第64話 帰宅
あれから数日が経ち、だらだら過ごしているとマルスたちが帰ってきた。
軽く挨拶を交わし、朝食が運ばれてくるまで待つ。
「おかえりなさい、帝都はどうでしたか。」
俺が尋ねると、
「正直、リュウの騒ぎでパーティを楽しむどころじゃなかったよ。」
という返事が父のアレクから返ってきた。
「ということはあったことにはあったんですね。」
「そうだね。まだ、帝国に来てなかったころだから。」
それを聞いてそっとマルスの様子をうかがうと不機嫌な顔をしていた。
あぁ、これはミスったのかな?
触れるのはやめとくか、藪蛇になっても困るからな。
「もう少し、ほかの子たちと交流してほしかったのだけれどね。マルスはシャイなところがあるから。」
アレナァァー---。そういうのほんと子供の教育によくないと思う。
ほら、マルスの顔が歪んでんじゃん。
マルスも気にしてるんだから、もうすこしオブラートに包まないと。
「それよりも帝国の被害が気になるね。西部が特に大ダメージだったようだからね。」
それより、で流しよった。さすが貴族の当主。
その後もいろいろと会話をしていくが、マルスはずっと仏頂面だった。
うわー、だいぶ引きずってんな。もういっそ開き直って、ボッチでもいいとは思わないのかな?
まぁ、俺の場合はパールがいるから孤立しても別にいいんだけれども。
頑張れ、マルス。どうにかできるのはお前だけだ。
そんな無責任なことを考えながら、部屋に戻る。
(なぁ、パール、マルスの顔面白かったな。ずっと仏頂面だったぞ。今回のパーティでうまくいかなかったんだろうな。)
(おそらくそうでしょう。あれでは学園でも苦労するでしょうね。まぁ、マスターも気を付けないと孤立してしまいますよ。)
(問題ないと言いたいところだが、友達ができるかはわからん。そもそも貴族の間で友情が成立するのかも疑問だし。)
貴族の中で序列がある時点で、友情とか無理だと思う。
下の奴が頑張って上の奴に合わせているのを、上の奴が友達とか一方的に思ってる関係なら成立しそうだが。
(まぁ、頑張ってください。私には関係ないんで。)
(冷たい奴だな、さすがは血が通ってないだけはある。)
(血が何か関係あるんですか?)
(まぁな。それより各国の情勢はどうだ。)
(今のところ表立って動く国はありませんがクレセリア皇国では軍に動きがみられます。今は様子見の段階でしょうが、動くのは時間の問題です。トランテ王国、フォーミリア王国に動きはありません。それと帝国とギルドでは紅と銀の炎を放った存在を探しているようです。)
(ゲェ、最悪じゃねぇか。派手にやりすぎたな。それでもギルドが正体を知らないということはジェドは言ってないってことだな。)
(そうですね、まだ油断はできませんが。それにあの白髪の女性からは逃げ帰ってますからね。最悪の方法で。)
(そうだった、すっかり忘れてた。でもあいつは俺の顔を見てないからな、問題ない。けど、しばらくは冒険者活動はお預けだな。はぁ~、結構楽しかったんだが。)
(それにあの黒龍も気になることを言ってましたもんね。影のモノとか。)
(…絶対やばいやつだろ。知りたくもないわ。)
影のモノか。単体なのか複数なのかすらわからない。
でも大陸間規模に介入できるということは恐ろしく力を持っているんだろうな。
どうか俺が生きている間に関わることがありませんように。
心から祈る。それにしてもなんか心に引っ掛かってるな。
(あっ、聖剣忘れてきたかもしれない!!)
(大丈夫です。私がちゃんと回収しておきました。)
(さっすがー。助かるぜ。これからも後始末よろしく。)
(簡単に処理できる範囲でお願いしますよ。)
(わかってるよ。でもしばらくは銀の魔力の練習だな。あれを使いこなせたらSS級冒険者よりも強くなれる。)
(そうですね。)
(よくよく考えたらさ、あの勇者の話でも金の魔力って登場してたよな?、あれと関係あるかもな。)
(どうでしょうか、さすがに英雄譚ですからね、真偽は不明です。)
(だよなぁ、まぁ、別にいいか。過去よりも今の方が大事だしな。まぁ、のんびりいこう。)
俺はパールと会話を交わし、銀の魔力を操る練習をするのだった。
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