第89話 日記?
朝はいつも通り、ミリアに起こしてもらい、朝食へ向かう。
「おはよう、ジン」
「おはようございます。」
「おはよう。」
「昨日は皆と遅くまで遊んでたみたいね。楽しかった。」
「まぁ、そうですね。マルス兄さんたちはどうでした?」
マルス、ちゃんと学園生活送れてんのかな?
「二人とも元気だったよ。マキシマム家に行ったらすごい歓迎されてたよ。僕はされなかったけど。」
そりゃそうだろ。される要素がない。
「サラはジンにとても会いたがってたわ。4年間も会えていないからね。」
「そうですね。サラ姉さんはやはり卒業したら騎士団に入るのですか?」
ここで会いたいです、とかいって本当に会わされるような愚行は犯さない。
「そうだね、そういう風に言っていた。最終的には近衛騎士を目指すらしいよ。」
思わず、ミリアの方を向きそうになるが何とかこらえる。
危ねぇ、危ねぇ。まだアレクたちは、ミリアが元近衛騎兵団長ということを俺が知ってることに気づいてないからな。
わざわざ自分から首を突っ込むことはない。
「そうね、ミリアは元近衛騎士団長なのよ、驚いた?」
アーレーナー、お前はほんとにそういうところがある。
良くないよ。俺の想定を軽く超えてくるのやめろ。
「驚きました。すごいですね。」
「ミリアは僕より剣がうまいからね、本当は子供たちの剣の指導者になってほしかったんだけど、メイドだからって断られたんだ。」
何となく分かった。面倒くさかったんだろうな。
サラに付き合わされるのは目に見えてるし。
でも、わざわざここで言う必要はないだろ。
墓場まで持って行けよ。
(マスター、あっさりアレナがバラしましたね。)
(ほんとだよ。マキシマム公爵はアレナの教育を間違えたんだ。それがマルスにも波及している。)
(困ったもんですね。この分ならマルスの子も悪影響が及びそうですね。)
(その可能性は考えてなかったな。ちゃんといい奥さんをもらってほしいよな。)
(巨大ブーメランですね。)
(できれば美人でスタイルが良くて、性格もいい奥さんがいいな。)
(それでは、ミランダか、セラか、ロゼか、マリーナ、のうちの誰かですね。)
(いや、少なくともロゼは絶対違うだろ。それにほかの奴らも腹に何か抱えてそうだから無し。)
(要は結婚する気はないってことですね。)
(そういうこと。)
朝食を済ませ、諸々の準備を終えて馬車に乗り込む。
なんて濃密な日々だったんだろう。
学園がほんとに恐ろしい。適当に流せるか不安だ。
「じゃあ、帰ろうか。」
「ええ、そうしましょ。屋敷が恋しいわ。」
同感だ。初めて意見があったんじゃないか?
いつもはアレナに振り回されっぱなしだからな。
ではそろそろあれを読むか、あと少しだからな。
何とか読み終えたい。
出発してから2日が経ち、本を読み終えた。
(いかがでしたか、マスター?)
(これが本当なら影のモノの存在が確定となるかもしれない。)
(どんな話だったんですか?)
(遥か昔、ある男が森で迷子になった。そして迷いながら進んでいくと、あるところで地面を踏んだ瞬間落ちていった。しかも結構長い時間だったらしい。そして落ちるのが終わった時、そこにはとてもきれいな街が広がっていた。しかも森にいたときは昼だったのに、そこでは夜空が広がっていた。男はパニックになりかけたが、街があったのでそこに向かうことに決めた。そこには人間のような形をしたものが存在した。だが、全身真っ黒で姿形が自在に変わってたものもいたらしい。男は不味いと思って街から逃げようとしたようだが、人間だとバレて気絶させられてしまった。そして目が覚めると、元居た森で寝ていたらしい。簡単にまとめるとこれだな。あとはなんか怖かったとか感想がひたすら書かれているだけだった。)
(それは影のモノが存在する世界ってことですか?)
(これが実話なら間違いなくそうだろう。)
でもマジでホラー体験だよな、異世界に行ってしまった的な。
しかし、人間だとバレてよく殺されなかったな。
俺だったら殺すぞ、面倒なことになるから。
(どうして殺されなかったんでしょうね、もしくは記憶を操るとか。)
(人間に朧気ながら存在を示しておきたかったとか?)
(それはどうでしょうか。)
(いずれにせよ、影のモノが存在するとしたら複数ということと、人間のような街を作って暮らしてるということだな。)
(まぁ、おそらく関わることはないでしょう。)
(そうであることを願うわ、マジで。奴らが出た来たら、大陸を超えて逃げても無駄だからな。)
(難儀ですね。)
(全くだ。こればっかりは祈るしかないよな。)
その後も順調に進み、家に帰るのだった。
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