第71話 奇遇
だんだん気温が上昇してきたので、今年もリゾート地へ行く。
昼食も食べ終わり、転移で向かう。
(ついにこの季節がやってきたな。再び遊ぶぞ!!、イエーイ。)
(マスターにしてはテンションが高いですね。)
(まぁな、今年初だからな。そりゃテンションも上がるさ。)
さぁて、今年も水着を買うか。
身長も大きくなってるしな。
試しに去年の水着を穿いたらぱつぱつすぎて自分でも笑ったからな。
水着を買い、建物の中で着替えたところで海に向かう。
よしっ、恒例の準備体操だ。
無事に終えたところで子供の姿のまま海に飛び込む。
「バシャッ、バシャッ」
最高だな、一気に体が冷えていくこの感じ。
たまんねぇ。
しばらくはしゃいで泳ぎ、疲れたところで仰向けで浮かぶ。
(いい天気だなぁ。)
(そうですね。それに結構人もいますね。)
(どうせ富裕層ばっかりなんだろ。)
(まぁ、贅沢なことですからね。特に漁でもするわけでもないのに海で泳ぐというのは。)
(そうだよな。ほんとう、貴族の家に生まれてよかった。夏の農作業なんて絶対やりたくない。)
(マスターは体験した方がいいと思いますけどね。その腐りきった性根も少しはましになるんじゃないですか?)
(絶対にお断りだ。むしろ、もっと捻じ曲がるわ。)
(ねじ曲がっている自覚はあるようでよかったです。)
(…。ほ~んの少しだけな。)
そんな会話をしつつ、飲み物でも買いに行こうと陸に上がる。
すると
「しつこいわね。」
そう聞こえてきた後、痛そうな音が聞こえてきた。
「バシン」
「いってー。」
そういいながらおっさんが頬を抑えて悶えていた。
ハハッ、ナンパみすったのか。おもしれぇ。
良い音してたからな、あれは痛いだろうなぁ。
「くっそー、また駄目だったか。行けると思ったんだが。」
どこでそう思ったのか知りたいな。
そんなことを思っていると、おっさんがこちらを向いて目が合った。
「……………。」
ジェ、ジェドー------。どうしてこいつがこんなところにいるんだ!?
「おおっ、お前、あの時の小僧。急にいなくなりやがって、修行をつけてやると言ってたのに。」
俺は何も言わず、
「転移」
逃げた。
全力で屋敷の方向と違う方向へ逃げる。
「転移、転移、転移、・・・・」
やばいやばいやばい、ここで捕まったら俺の自由な生活は終わりを告げる。
絶対に逃げ切って見せる。
「はぁ、はぁ、はぁ、ここまで逃げれば大丈夫だろ。」
「何が大丈夫だって?」
「ジェド!!、どこから出てきた?」
「いや~、どうせ逃げると思ってたからな。お前の影に潜らせてもらった。しかし、お前は見たことない魔法を使うな。それは瞬間移動か?」
影に潜っただと、俺にもできないぞ、そんな真似。
くそったれ、これだからSS級冒険者は嫌なんだ。
「そうだ。それで俺についてきてどういうつもりだ?」
「いやだから、修行つけてやるって約束しただろ。」
「してない。それにしてたところで修業はお断りだ。自分でやる方がいい。」
「そんなこと言っていいのか?、ギルドには黙っててやったのに。」
「…何をだ?」
「あの銀と紅の炎を放ったのはお前だろ。俺が報告すれば帝国にも伝わるぞ?」
こいつ、俺の素性がわかってんのか?
「どうして帝国が出て来るんだ?」
「そりゃ、お前が帝国に関係あるやつだからさ。」
「…どうしてそう思う?」
「帝国に黒龍が出たとき、真っ先に向かっただろ。その前では俺に討伐をさせてたし、瞬間移動も見せなかった。それなのに、一目散に帝国に向かったということはそういうことだろ。」
鋭いな、このおっさん。
それだけの情報でここまでたどり着くか。
「それで、俺に修行をつけるというのは本気か?、できれば遊びまわりたいんだが。」
「本気だ。俺には闇魔法を伝える相手がいないからな。それに一人くらいには伝えておきてぇ。」
そんな理由で俺を選ばないでほしい。
「いいのか俺で。言っとくが俺は民のためにとか一ミリも思ってないぞ。」
「…どういうことだ、お前は冒険者じゃなかったのか?」
「冒険者だぞ、最近は活動してないが。」
「お前は黒龍を倒すほどの力を持っている。大きな力には重い責任が伴う。お前はその力を何のために使う?」
「決まってる、俺だけのために。」
そもそも俺は一回死んでるからな。何にも遠慮しねぇよ。
失うものはなんもねぇ。
「…たとえそれがほかの大勢の人間にとって害でしかないとしてもか?」
「当然だ。」
「お前のせいでたくさんの人が死ぬかもしれないぞ。」
「悲しいな。だがそれだけだ。」
「…いかれてやがる。なら黒龍をどうして倒した?、SS級冒険者に任せりゃ良かっただろ。」
「そうだな、あとで気づいて反省したよ。」
「…なるほどな。俺が間違ってた。しっかり、俺が教育してやるよ。覚悟しろ。」
「おいおい、そりゃないぜ。あんたは俺の事をいかれてると言ったが俺からすればあんたの方がいかれてる。修行つけてやるとか言ってて、自分の思ってた人物像と俺が異なっていたら教育してやるとか、何様のつもりだよ。病院にでも行ったらどうだ?」
随分上からの物言いだな、おい。
やっぱり自分のほうが強いと思ってるんだろうな。
だが、それは傲慢にすぎる。
「お前が大きな力を持っていなければ、見逃してもよかった。だが、お前は強い。SS級冒険者ぐらいに。大きすぎる力は適切に使わないと、大陸がめちゃくちゃになる。」
「そうだな。だが、だからと言って縛られるのはごめんだ。俺は生きたいように生きる。それを邪魔するものは排除する。それに一つ勘違いしているぞ、俺はもうSS級冒険者より強い。」
そう言って俺はジェドに魔法を放つ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます