
(いろいろありましたからね。)
(まったくだ。もう死ぬまで遊んでも罰は当たらねぇよ。)
(それはさすがに無理があると思いますが。)
(ないない、俺が黒と言ったら黒なの。さぁ、いくぞ。)
前にトランテ王国の首都まで行ったことがあるのでそこまで上空を転移していく。
(ここから先は知らないからな、お前に案内を任せてもいいか?)
(はい。付いてきてください。)
風魔法でパールの後を追っていくと、そこそこ大きい島が見えてきた。
(あれがそうか?)
(はい、そうなりますね。)
ほぉ~、結構きれいだな。地球で言うところの南の島ってやつか。
これはもう楽しむしかないな。
だが悲しいかな、俺はまだ10歳。ナンパなんてできない。
幻術でごまかしたところで、虚しくなるだけ。
今日のところは大人しく、海を楽しむか。
(よし、まずは水着を買わないとな。)
(そうですね。)
無事に人気のいないところに転移し、幻術で一般人に化ける。
そして売店へ向かう。
あっ、一般人に化けてるのに子供の水着を買ったらただの変態じゃん。
どうしようかな。…盗むか。
リュウの討伐に貢献したからな、正当な報酬だな。
(パール、水着を盗んで来い。バレないようにな。)
(えっ、盗むんですか?、ふつうに買えばいいじゃないですか。)
(お前は馬鹿か。大人が子供の水着買ってたら変態だろ。)
(そんなことはないんじゃないですか、子供に水着を買ってあげるケースだってありますし。)
(…言われてみればそうだな。)
(そもそも、そういう発想に行きつく方が変態ですよ。それに買った後で幻術の姿を変えればいいじゃないですか。)
なるほど、さすが人工知能。
俺にはなかった発想だ。
(確かにそうですね、私が間違ってました。しかーし、私は変態ではない。ただの少年だ。)
(少年にしては可愛げがなさすぎますね。)
(うっせーよ。)
その後、無事に水着を買い、建物の中で着替える。
さすがに浮き輪とかはないんだな。
まぁ、水着があるだけ上々か。
俺は子供の姿のまま、海へと向かうのだった。
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