第146話 始まった。

誤字報告ありがとうございます。

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今日からまた憂鬱な一週間が始まってしまう。どうしてこう嫌なんだろうか?

朝の授業を受けているとパールから報告を受ける。

(速報です。ジルギアス王国が東部諸国連合の二カ国目に侵攻しました。)

(なるほど、お前の予測したとおりだな。それで戦況は?)

(東部諸国連合が優勢です。東部諸国連合も本気ですから。)

(むしろ一カ国目の時から全力で対処すべきだったんだ。)

(私もそう思います。)

(どちらが勝つと思う?)

(東部諸国連合でしょう。しかし本国からの支援や、どこかの国と同盟を結びでもしたら一気に戦況は変わり、下手すると東部諸国連合丸々飲み込まれるということも考えられます。)

(はあ、荒れるねぇ。ほんと勘弁してほしいよ。)

(いつの世も戦いは無くなりませんね。)


その後、何とか初日を終えた。

(パール、どこで近衛騎士団長たちが処刑されるか分かるか?)

(はい。おそらく帝城にある処刑場でしょう。皇族の暗殺を遂行されてしまったということで現在は地下牢に拘束されてますから。)

(いつ接触すればいいと思う?)

(そうですね。まずは処刑前に従う意志があるかを聞いたほうがいいのではないでしょうか。)

一理あるな。俺に従わない奴を助けてもしょうがない。

(分かった、そうする。バルア達に見つからないようにしないといけないな。)

毎晩戦うのって結構しんどいんだよな。筋トレを欠かさずにやるようなもんだからな。

(見つかったら戦いを申し込まれますからね。)

(本当に勘弁してほしいよ。さて、じゃあ行くか。)

(了解。)

トイレに行くと言ってうまく誤魔化してこっそりと帝城へ向かう。

(じゃあ地下牢まで案内を頼む。)

(分かりました。)

幻術を身に纏い、周囲に溶け込む。カメレオンの超高度版だ。空中を飛んでしているとパールが話しかけてくる。

(昨日、闘技場で王者アレックスを見たじゃないですか。)

(ああ、見たな。それがどうした?)

あいつは強い。だが見た感じ、銀の魔力を使わなくても勝てるはずだ。

(そのアレックスが闘技場からいなくなったようなんです。かなり噂になっています。)

理由はなんとなく分かる。

(おそらく秘剣に興味を持ったんだろう。あの手のタイプは力をひたすら追求しているはずだから。)

でないと剣闘士なんて危ない仕事をやるはずがない、…というのは偏見だろうか?

(マスターに似てますね。)

こいつはやはりポンコツだ。

(いいや、全く違う。俺が強さを求めるのは誰の指図も受けずに自由に生きたいからだ。で、実際には分からないが、あいつの場合はただ純粋に強さを追い求めてるだけだと思う。)

要するに手段と目的が違うという話だ。

(…なるほど、理解出来ました。)

〈マスターの根幹は『自由』ですか。なるほどそう考えればいろいろと合点がいきます。〉

あいつもおそらく秘剣の使い手を探しに行ったんだろうな。俺も使えるようになりたい。

(…さて到着したわけだが、とりあえず銀の魔力で確認するか、お前も確認してくれ。)

違う囚人達の元に転移したくないしな。

(了解です。……発見しました。視えますか?、あの騎士がたくさんいる所です。)

(…二箇所あるよな?)

(はい、別々に監視されているようです。シールドも張られてますけど、どうするんですか?)

…どうしよう。シールドまでは考えてなかった。

(あのシールドの効果は分かるか?)

(すぐに調べます。………判明しました。どうやら侵入者の存在と位置を伝えるようです。)

(侵入者を防ぐわけじゃないんだ。)

すげぇ意味なさそう。

(でもかなり厄介ですよ。広範囲に展開されてますし、警備の者も20人はいます。)

…もう何かどうでもよくなってきた。俺はこんな所で何をしてるんだ?

絶対に考えてはいけない問いまで浮かんでくる。

(…ター、マスター、聞いてますか?)

(…おう。)

(どうされるんです?)

(…もういいかな。面倒くさすぎる。)

(えっ、まさかのここまで来て何もしないってことですか?)

(その通り。よくよく考えれば別に要らないかなって…。ほら、大して欲しくもないのに値引きされてたら買っちゃうやつ。)

特に俺の場合、昔から衝動買いが多かった。

(…まぁ、それがいいかもしれませんね。マスターを危険視して裏切る可能性が高いですから。)

(まさに社畜だな。)

言われてみると腐っても近衛騎士団長と暗部のトップだ。おそらく骨の髄まで皇帝に忠誠を誓っているだろう。それに確かミリアが次代の近衛騎士団長を育成したとも言ってたからな。あいつの部下も頑固だろ、捕まってる奴がそうとは分からないが。

(では撤退ということでよろしいですか?)

(ああ。)

その後、寮に戻ってバルア達と戦い、やっと一日を終えた。

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