第88話 宿へ
「どう?、ルールは覚えた。」
「ああ、たぶん。結構複雑だな。」
「まぁ、そうね。普通のチェスと違って取った駒を再利用できるし、自分の陣地内だったら、一番最初の陣形は好きに配置できるから。さぁ、やりましょう。まず紙に初期の陣形を書くのよ。」
「わかった。」
どうすっかな。
王を詰まされた終わりだからガチガチに固めるべきか?、それとも攻撃力全振りにするか?
う~ん、結構面白いな。戦略性が問われるな。
「どう書けた?」
「ええと、よし、これにする。」
互いに紙に書かれたとおりに、駒を並べていく。
「はぁ?、あんたバカじゃない。近衛騎士を前面に出すなんて。」
「いやあ、試してみたくて。まぁ、まずはやってみようぜ。」
近衛騎士は王のそばにいるときにもっとも最大限のパフォーマンスを発揮するが、離れていても通常の騎馬隊よりも強い。
なら、攻撃に回すのは当然だ。だって、一番楽しいのは攻撃することだからな。
「パチ、パチ、パチ」
結構、難しいな。
頭がこんがらがりそうだ。
「あんた、結構やるわね。本当に初めて?」
「もちろんさっと。」
「パチ」
やばいな、だいぶ駒がなくなってきた。
とりあえず、王手。
「やるわね。」
よし、騎馬隊を投入、そして軍師の特攻。
「くっ、あんた全然防御しないじゃない。」
「その方が面白いだろ。」
…ギリギリ届かないな。でもこいつは気づいてないか。
なら行ける所まで行ってみる!!
「全然攻めがとぎれないじゃない!!、ほんとムカつくわね、あんた。」
うっせー、こっちも必死なんだよ。
もうこの攻めが途切れたら負けだからな。
赤毛にだけは負けたくねぇ。
「王手。ほら逃げなさいよ。」
ちっ、もう攻めが途切れてしまった。
逃げ切れるかな?
「パチ、パチ、パチ」
「…参りました。」
くっそ、負けてしまった。いいとこまでいってたんだけどな。
「あんたなかなかやるわね、初めてにしては強すぎない?」
「そうか?、でも結構面白いな。」
その後もトランプ組がゲームを新たに始めてたので、もう一局指す。
「パチ、パチ、・・・・」
「詰みだ。」
「くっ、参りました。」
「俺の勝ちだな~。」
はっはっは、残念だったな、赤毛。
(おい、パール、ちゃんと録画してるか?)
(してますよ。)
(いい映像が取れたな、実に愉快だ。)
(最低ですね。マスターは一回目負けてるんですけどね。)
(初めてだから仕方ない。)
「も、もう一回よ。次は私が勝つんだから。」
その後も続けていくが、安定して勝てるようになってきた。
「なぁ、トランプにしようぜ、もう飽きてきた。」
「まだもう一回。」
やばい、こいつ負けず嫌いすぎだろ。
もうやりたくないな。
「大体、あんた、むちゃくちゃなのになんでそんなに強いのよ。」
「そんなにむちゃくちゃか?」
「むちゃくちゃよ。軍師は突っ込ませるは司令官を切り捨てるは、破天荒すぎるでしょ。」
「うーん、勝てるなら突っ込ませるべきだろ。」
まぁ、現実の戦争ではそうはいかないんだろうけど。
「私もやってみたい、ロゼ、一緒にやろうよ。」
セラってロゼと仲いいな。何かあったのかな?
「ほら、セラもこう言っていることだし。」
「…分かったわよ。」
「じゃあ、ジン、トランプ一緒にやりましょう。」
「ああ。」
七並べ、大富豪、ババ抜きなどをこなしていく。
ウノもいいかもな、この人数なら。
だれか開発してくれないかな。
俺が作るわけにもいかねぇし。
結局、夕飯ぎりぎりまで遊んだ。
「今日は楽しかったな。」
「そうね。」
「うん。」
そしてそれぞれが家に帰っていく。
「今度はまた学園だな。」
「そうだね、まあ、もうすぐだけどね。」
ああ、最悪だな。でもこいつらがいたら大丈夫か。
…大丈夫ではないな、うん。
「すごく楽しみだね~」
「じゃあ、またな。」
「おう、ばいばい。」
ミリアと並んで帰る。
「疲れたなぁ。」
「お疲れ様です。」
「ほんとだよな。まさか城までいくとは思ってもいなかったし。」
「あの白い魔物と交流して、話を聞いていませんでしたからね。」
「はあ~、バレてたのか。全くミリアには勝てないな。」
「そりゃ、ジン様が生まれたときから仕えてますから。」
「まぁ、学園までの短い間、よろしく頼むよ。」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
「明日には帰るのか?」
「はい、旦那様の仕事が溜まってますから。」
「父上って意外と、サボり魔なのか?」
「ジン様にそっくりですよ。」
…なんかショックだ。アレクに似ているのか、俺は。
そして宿でご飯を食べ、眠るのだった。
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