第145話 週初めではない

はぁ、明日からまた平日が始まってしまうのか。始まりが嫌なのは前世と変わらないな。

(マスター、報告があります。)

(もう眠りたいんだが?)

(まぁ、聞いてください。さきほど帝国で行われていた会議が終わりました。)

大変だなぁ。お偉いさんも楽じゃない。

(それで?)

(どうやらフォーミリア王国の首都を奪還したとの情報が報告され、その対応について議論が交わされていました。結論は王都までを併合、ただしトランテ・エナメル連合軍とは戦わないというものです。)

(そんなことが可能なのか?。トランテ王国とエナメル王国は王都の占領を認めるか?)

(現時点では認めるでしょう。帝国と戦うには国力がまだ足りていませんから。おそらくユーミリア公国へ先に侵略し、資源を得るのが現実的です。)

(なるほどな…。)

(それと近衛騎士団長と暗部のトップの処刑も決定しました。決行は明日の夜です。)

どうすっかな、助けて手駒にしたいとは思うがバレたら面倒だしなぁ。何より授業があるし。

あれこれ悩んでいるとさらにパールが情報を出してくる。

(それとローナの父、ガルドが財務大臣の職を辞すことを皇帝に申し出ました。そのため、権力闘争がさらに激化すると予測されます。)

(はぁ!?、あの野郎、俺に相談なく辞めやがったのか?)

(そうみたいですね。それと闇オークションも廃止の方向で動いているようです。)

(あいつ…、まだ闇オークションは百歩譲って認めよう。だが、財務大臣を勝手にやめるのは無しだろ。)

(ですが今更やめることをやめるのは無理ですよ。すでに各勢力も動き出しているという情報が入ってきてますから。もし留まろうとすれば貴族社会からつまはじきにされるでしょう。)

(…つまり無理と?)

(はい。)

はい。じゃねぇんだよ。しかしこれじゃあ帝国に政治力が発揮できないじゃないか。また誰かとコネを作った方がいいかもな。

(疲れるよなぁ。ほんと、生きるって大変だ。)

(マスターは楽しかしてないじゃないですか。)

(そんなことはない。授業とか真面目に受けてるだろ。)

(よく言いますね。明らか魔力操作をしてるじゃないですか、私は知ってるんですからね。)

(いやだってなぁ…、授業おもんねぇし。)

まぁ、面白い授業が存在してたら心底驚くけどな。

(テストの結果が悪くても知りませんからね。私は手伝いませんよ。)

なんて薄情な奴だ。普通、助けるもんだろ。

(まぁ、何とかなるだろ。進級は出来るだろうし。俺は男爵家とはいえ、貴族の子供だからな。)

(…その発想が出ること自体、マスターの性根がねじ曲がってることの証明ですね。)

(失礼な!!)

その後、いろいろ話していると眠気に襲われたので眠りにつく。

〈あと少しで鳳凰の羽の解析が終わりますね。やはり火のない所に煙は立たぬというべきでしょうか。噂は完全に間違っているというわけではなさそうです。〉


ー-??ー-

「ガルド殿が財務大臣を辞職すると仰られたようです。」

「なんだと!?、それは事実か?」

「はい。間違いございません。」

「どうして急に辞めるとか言ったんだろうな?、理由は分かるか?」

「どうやら奥方が治り、そばに居たいというのが理由みたいですな。」

「なるほどな、事実だったというわけか。…、忙しくなるな。ここらで大臣職は押さえておきたい。」

「誰か人材はいるのですかな?」

「それが問題なんだよな。俺って人望がないらしい。」

「自業自得ですな。」

「まぁ、こればっかりは実績を積んで信頼を得るしかないな。」

「それとシュバルツ殿下がフォーミリア王国の首都を奪取したようです。」

「ふん。腐っても中央軍の総司令ということだ。でもこのままいけば戦争は起きるだろうな。」

「陛下は戦争を起こすつもりはないようですが?」

「まあ、父上の性格を考えればそうだろうな。だが間違いなく起こる。トランテ王国は長年帝国と敵対してきた。だが国力に差がありすぎてまともに組み合えない。だからこそ同盟国を求めたってわけだ。そしてエナメル王国と共にフォーミリア王国に侵攻したわけだが、…結果はどうだ?、帝国の妨害を食らい、首都を抑えることは出来なかった。今頃、怒り心頭だろう。おそらく帝国との戦いに備えてユーミリア公国を先に侵略するだろうな。」

「憎しみは根深いと言うわけですか。」

「仕方がない。それが戦争というものだ。」

〈それに帝国にはいつも負けてるからな、骨の髄まで憎いだろうな。ま、それすら利用するんだが。〉


ー-??ー-

「兄さん、どうやら財務大臣が辞めるらしいよ。」

「ほーう、そいつは好都合だ。問題は誰を押し込むかだな。…ゼル、お前がやるか?」

「嫌だよ。お金チョロまかせないだろうし。それにたぶん僕たちは父上に嫌われてるから選ばれないだろうね。」

「ちっ、なら送り込むやつを考えないとな。」

「そうだね。でも辞めるのは一か月後らしいからね、時間はまだあるよ。」

「他の奴らも動くだろうからな、ここらへんで一人落としとくか。」

「確かにそろそろ一人消えてもいい頃合いだよね。」

「ああ゛、それにしても戦争でも起きねぇかな。武功が一番わかりやすいからな。」

「いずれ起きるよ。それまでは政治で粘るしかないよ。」

「まぁ、それもおもしれえからいいけど。」

兄弟が候補者一人を蹴落とそうと動き始める。


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