第149話 人類の最高到達点

朝食を食べ終え、フレイ達と別れる。平日はローナが絡んでくるが、週末には実家に帰るのでありがたい。そして俺はこれからの予定を考える。

外で全裸はなぁ…。そうだ、露天温泉に行けばいいんじゃね?。前も一回行ったし、それなら裸になっても不自然ではない。そうと決まれば…

(おい、パール!!)

(やっと決心しましたか?)

(ああ。前みたいに外の温泉に浸かりに行って、温泉から出た後にマッサージという名目でやればいいと思うんだ。)

我ながら実に冴えてる。

(そうですか。マスターがそれでいいというなら構いません。今から向かわれますか?)

(ああ。夕食までには帰りたいからな。)

(了解。ちなみに行き先は前回と同じエルファイヤ火山にしますか?)

(…前回、黒い狼がいたよな?)

(はい、いましたね。違うところになされますか?)

(他に候補はあるのか?)

(そうですね…、候補としてはユーミリア公国、マルシア王国、東部諸国連合の盟主レザリア王国が挙げられます。しかしレザレア王国はジルギアス王国と交戦中なので避けるのが無難だと思われます。どうなされますか?)

どうしよう。レザレア王国はやめとくとして、ユーミリア公国かマルシア王国か。うーん、悩ましい。

(どうすればいいと思う?)

(人が最も少ないのはエルファイヤ火山です。)

(エルファイヤ火山にしよう。)

すぐ即答した。

その後、外出届を出してエルファイヤ火山に向かう。


ーーエルファイヤ火山ーー

「やっと着いた。でも周りに人がいなくてよかった。」

「まぁ、この火山はいつ噴火してもおかしくないですからね。」

「…あのさぁ、そういう情報は早めに共有しようって言ってるじゃん。」

「割と常識ですからマスターも知ってると思ってました。」

「…そうですかい。まぁ、いい。とりあえずモンスターが来る前に早くしよう。一応避難船も出しといてくれ。魔力が切れたら不味いからな。」

「了解。」

その後、風呂に浸かり、いい感じになったところでパールに羽で撫でてもらう。


ーー十分後ーー

最初身体を撫でられているときはゾクゾクしたが、途中から身体が熱くなり、それどころではなくなった。

「マスター、もう活性化しています。魔力を一気に消費してください。」

「分かった。」

俺は被害が出ないであろう風魔法を上空に向かって放つ。

「ハァハァ、…もっとだ。もっと…」

確かに普段使われてない魔力が使われている気がする。

「いいですよ。もう魔法が撃てないという所まで頑張って下さい。」

その後、限界まで魔力を使うと意識していないにも関わらす、魔力が銀色に変わり始める。

「グッ、ハァハァ、これは…、どういうことだ?」

「おそらく身体が異常を検知し、銀の魔力で補おうとしているのでしょう。銀の魔力の本質は限界を超えること、つまりもう限界を超えているという事です。」

「ハァ、クッ…、続けたほうが…いいのか?」

「はい。」

畜生、身体が痛い。だがその分すぐに回復しているのも分かる。

そのうち段々意識が朦朧とし始め、しばらく維持し続けるとその時は訪れた。

《ヒュンヒュン》

突如世界を敵とみなすかのような膨大な銀の魔力が放出され、避難船も煽りを受ける。そして…

「バサッバサッ」

〈素晴らしい!!。これは、この力は、個人が到達して良いものではありません。〉

「あああああっ!?、ハァハァ、何だ?。髪が伸びてる?」

俺は突如意識が戻り、今までと違う感じになっていることに気づき、魔法を止める。

「マスター。どうです?、力が漲ってくるのではないですか?」

「ふぅーふぅー、言われてみると、ハァ、確かにそうだな。物凄い勢いで魔力が回復している気がする。」

それに今までよりも格段に強くなった。その自信は大いにある。

「おそらくそれは身体が完全に適応したからでしょう。」

「ふーん。ハァハァ、じゃあ、もう魔法を放たなくていいよな?」

「はい。それにしても素晴らしいですね。おそらく今のマスターは過去、そして未来においても現れない力の持ち主でしょうね。」

「そうか。いや、俺もそう思う。全能感を抑えるので必死だからな。解放したらどうなるか分からない。」

「大陸の一つくらい壊れるでしょうね。あまり使わないことを推奨します。それと改めておめでとうございます。マスターは人類の最高到達点に達しました。まず人類にそれ以上の力は存在しません。」

「…つまりこの先俺は強くなれないと?」

この若さで頭打ちは辛いな。先が無いようなもんじゃないか。

「強さの方向を変えればそんなことはありません。火力から技術に切り替えればいいのです。それと先ほども言いましたがその銀の魔力の本質は限界を超えること、つまり対戦相手がマスターよりも強ければさらに火力が上がる可能性も僅かながら存在します。」

「…そうか。今はそれでいい。」

俺より強いやつがいないことに越したことはない。

「しっかし、随分髪が伸びたな。手入れするのが大変だぞ。」

今の俺の髪は銀色で腰ぐらいまであるストレートヘアーになっていた。

「問題ありません。銀の魔力を全力で使った場合のみ、髪は伸びるでしょうから。試しに元に戻してみてください。」

「シュルシュル」

「おお、本当だ。すげぇな。それにしても…酷い有様だな。」

俺が莫大な魔力を放ったせいで辺り一面吹き飛んでいた。

「早く帰還されたほうがいいと思います。おそらく今の音を聞きつけて冒険者ギルドや領主が調査に来るでしょうから。」

「分かった。ならすぐに帰ろう。」

この時、俺は気づいていなかった。覚醒した時に放った魔力の大きさを。

その後、俺は夕食を済ませたり、バルア達の相手をしたり、買った本を読んだりして過ごすのだった。


ーー魔力を放った時ーー

「ギ?、ガガガアーーー」


「ケケケケケケ」


ゆっくりと封印を解いていた者たちが優れた生存本能から早く封印から逃れようと動き出す。だが色の魔力を持たない人間は気づかない。なぜなら魔力の種類が違い、魔物に比べて平和に暮らしているのだから。









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